作品

概要

作者おぐちゃん
作品名県立北幼稚園 第八話 『およめさんが来た日』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-24 (木) 21:27:21

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 ようちえんのまえに、しらないおねえさんがきていた。
 パパくらいせがたかくて、でもほっそりして、いろじろできれい。
 そのおねえさんは、わたしをみると、
「ごめんなさい。──先生はいる?」
 せんせいのなまえをよんだ。

 

 せんせいはおねえさんをようちえんにいれると、えんちょうせんせいのところにつれていった。
 なんか、えんちょうせんせいとたのしそうにおはなししてる。
「あたらしいせんせいかな?」
 りょうこちゃんがそういった。でもちがうとおもう。おねえさんのかっこうは、さんかんびにくるママみたいなかんじで、とてもきれいにおしゃれしている。
 そしたら、えみりちゃんがなんかへんなわらいかたをして、こういった。
「ちがうわね。あれはきっと、せんせいのおよめさんよ」
 ……およめさん?
「ゆいのうがおわって、おっとのしょくばにごあいさつにきたんじゃないかしら」
 ……うそ。そんな。およめさんなんて、うそ。

 

 

 俺は彼女をうさぎ組の教室に連れて行った。
 子供たちは無関心を装ってはいるが、見慣れない女性の闖入に興味津々と言ったところだ。
「どうする? 俺からみんなに紹介しようか?」
「いいです。子供たちとちょっと話をしたいから」
「ああ。そういうことなら、いいけどな」
 彼女は教室の隅の椅子に腰掛けると、遊ぶ子供たちを優しく見守り始めた。

 

 

 おねえさんは、うさぎぐみのすみで、じっとすわっている。
 ほんとうに、せんせいのおよめさんなの?
 おねえさんはなにもいわない。せんせいも、おねえさんのことをおしえてくれない。
 きかなきゃ、わからないよね。
 でも──ほんとうにそうだったら、どうしよう。
 そうです、わたしがおよめさんです、っていわれたらどうしよう。
 こわい。こわくてきけないよ。
 ……そうしたら、りょうこちゃんがおねえさんのほうにあるいていった。
「あの、おねえさん?」
 だめ。りょうこちゃん、だめ。
「おねえさんは、せんせいのおよめさんなんですか?」
 ──やだ。ききたくない。ききたくないよ。

 

 

 彼女は午後までうさぎ組にいて、子供たちの相手をしていた。
「お疲れさん。気をつけて帰れよ」
「はい。ありがとうございます」
「それで、参考にはなったか?」
「はい。それに、とても面白かったです」
 そう言って、彼女は笑った。
「それにしても、みんなをびっくりさせちゃったみたいですね。
 やっぱり制服で来たほうがよかったかなあ」
 ……それはそうかもしれない。スーツをぱりっと着こなし、趣味のいい化粧をした彼女を見て、実は中学生だと見破れるやつはそうそう居るまい。
 彼女は、俺の妹の親友だ。通称ミヨキチ。しばらく会わないうちにますます大人びていて俺も驚いた。声だけだと小学生と間違われることもあるうちの妹とは、えらい違いである。
「でも、お兄さんの奥さんと間違えられるなんて──」
 ミヨキチがくすくすと笑う。そして、俺の足下にいる有希ちゃんの頭を優しくなでた。
「ごめんね、有希ちゃん」
 有希ちゃんは小さくかぶりを振った。
 ミヨキチが今日ここに来たのは、学校の課題のためだった。社会科の自由研究課題で、俺たち保父の仕事を調べることにしたんだそうだ。ちなみに新川園長はミヨキチの恩師だそうで、立派に成長したミヨキチの姿を見て嬉しそうに目を細めていた。
 結局ミヨキチは、子供たちと質問のラリーをとばした後、俺と古泉と一緒にしばらくうさぎ組の仕事を手伝ってくれた。
 ミヨキチは子供たちとすぐ仲良くなった。きっと彼女ならいい保母になれるだろう。
「じゃ、さようなら。今日は本当にありがとうございました。
 有希ちゃんもさようなら。またね」
 ミヨキチが手を振りながら去っていく。有希ちゃんもミヨキチに小さく手を振り返した。
 ……しかし、どうしたんだろうな有希ちゃん。今日は朝から俺にひっついて離れようとしないんだが。

 

 結局、有希ちゃんはその後も俺から離れなかった。
 挙げ句の果てに、本を読んであげている間に、俺の膝の上で眠りはじめてしまった。
 母親に抱かれて眠る仔猫のように安心しきった寝顔。保父として子供に懐かれるのはいいことだけど、どうして今日はこんなに甘えてくるんだろうな。
 有希ちゃんのお腹にタオルケットを掛けてやっていると、涼子ちゃんと江美里ちゃんがやってきた。
「せんせい。およめさんは、いつもらうの?」
 痛いところをついてくるな。残念ながら、まだ恋人すらいねえよ。
「ま、もっと先だろうね。お嫁さんになってくれる女の人もいないし」
 二人はそれを聞いて、くっくっと笑っている。
 ……君たち。先生がもてないのが、そんなにおかしいのかね。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:11 (3090d)