作品

概要

作者おぐちゃん
作品名エンドレスエイト異聞 /NAGATO SIDE/
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-20 (日) 13:09:44

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 回復は絶望的。
 解析もシミュレーションも不要だった。一目見ればわかる。
 彼は死の淵にいた。わたしをかばい、過激派インターフェースの鉤爪に胸を貫かれて。
「キョン! キョンってば! 目開けなさいよ!!!」
 涼宮ハルヒが半狂乱で叫ぶ。だが無駄な行為だ。既に彼の意識はない。
 朝比奈みくるは、手を側頭部に当て、必死の形相で空を見つめている。
 これも無駄なこと。九月一日から先のないこの世界では、未来からの救援も助言も期待できない。
 何も出来ない。何をする必要もない。
 ──なのに。何故わたしは涙を流すのだろう。

 

 彼を刺し貫いたインターフェースは、その直後に消滅した。
 街でも、インターフェースの消失が始まっている。一方、わたしの能力は回復を始めていた。
 情報統合思念体は、過激派の制圧に成功したようだ。思念体のメモリーは涼宮ハルヒの時間遡行に影響されない。過激派の計画は既に露見した。もう二度と、このような暴挙が繰り返されることはない。
 現在時刻、23:58:21。あと00:01:39で世界が再構成される。
 そうすれば彼は再び元通りになる。何の問題もない。
「いや……いやぁ……! やだやだ、こんなのやだよお!!」
 涼宮ハルヒが泣いている。床に広がる彼の血溜まりに座り込んで。
 朝比奈みくるが再び意識を失った。倒れかかる彼女を、古泉一樹が支える。
 その古泉一樹も、普段見せない真剣な表情で、彼の白い顔を見つめていた。
 ……その感情は不要。世界の再構成が起こらない確率は10の-43乗以下。
 明日になれば、元気になった彼に再会できる。だから、問題はない。
 本当に、問題はないのだ。
 ……………………
『申請。地球人の肉体再構成。現時刻マイナス五分の時点の肉体構造に復旧されたし』
──『申請却下』
『再申請。地球人の肉体再構成。申請内容は前回申請と同様』
──『申請却下』
『再申請。地球人の──』
──『申請却下』
 何を、しているんだろう、わたしは。
 こんな申請が通るわけがない。彼は確かに『鍵』だが、彼を今回復させる事には何ら意味がない。
『再申請。最優先。地球人の肉体再構成』
──『申請却下』
 暖かいものが手に触れた。いつの間にかわたしは、彼の手を握っていた。
 肉体再構成が駄目なら、時間凍結。いや、バリア展開による出血阻止でもいい。
 なんでもいい。たすけて。このひとを、たすけて。
 思考が
   まとまらない エラーが

 

   23:59:41 心停止確認

 

「ああ──ああああああああああああああああああっっ!!!」
 こんなときに、だれが うるさい
「い、いや、あああ、いやだあああああああああ!」
 あ れ? これ わたしの こえ
    なん で どうshiて にクたい    せいぎョできなイ?

 

  9/01 00:00:00
          じかんが もどる
                   8/17 07:00:00

 

 

 ……目が覚めた。
 心拍数、呼吸数ともに異常。ホルモン調整を要する。
 結局、ループからは抜けられなかった。
 そして、彼は──
 わたしは即座に情報プローブを放った。2マイクロ秒後、プローブから彼の生体反応が返る。
 心拍正常。血圧正常。血糖値低下……これは朝食前だからだ。
 わたしは即座に衣服を交換し、玄関へと向かった。
 そのとき、情報統合思念体からの命令が届いた。
 彼のところに行くわけにはいかない。どのみち涼宮ハルヒは、私たちに招集をかけるのだから。
 それまで待て。独断による行動は許されない。
 命令を受け、わたしの足は停止した。

 

 午後二時。
 集合場所に、彼が現れた。
 当然だ。時間が巻き戻れば、こうなるのは当然。
 だから、普段通りに振る舞えばいいだけ。
 なのにどうして。
 どうしてわたしは、彼の体にしがみついて泣いているんだろう……?

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:08 (3093d)