作品

概要

作者おぐちゃん
作品名県立北幼稚園 第七話 『パパ達の黄昏』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-19 (土) 14:49:16

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 型抜き。
 ナイフを針に持ち替えた涼子ちゃんは、瞬く間に型を抜いていく。
 射的。
 江美里ちゃんは二丁の銃を踊りながら乱射し、お菓子ばかり狙って取っていく。
 たこ焼き焼きそば文化フライわたがしリンゴアメチョコバナナ。
 ウルトラマンお面装備の有希ちゃんは、両手いっぱいに食べ物をぶら下げて歩く。
 地元の小さなお祭りを、女の子達は全身で楽しんでいた。

 

 お祭りの当日。街に出た俺は、父親に連れられた有希ちゃん達に出会ったのだった。
 そういえば、この三人は家族ぐるみのつきあいだっけ。少女達は浴衣に身を包み、それぞれの父親に手を引かれて人混みを歩いていた。
 父親達と簡単に挨拶を交わし、立ち去ろうとしたら、小さな手にシャツをつかまれた。
「…………」
 見るまでもない、このストレートな表現は有希ちゃんだ。
「有希ちゃん、今日はパパといっしょなんだろ?」
「………………(ふるふる)」
 有希ちゃんはかぶりを振ると、俺のシャツを引っ張って歩き出した。
「あー、ゆきずるーい!」
 そのあとから、涼子ちゃんと江美里ちゃんも付いてくる。
 げ。何か視線を感じると思ったら、パパ達が俺を憎しみの目で見てるぞ。
 浴衣姿の少女達、それに引っ張られる保父、そして三人の父親。
 RPG中盤のちぐはぐなパーティーみたいな面々は、こうして縁日へと進軍したのだった。

 

 縁日の屋台をあらかた攻め落とす頃には、花火の時間が迫っていた。
 だけど、川沿いの見晴らしのいい場所は、既にたくさんの人でごった返していた。
「せんせいー! だっこしてだっこ!」
 涼子ちゃんが満面の笑みで言う。パパの視線が怖いが、確かにこの人混みじゃ見えないよな。
 しゃがみ込んだ俺の右腕に、涼子ちゃんがしがみついてきた。
「わーい、せんせいひとりじめー」
 と、左腕にすかさず有希ちゃんがくっついてくる。
「……だめ。せんせい、わたしもだっこ」
 さらに、首っ玉にしがみついてくる細い腕。え、江美里ちゃん、首は苦しいよ。
 ともあれ何とか三人を抱えて、俺は立ち上がった。
 その瞬間、空中に光と音がはじけた。
「……おはな、さいた」「わーい、あがったー!!」「たーまやー」
 三人の女の子は、それぞれに喜びの声を上げた。
 さらに連続で上がり続ける花火。胸板に響く轟音と目を灼く炎。
 子供達は瞬きもせず、うっとりと空を眺めている。
 ──いいもんだな。子供達の笑顔って。
 俺たちはそのまま、花火が終わるまで空を見続けていた。
 背中に、パパ達の殺意を感じながら。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:08 (2730d)