作品

概要

作者十六夜
作品名人魚姫 長門
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-17 (木) 00:51:08

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

#1 動き始めた運命

 

あるきれいな海に人魚達が住む楽園がありました。
そこには争いも、憎しみも、この世の「悪」と称されるものは何もありません。
そして、この国の王、主流派にとても可愛らしい一人娘がいました。
名前を長門 ゆきといいます。皆からはゆき姫と呼ばれています。
ゆき姫は読書が好きでヒマさえあれば四六時中、本を読んでいます。
ちなみに父親との仲は今ひとつです。
まぁ、ゆき姫の写真を集めたのを見てハァハァ興奮したり、下着をプレゼントしたりと、
一般的に見ていい父親ではありませんから仕方ありませんね。

 

ある時、友達である朝倉 涼子と喜緑 江美里が家で本ばかり読んでいるゆき姫を、
外に出て遊ぼうと誘いに来ました。この二人はゆき姫の大切な友達なので、
「…わかった」
快く承諾しました。涼子がゆき姫の手を引っ張ります。
「じゃあ、さっそく行きましょう」
「今日はどこにしますか?」
江美里が尋ねます。
「…船が見たい」
「そうね、たまには海面の近くまで行ってみましょうか。それでは、出発!!」
主「あっ、ゆき、出かけるのー? 気をつけてね〜」
ゆき姫はそんな主流派の心配を無視して、三人で出かけました。
…これがゆき姫の一生を左右する物語の始まりとはだれも知りませんでした。

 
 

#2 はなればなれ

 

三人が仲良く並んで泳いでいると、二匹のマーマンが現れました。
この辺りでは有名な谷口と国木田です。谷口はナンパ好きで知られています。
「おっ、近所の人魚の中でもベスト3は確実に入る朝倉じゃねぇか。AAランクプラスの」
「やめといたほうがいいよ、谷口。前もナンパして失敗したじゃない」
「うるせー、この前はたまたま調子が悪かっただけだ。今日こそうまくいくって」
谷口は三人に近づきます。
「よー、朝倉。今日も眉毛が個性的だな」
谷口は褒めたつもりですが、いきなり魚雷を踏みました。
涼子は、他の人魚よりちょっぴり太い眉毛をとても気にしてからです。
「死になさい」
涼子は、どこからともなく取り出したナイフで谷口をおいかけ回しました。
「ちょっ、タンマ、タンマ!」
とその時です。いきなり、強い海流が五人を巻き込みました。
「きゃあー!!」
「うぉっ!!」
皆、バラバラになってしまい、もちろんゆき姫も一人遠くに飛ばされてしまいました。
ゆき姫が気づいた頃には、ここがドコかもわからない場所に一人ポツンといました。
「…みんな、どこ?」
ゆき姫はとりあえず、海面まで向かってみるコトにしました。

 
 

#3 歯車のパーツ

 

海面に上がってみると、そこはひどい嵐で、雨は吹きしきり、
風で波がうねり、雷は鳴り響いていました。
ゆき姫が視界の悪い中、辺りを見渡すと一隻の船が難破しています。
人がおぼれているかもしれないので、心優しいゆき姫は、
「助けに行く」
と勇ましく船へと向かいました。
ゆき姫が着いた頃には船はバラバラで見る影もありませんでした。
ところが、一人の男が意識を無くした状態で木の板にしがみついています。
ゆき姫はこの人を助けようと、小さな体で担いで海岸まで泳ぎ続けました。
しばらくすると嵐は収まり、海岸が見えてきてゆき姫も一安心です。
しかし、海岸の波うち際でしばらく様子を見ても一向に目が覚める気配はありません。
「この状況では…」
こういう時、ゆき姫はどうしたら良いか知っています。この前読んだ本に書いてありました。
人口呼吸です。

 
 

#4 どんな形でも初めてのキスはファーストキス

 

一方その頃、ゆき姫の父親、主流派は…
主「はっ、私のゆきに何かイヤな予感がする。まるで、私からゆきが離れていってしまうような…」
この後、変な妄想をして、友人である急進派、穏健派に迷惑をかけるのですが、
まぁ、主流派なんてどうでもいいですね。

 

さて、海岸ではゆき姫の人命救助とはいえ、ファーストキッスが今一人の男性になされます。
(ちゅっ)
ゆき姫は本に書いてあったコトを思い出し続けました。
(ふぅー、ふぅー)
男性はまだ目を覚ましません。ゆき姫はあせり、必死になって続けます。
(ぷぅー、ぷぅー)
2,3分でしょうか。ゆき姫が顔を真っ赤になって続けていると、男の手がピクリと
動きました。どうやら、間に合ったようです。男はごほっ、ごほっと咳き込み、今にも
目を覚ましそうです。ここで後ろから声が聞こえました。
「ゆきー、どこ〜!」
「ゆきちゃーん、どこですか〜!」
涼子と江美里がゆき姫を探しに来たようです。ゆき姫はここまでやれば大丈夫だと思い、
二人の所へと向かいました。
「あっ、ゆき、無事でよかったわ」
「問題ない、心配をかけたことは誤る。ごめんなさい」
「いいのよ、ゆきちゃんが無事なら。でもまさか海岸まで来てるとは思わなかったわ」
「おぼれていた人を助けていた…」
「えっ、人間!? 姿は見られなかった?」
「心配無い」
そうです。人魚族には掟があり、人間に正体を見られるのは禁則事項でした。
人魚の存在が知られると、人魚の国を荒らされる危険性があるからです。

 
 

#5 淡く弱く、しかし忘れられない感触

 

「ゆきも見つかったし、戻りましょ」
「そうね。きっと主流派お父様も心配してるわ」
「…わかった」
ゆき姫はそう言うと、助けた人間のほうを人目見て、起き上がるのを確認しました。
(よかった)
そして、三人一緒に人魚の国へと戻りました。

 

「…、…ココはどこだ? 俺は確か嵐で船が難破して…」
男が立ち上がり辺りを見渡します。誰もいません。
ふとクチビルに手をやると、ほのかにやさしい感触が残っていました。
また、誰かが必死で何かをやってくれていたこともぼんやり残っていました。
「誰かが人口呼吸でもやってくれたのか? でも辺りには誰もいないしな…」
「…王子〜、王子〜! いました!! 王子です!!」
兵士風の男性が何人か詰め寄ってきました。
そう、このゆき姫が助けた男はこの国のキョン王子だったのです。
「古泉隊長! キョン王子は無事です!」
「おや、無事でしたか。よかったです」
背の高い一人の男性がキョン王子に顔を近づけました。
「あぁ、なんとかな。…古泉。顔が近い、息がかかる」
「これは失礼。でもよく助かりましたね」
「まったくだ。辺りにはいなかったが誰かが人口呼吸をしてくれたみたいでな」
「えっ…、じ ん こ う こ き ゅ うですか?」
「たぶんな」
なぜか、古泉がショックを受けてます。
(しくじりましたね。もう少し早く来ていれば、キョン王子のクチビルは私のものでしたのに)
「どうした、古泉? ともかく城に戻って、助けてくれた人を探そう」
「え、えぇ、そうですね(おしかったですねぇ)」

 
 

#6 心の中にある存在、その大きさ

 

ゆき姫がキョン王子を助けて一週間が経ちました。
そのあいだ、ゆき姫はあの男の事をなぜか忘れる時はありませんでした。
「……ふぅ」
本を読む気にもならず、ぼーっと過ごす日が続きました。そんなゆき姫を見て、
ダメ親父である主流派は心配していました。
主「どうしたんどろう、ゆき…。この前あげた下着が気に入らなかったのかな…」
急「お前娘に下着送るとか大概にしろよ」
穏「なにか他のプレゼントをしてみたらどうです?」
主「そうだな。…よし! この貝殻を使った下着をプレゼントしよう!」
急「ゆきちゃんに殴られてこい」
こんなダメ親父はほっといて、ゆき姫は涼子と江美里に相談しました。

 

「なるほどね…、それは[恋]ね。ゆきももうそんな年頃なのね」
「…[恋]?」
「そうよ。あの男を忘れられないなんてそうに違わないわ」
「でも、ゆきちゃん。あなたはどうしたいの?」
「えっ…」
江美里の問いかけにゆき姫はしばらく考えました。
「…もう一度会いたい」
ゆき姫は決心しました。ゆき姫の中で、キョン王子の存在はココまで大きくなっていました。
「でもねぇ、その尻尾じゃあ人間には近づけないわね…」
「大丈夫。海の魔女に依頼する」
そうです。国のはずれに朝比奈 ミクルというどじっ子ですが凄腕の魔女が住んでいるのです。

 
 

#7 ゆき姫の決心

 

三人は魔女ミクルの家へと訪ねました。この魔女ミクルは童顔のくせにあちこち成長しています。
涼子がノックして扉を開けます
「こんにちはー!」アイカワラズイイカラダ。ウラヤマシイ…
「あら、朝倉さんに喜緑さん、それにゆき姫様。どうしたんですかぁ?」
「実はお願いがあってきたのですが…」ワタシモアレグライアッタライイノニ。
江美里がこれまでの事を話しました。
「なるほどぉ、そういうことですかぁ。わかりました、協力します」
「…ありがとう」
ミクル魔女は「えーと、えーと」と言いながら、何かを探しています。
「あっ、ありました。これです、これで尻尾が人間の足になるお薬です。でも一つだけ約束して
くださいね。自分の事を話すことは禁則事項です、この場合ですと自分が人魚である事、また、
助けたのが自分である事を話す事が禁則事項に触れます」
「えっ、それじゃあ、ゆきは助けた事を言えないの? なんでそんな設定を?」
明らかに怪しい設定に涼子はつっこみをいれます。
「え〜、禁則事項です。これに触れると泡となって消えてしまうので気をつけてくださいね」
ミクル魔女はとびきりの笑顔でごまかしていますが、作者の仕様ぶりが匂っています。
「それでもいい。彼に会えるなら…」
ゆき姫は喜びを隠したような顔をしています。
「ところで料金は…」
「パパに請求して。あとこの手紙も渡して…」
「わかりました。では頑張ってくださいね(はーと)」

 

穏「主流派ー、請求書とお手紙ですよー」
主「ゆきからか…、請求書は経理に渡してくれ。手紙なんてどうしたんだろう?」
(ガサガサ)
  わたし、長門 ゆきは人間の世界で暮らします。いままでお世話になりました。
主「………………………………………………(ばたっ)」
急「あっ、死んだ」

 
 

#8 ゆき姫の思い と キョン王子の思い

 

ゆき姫はミクル魔女の薬を飲みついに人間の足を手に入れました。
「これが、人間のすがた…」
ゆき姫はとりあえず町へ出て、助けた男の情報を集める事にしました。
いろんな人に話しを聞いてみると、
「キョン王子がおぼれているのを誰かに助けられた」「キョン王子はその人を探している」
という情報が得られました。ここで、ゆき姫は自分がこの国の王子を助け、また名前は
キョンということを初めて知りました。
ここからのゆき姫の行動はとても早いものでした。
ちょうど、メイドを募集していたお城にうまく入りこみ、王子の世話役として働く事になりました。
ゆき姫は自分の正体を明かせないものの、好きな人の近くにいれる喜びを日々感じていました。

 

一方、キョン王子ですが、ヒマを見つけては海岸に足をよく運んでいます。
そう、キョン王子もまた、助けてもらった人のことを忘れられないでいました。
すでに近くにいるとも知らないで、今日も今日とて海岸に恩人を探しに来ています。
「ふぅ、なんでまたココに来てしまうんだろうな。いくら恩人といっても、
他人に探してもらっても問題ないのに…、なんでだろうね」
キョン王子はこの思いがまだなんであるかは、まだわかっていませんでした。
「そういや、新しく入ったメイド、名前は長門 ゆきだったかな。あんな子だったらいいんだがな。
でも、顔を見てもお辞儀しかしないし、助けてくれた人とはきっと別人なんだろうな」
そう、ゆき姫は薬の仕様で、本当の事は話せないのでただお辞儀するぐらいしかできなったのです。

 
 

#9 ゆき姫の知らぬ間に

 

そんな日がしばらく二週間ほど続き、キョン王子は今日も海岸に来ていました。
「俺も飽きないな…」
砂浜をとぼとぼ歩いていると、向こうから活発そうな一人の娘が歩いてきています。
「もしや、あの人か?」
キョン王子が歩いてくる娘に声をかけました。
「あー、すまないが、俺はここでおぼれていたところを助けられたんだが、何か知らないか?」
娘は考えました。
(確か、この男はこの国の王子。うまく取り込めば玉の輿を狙えるかも…)
「えぇ、知ってるわ。助けたのはこの私よ!!」
娘は思いっきりウソをつきました。
「ホントか!? いやぜひお礼をしたい。実は俺はこの国の王子なんだ。城に来てくれないか?」
だまされる王子も王子ですが、この国の将来は大丈夫なんでしょうかね。
「それで、あなたの名前は?」
「涼宮 ハルヒよ。ハルヒでいいわ」
このハルヒの策で、事実は捻じ曲がり、王子は偶然浜を通りかかった娘が命の恩人と
勘違いしてしまいました。やれやれですね。

 

もちろんこの事を知ったゆき姫は正気ではいられませんでした。
しかし、ゆき姫は王子を救った出来事がばれてしまうと泡になってしまうのでずっと言えず、
ハルヒの思いのままに事は進んでしまいました。
ハルヒはキョンの親を手口八丁で取り込み、いつのまにかキョン王子の知らぬ間に、
結婚まで話がでています。

 
 

#10 一途な思い(この話は飛ばしても可、むしろ推奨)

 

しかし、この案に果敢にも一人反対するものがいました。
「反対です!!」
そう、我らがゆき姫…ではなく古泉です。
「キョン王子にはもっと良い方がいるはずです。たとえば、僕のような…」
いつのまにか、権力も城の中でずいぶん高くなっているハルヒは、
「だまりなさい、古泉君!! それ以上言うと牢屋に閉じ込めるわよ!!」
「僕はそれでもかまいません! それほど、僕はキョン王子の事を…」
あっち趣味の古泉はもう止まりません。ハルヒもいい加減、むかついてきたので、
「つれていきなさい」
二人の兵隊によって古泉は牢屋へと連れて行かれました。あわれですね。
同情した人はぜひ助けに行ってください。もれなく古泉ルートのフラグが立ちます。
そして、すぐエンディングです。エンディングの内容は行ってからのお楽しみです。

 
 

#11 言えない言葉

 

「はぁ、なんでこんな事に…」
キョン王子は頭を抱えています。それもそのはず、確かに助けてくれた人には、忘れられないもの
がありました。しかし、最近どうもハルヒが自分を助けたとは思えないのです。
困ったキョン王子は、一番身近なメイドである、ゆき姫に相談していました。
…助けてくれた本人とは知らずに。
「何かいい方法はないかな、長門?」
ゆき姫はハルヒがウソをついていて、自分が助けた事を言いたくて仕方がありませんでした。
しかし、今のゆき姫にその言葉を言える力はありません。
キョン王子の近くにいながら、なんとも言えない気持ちになりました。
「…何も」
キョン王子はため息を吐き、首を左右に振りました。そんな姿にゆき姫はますます心が痛くなります。
「そうか、すまなかったな、変なコト相談して。イヤ、最近お前があの時、助けてくれたような気が
してな。…「実は私が助けました」ってコトはないか?」
しかし、今のゆき姫には次が精一杯の言葉でした。
「…違う」
表情の表には出ていませんが、この嘘しかつけない状況にゆき姫の内面では、
悲しみでいっぱいになりました。
「そうだよな、お前となら別に結婚してもかまわないかと…」
「えっ…」
ゆき姫はハッとキョン王子の方を向きました。
「イヤ、なんでもない。ただの妄言だ」
「そう…」
ふたたび、ゆき姫の視線は下へと向かいました。
キョン王子とゆき姫との会話はここで終わりました。

 
 

#12 キョン王子の受難

 

あれから数日後。
結婚式は二人が出会った場所とされる場所、海岸で行われる事になり、
ハルヒの提案で船の上で式をあげ、そのまま豪華新婚旅行に行くという贅沢なものでした。
すでに、この国の人々が野次馬としてさわぎ、お城の重役達がウロウロしています。
「いよいよ、この日が来たか…」
キョン王子は自分が助けれらた海岸を見て、肩を落とし憂鬱な瞳をしていました。
「なにやってるのよ、キョン! 命の恩人であるこの私と結婚できるのよ、
ありがたいと思いなさい!」
王子にもすでに呼び捨てのハルヒです。
「どうもその「命の恩人」ってやつが怪しいのだが」
ハルヒはぎくっとします。しかし、幾度も乗り越えたこの勢いで疑問を吹き飛ばします。
「だから、私は助けたって言ってるじゃない! 何、一国の王子のくせに人を疑うの!?」
キョン王子もいつもこの勢いに負けてしまいます。女に尻をしかれるタイプですね。
「イヤ、そういうわけじゃないんだが」
「なら、いいじゃない! さっ、準備してきなさい」
「わかったよ…」
船は沖へと向けて出航し、キョン王子は船の一室に入りました。
そこには、王子の身だしなみのためのメイド、ゆき姫が寂しげに立っています。

 
 

#13 最後のキス そして 消えるゆき姫

 

キョン王子の身なりを整え、いつでも式に出られる格好となりました。
「なぁ、長門。こんな時に言うのもなんだが、俺はお前のコトが好きだったのかもしれん」
ふいを突かれたゆき姫は、頭の中が真っ白になりました。
「最後に一回だけキスしてくれないか?」
「…あなたが望むなら」
ゆき姫はこれが最後の思い出だと感じながら了解をしたのでした。
すでにゆき姫の中では、結婚式が終わる頃にはキョン王子の前から消えようと心に決めていたのです。
そして二人の唇が今、重なります。
ゆき姫にとっては数秒の事が何時間も感じ、キョン王子の前から消えることを思うと、
褐色の瞳からは涙も流れてきました。
二人の唇が離れます。ゆき姫はこれで最後…
と思いもう一度だけ軽く自分からキョン王子にキスをして離れました。
ところが、キョン王子は唇をさわり、なにかを思い出しているようです。
「…やっぱり、やっぱりあの日助けてくれたのは長門、お前じゃないのか!?
否定しても俺にはわかる、あの唇の感触は忘れるものか!」
ゆき姫は呆然と立ち尽くします。

 

(…ばれた、ばれた、ばれた。私は消える、泡となって消えてしまう)

 

ゆき姫は自分が泡となって消えるのを見られなくなったため、一人部屋を飛び出しました。
「長門! どこにいくんだ!?」
キョン王子が引き止めようにもゆき姫は振り払い、甲板へと走り去ってしまいました。

 

(どうせ泡となって消えてしまうなら、生まれ故郷の海のなかで…)

 

ゆき姫は追いかけてきたキョン王子を一目振り返り、
「…ありがとう」
そして、弱く、ゆるく、ゆれる波へと飛び込みました。
「長門ぉぉーー!!」
キョン王子は、手を伸ばしましたが後少し届きませんでした。
ゆき姫は海に飛び込み、体は泡につつまれました。

 

(私もこのように…)

 

ここでゆき姫の意識は切れました。

 
 

#14 海の中でお茶とかはつっこまないでください

 

その頃、涼子と江美里はミクル魔女の家にお邪魔していました。
「あーあ、ゆきのやつうまくやってるかしら」
「そうね…、心配ね」
「大丈夫ですって、ゆき姫様ならうまくやってますよ」
ミクル魔女は二人にお茶を渡します。
「でも助けたのが、ゆきだって事ばれたら泡になっちゃうんでしょ?」
涼子はミクル魔女がいれてくたお茶をすすります。
「いえ、そうではありません。ゆき姫自身の口で言ったら泡になってしまうのです。
初めに言ったでしょう?「自分の事を話すことは禁則事項」って」
「じゃあ、男が自分でゆきに助けられた事を見破ったらセーフ?」
「そういうことです(ハート)」

 
 

#15 最後ではないキス

 

(…なぜ、私は泡にならないの? まだ体は存在する。なぜ?)
そう、ゆき姫自身の口からは言っていないため、泡にはならないのです。
その点、ゆき姫は誤解をしていました。
「長門ぉぉぉおおーーー!!」
キョン王子も後に続いて、飛び込んできました。ゆき姫は意味のわからないまま、
キョン王子へと体を向けました。キョン王子はそんなゆき姫を自分の体へと抱きしめました。
この時点でゆき姫は、自分がなぜ消えないかということはどうでも良くなってしまいました。
そして、ゆき姫自身も自分の手をキョン王子の体へとやりました。
「もう離すものかよっ! そして、もうドコにも行くなよっ!」
ゆき姫を抱きしめる力は一層強まりましたが、ゆき姫にとってはとても心地の良いものでした。
「…わかった」
ゆき姫はさっき最後と決めていたキスをもう一度、キョン王子に唇にしました。

 

この一連の出来事をハルヒは見ており、
「ちぇっ、ここまでね。まぁ、いいわ、十分贅沢できたし、撤退しましょ」
と去り際に一言残し、緊急時用の小さなボートに一人乗り去っていきました。

 

この後、ハルヒが逃げたためキョン王子をだましていたことが明らかになりました。
各国の来客を招いていた国の偉いさん達は、結婚式が潰れることに厳罰を覚悟しましたが、
キョン王子を助けた本物の人が現れ、しかもその人が王子との結婚OKということで、
なんとか一命を取りとめたようです。

 

そして、当のキョン王子とゆき姫は…
これは皆さんのご想像にお任せします。
もちろん、幸せな生活を送っていることには違いはありませんが…。

 
 

人魚姫 長門 …終わり

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:05 (2622d)