作品

概要

作者おぐちゃん
作品名県立北幼稚園 第五話 『平成教育委員会』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-19 (土) 14:46:39

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 うさぎ組の部屋は、透明な緊張感に満たされていた。
 有希ちゃんが、息を止めながら、十個目の積み木を置く。
「…………!」
 一瞬、空気が凍る。積み木の塔は崩れることなく、ただ静かに立っている。
「ふふっ、やるねぇ。負けらんないさっ!」
 たっぷり腰まである長髪を揺らしながら、その女性は不敵な笑みを浮かべた。

 

 その日の午前、俺は園長の頼みで、年長のきりん組の手伝いをしていた。
 一時間ほどしてうさぎ組に帰ってみると、そこに謎の女性がいたのだ。
「お、君が先生かいっ!?」
 ……何なんですかあなたは。ここは一応、父兄以外は立ち入り禁止ですよ?
「気にしない気にしない! それより今は、有希ちゃんと勝負の最中なのさっ」
「せんせい。じゃま、しないで」
 ……有希ちゃんの目は本気だ。こうなっては逆らわない方がいい。
 見ると、二人の前には積み木で作った塔がある。どうやら、どっちが高く積めるか競争してるらしい。
 既にその塔は、有希ちゃんの身長を超えていた。さすがにもう無理だろうと思っていたら、
「だっこ」
 有希ちゃんが積み木から目を離さずに言う。
 かくして有希ちゃんは、俺に抱っこされた状態で競技を続行した。
 さらに塔は高くなり、俺は今や有希ちゃんを肩車している。
 長髪の女性も、椅子のうえに乗って積み木を置き続けた。
 二つの塔は、天に届かんと言う勢いで成長し続ける。

 

 それは十二個目の積み木を置くときだった。
「……っくちゅん! にょろ〜」
 長髪の女性がくしゃみをした。一瞬手元がぶれ、塔が微妙に傾く。
 ほんのわずか。しかし、過成長した塔にとっては致命的な傾斜。
 かくして、彼女の塔は崩れ、有希ちゃんの塔は残った。
「…………(ぐっ)」
 俺の頭のうえで、有希ちゃんが小さくガッツポーズを取ったのを、俺は見逃さなかった。

 

「ども。私はこういうものさっ」
 彼女は行儀良くお辞儀をすると、名刺を差し出してきた。えーと、県教育委員の鶴屋さん?
「いやー、この組は気に入ったさ! めがっさいい子ばっかりにょろ」
 それはどうも。ところで鶴屋さん、今日は視察かなんかでしょうか?
 俺の質問を、彼女は聞いていなかった。
「すると川のうえから大きな桃が、めがっさーめがっさーと流れてきましたー」
 ……子供に本読んでるし。有希ちゃんまでなにやら真剣な表情で聞いてるし。

 

 明けて翌日。
「ねー、つるやせんせいは?」「つるやせんせいこないのー」「めがっさ!」「にょろーん」
 鶴屋先生、えらい人気だよ。……やっぱり転職しようか。
 気落ちする俺の手を、有希ちゃんが優しく握ってくれた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:07 (3088d)