作品

概要

作者Thinks
作品名ある冬の日のこと
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-13 (日) 19:14:33

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 
「キョンくん起きて〜!」
 
………いきおいよく俺の腹の上に乗ってきたのは、妹である。
 これも朝の洗礼とも言える妹の行動なのだが、
今回は土曜日の、いつもより早い時間に行われ、しかも当たり所が悪かった。
 腹を押さえながら起き上がり、まぁおちつけ、から始まる、朝一説教部屋を開く予定をマイスケジュールに組み込もうとしたが、
「早く起きないと、溶けちゃうよ?」
 妹が異常にはしゃいでいるのと、耳当てに赤い毛糸の手袋を装着した姿を確認したので、窓を開けて景色を確認する予定を入れることにする。説教は後だ。
 
 窓を開け、思ったよりも冷たくない空気を吸い込んで、白い溜息にして吐き出す。
 また、やってくれたか。ハルヒ。
 おまえの願いどおり、一面の銀世界ってやつだぜ。
 
 
 昨日の放課後のことだ。長門がパタンと本を閉じて立ち上がった。
 しかし、まだ追い出しのチャイムまでには、かなり時間があった。
 どうしたのかと俺も含め四人は、長門の行動をを見ていたわけだが、窓ガラスに手を付け、じっと外を眺めるだけだった。
「あ、そっか。おんなじ名前ですもんね」
 朝比奈さんが納得したように頷く。俺も今、気が付いた。
 
 窓の外には、今年初めての雪が、ちらちらと舞っていた。
 
「きれい、ですねぇ。ふわふわです」
「そうですね。普段の学校も一味、変わりますね」
 朝比奈さんに古泉がそんなことを言っている間。
 長門は初雪を、これもまた微妙な表情を浮かべて眺めている。
 喜びつつ呆然としているような。
 俺は雪ってのはあんまり好きじゃない。寒いからな。
 しかし、まぁ、和むよな。
 
「あーーーっ!雪!キョン、初雪よ!いいわね、もっとガンガン降らないかしらね!」
 
 一発で和み空間を崩壊させるのが、こいつの特技である。
「なによ、雪よ、雪。あんたわくわくしないの?」
 そんなもんは小学生を辞めざるをえなくなったあたりでとっくに卒業してるぞ。
「そうお?わたしなんか今でも妙にわくわくするのよね。つもったら良いのにね」
 まぁな。しかし電車が止まったり道路が混んだりはするがな。
「この雪はつもるわ!そんな気がするから、明日はみんなで雪合戦だからね!」
 
 ハルヒがそうなることを予言するかのごとくのたまった。
  
 そんなわけで、まぁ、真夏に雪を降らせなかった分だけ、まだマシだとしておこう。
 雪合戦のためだけに、ここいらでは滅多につもらないものをつもらせてしまっているわけだが。
  


 
 雪のつもり具合はそこそこで、別に電車が止まるほどでもなく、あっさりと集合場所に集まった後に公園に移動することになったわけだが、
なぜおまえらがいる。
 
「それはこっちの台詞だ、キョン。俺は朝比奈さんに電話をもらってだなぁ」
「僕もだよ。公園でお弁当食べましょう。って、、、」
「あの〜、えっと。それは涼宮さんが、、」
「みくるちゃんは嘘、言ってないわよ?雪合戦の後、みんなでお弁当するんだからね」
 
 言わせたのはおまえだろうが。
 谷口と国木田をだまくらかして人頭を稼いだ、のはどうでも良いことだとしてだな。
 この雪景色の中で、ピクニックと言う発想がぶっ飛んでるし、そもそもそんな話に乗ってくるおまえらもどうかと思うぞ、俺は。
「大丈夫よ。お昼くらいにはポカポカしてくるわ」
 ハルヒ、その根拠はどこにあるんだ。
「根拠なんて要らないんじゃないですか?」
 まぁそうなんだがな、古泉。とりあえず顔が近い。
 
 ぐだぐだと話しながら公園に向かう面々の中で、長門は沈黙を保ったまま昼飯のバスケットを抱えて歩いている。
 何かの目論見があるのか、それともただ持ちたいだけなのか、七人前の昼飯が入ったいつもより重たいバスケットを持って、ひょこひょこと歩いている。
 何度か俺も持とうかと言ってみたのだが、「いい」の一言で手放してくれない。
 
「今日はお茶をいっぱい持ってきましたから、大丈夫ですよぅ」
 朝比奈さんが魔法瓶を二本持って来ていたのはそういう理由か。
 お気遣いありがとうございます。
「そうですよ、もうそれだけが楽しみなんで。いっや〜、昼飯が楽しみだなー!」
 谷口の発言を国木田が頷きでフォローする。やっぱおまえら良いコンビだな。
 
 おまえら、お笑いやってみたらどうだ、などと適当な会話をしている間に公園に到着し、適度に雪がつもった場所を確保した後、ハルヒのルール説明が始まった。
 
「いーい?一発でも当たったらアウトね。最後まで当たらなかった人の勝ち!あと、顔面セーフね」
 それだけかい。
「それ以外にルールは要らないわ!単純明快!サバイバル雪合戦よ」
「商品は?商品くらいないとやってらんないぜ」
 谷口が吼える。まぁ、解らんでもないが、ハルヒに対価を求めることは真剣勝負への展開を意味する。
 そんなことも解ってないから振られたんだよ、バカ野郎。
「そうね、じゃあ」
 ハルヒがカメラを取り出して続ける。
「最後まで残った人は、好きな人と2ショット撮影ってことでどう?」
 


 
 ハルヒの一言で、雰囲気が大いに変わった。
 何せやる気になっているのは谷口であり、意味もなく準備体操なぞを始めるし、国木田が妙に真剣な顔をしているわ、古泉は顎を撫でながら何かを思案中のようだわ、、、朝比奈さんまでもが手袋を付け直している始末だ。2ショットってそんなにすごいのか?
 
 長門はどうしているかと言うと、じーーーーーーーーーーっと俺の顔を見ている。
 どうした、長門。何か言いたい事でもあるのか?
「情報操作の使用を希望する。許可を」
 完全に本気だ、こいつ。あの能力を使用すれば、長門に勝てるヤツはいない。
 しかしまぁ、さっさと終わらせてしまいたいわけだし、長門が誰を選ぶのかも興味がある。
「ケガ人が出ない程度にな」
「了解した」
 そう言うと長門は、ダッフルコートを脱ぎ、ベンチに置いた。
 
「さて、始めるわよ。雪球が当たったら、ベンチで大人しくしてなさいよ!」
「よし来た!おい、キョン!覚悟しろよ!」
 ああ、おまえもな。その気合が空回りしない事を祈ってやるぜ谷口。
 
「それじゃ、いくわよ。レディー・ゴー!」
 
 ハルヒの合図で、全員が散開した。
 と思ったが長門だけはカーディガン姿で広場に立ち尽くしていた。
 その背後に、谷口が迫っている。おい、長門、気が付いているのか。
「もらったー!」
 大げさなアクションで谷口が雪球を投げ、長門が横目で俺を見たかと思ったその刹那。
 
 ぱっかーん。と言う音と共に、谷口の投げた雪球が消えた。
 
 俺を見る直前、長門が足元の雪を蹴り上げて手に持ち、振り返ったのが見えたが、雪球で雪球を迎撃したのだろうか?
 逃げる谷口に長門は、さらに雪を蹴り上げ、、いや、蹴った雪がそのまま谷口の背中に直撃した。長門はその場で一回転して静止する。
 谷口は「ぐえっ!」と季節外れのガマガエルのような声を残して雪に沈んでいった。
 朝比奈さんとデートするつもりで来ていた谷口の、わりと決まった格好がだいなしである。
  
 そんな光景を、ただ呆然と見ていた俺を長門が睨み付け、、、派手なスローインをするかのような動きだった。つもった雪を手に取ると、そのまま前方転回し、俺に向かって投げた。
「ぬぁっ!」
「ぐっ!」
 雪球は俺の頭上を掠め、いつの間にか背後にいた古泉の胸に当たっていた。
「やれやれ。長門さんには適いません、、ね、、」
 古泉は雪に片膝を付き、手にしていた雪球を握り潰した。
 
 舞い上がる雪を背にして、棒立ちしている長門。何がおまえをそうさせる?
 


 
「みっくるちゃーん!覚悟ー!」
「きゃぁぁぁっ!」
 林の中から、溜息をつきつつ朝比奈さんが現れた。ほわほわのコートが雪だらけだ。
 ハルヒが朝比奈さんを討ち取ったな。
「残念でしたね、ささっ!こちらへどうぞっ!」
 敗者席となっているベンチに朝比奈さんを誘導する谷口に、俺はもう一発雪球をお見舞いした。
「痛って、何しやがむがっ!」
 吼えかけた谷口の顔面に、さらに雪球が放られた。
「大人しくしてなよ。涼宮さんもそう言ってただろ?」
 そういうのは実は、国木田である。
 昔っからそうなのだが、こいつは本気になるとキャラが変わるのだ。
「キョン、覚悟しなよ。僕は朝比奈さんと2ショットしたいんだ、、」
 雪球を氷球にせんとばかりに握り固めている。顔が怖い。
 おまえの気持ちはよーっく解った。しかしだな、怖ええぞおまえ。
「関係ないね、、、僕の夢を適える為に、負けてよ、キョン」
 もともとそんなに勝ちたいとは思ってないから別にかまわんが、怖ええって言ってんだろうが。
 いつぞかの朝倉を思わせる国木田に、ものすごい速さで雪球が飛んできた。
 国木田はそれを難なくかわして雪球の飛んできた方向を見つめる。
「わたしが、させない」
 長門、俺は別に負けても良いんだぞ?
「させない」
 解りました。がんばります。
 本気モードの国木田が放る雪球を避けながら、俺は林の中に逃げ込んだ。
 
 残る敵は、国木田、ハルヒ、、、そして長門なわけだが、長門には勝てる気がしないし、今の国木田はかなりテンションが高いので目の前にしたくない。
 俺は必然的にハルヒを探した。しかし見当たらない。
 雪を持ちっぱなしで、手が言うことを聞かなくなってきた。
 これ以上待てなくなった俺は、
「ハルヒっ!どこに隠れた、出てきやがれ!」
 そう叫んでみた。あいつのことだ、こう言えば出て来、、、
 
 顔の横を雪球が掠め、足元の雪と共に弾け飛んだ。
「ちぇっ、外したか」
 木の上にいたハルヒが飛び降りてくる。
「甘いわよっ!」
 雪をかき集めたと思うと、即座に二発、連投するハルヒ。
 俺はそれをかわしつつ、足元の雪をすくって投げつけた。
「ぷえっ!」
 俺の投げた雪は、ハルヒの顔面に当たった。
「何すんのよあんた!言っといたけど、顔面セーフだからね!!」
 ハルヒは顔の雪を払いながらそう言った。怒らせてしまった。まずい。
 しかしチャンスかもしれない。
 
 俺は咄嗟に、横に生えていた木を蹴りつけた。
 当然、結構な量の雪が、俺らに降りかかる。
「きゃあっ!?」
「悪いな」
 俺は一言付け加えた後で、ハルヒに雪球を放った。
 


 
 全身雪まみれのハルヒを敗者席に連行した俺は、長門と国木田の姿を探した。
「二人とも全く譲りゃしねぇ。国木田ってあんなんだったか?」
 谷口が真剣な眼差しで見つめる先に、二人はいた。
 
 敗者席に雪まみれで座るハルヒに、古泉が声をかけた。
「おや、意外ですね」
「キョンが卑怯なのよ!おかげで頭から雪まみれよ。寒いわまったく。」
 不機嫌にしか見えないハルヒの姿を見て、古泉は若干、笑顔を曇らせて俺を見てくる。
 おまえからすりゃ「空気を読め」ってとこだろうが大丈夫だ。飯喰ったら元気になるさ。
「みくるちゃん、お茶頂戴」
「は、はいっ、ただいま〜」
 ハルヒは朝比奈さんが注いだ茶を一気に飲み干すと満面の笑みを湛えて、
「あら、美味しいわね、もう一杯もらえる?」
 ご機嫌におかわりを要求した。
「はい〜」
 ほらな。喰うまでもなかっただろうが。
 
 ハルヒがわりと良い顔に戻ったところで、長門と国木田の様子を確認する。
 広場の真ん中。長門は変わらず棒立ちだが、国木田は肩で息をしていて、
「やるね、、、」
「あなたも」
 三流アクション映画のような会話をしている最中だった。 
 
「国木田ぁ!先にキョンをやっちまえ!」
「そうよ!この卑怯者が先よ!」
 谷口とハルヒが余計な事を言い放ったと思うと、谷口が俺のベルトを掴み、ハルヒはベンチの上に立ち上がって俺を羽交い絞めにしてきた。
「うあ、てめえらなにしやがる。卑怯だぞ」
「卑怯者はあんたってさっきから言ってんじゃないの!」
 めちゃくちゃ楽しそうな顔をしながらハルヒが言い放つ。こいつ絶対、サディストだ。
 
 しかし、国木田は、絶好の的である俺には全く興味がなさそうである。
「今、隙を見せるわけにはいかないんだよね、、、」
「良い判断」
 また、傍から見ていたらカメラを探してしまいそうな台詞である。
 なんだこりゃ。たかが雪合戦だと言うのにこのシリアスさは何だ。
 2ショットってそんなにすごいのか?しかし首が痛ぇ。
 これを映画にしたほうがうけたんじゃないか。
 
 
「決着をつける。彼が危険」
「そうだね、僕も少し気になる」
 


 
 長門が先に動いた。軽く雪を蹴り上げ、手に取る。
 国木田がサイドスローをする要領で、雪を手に取るなりそのまま投げつける。
 長門はそれをサイドステップでかわすと、手首だけでレーザーのような一投を放つ。
 国木田は、横っ飛びでそれをかわしたが、傍目にもかろうじて、である。
 圧倒的に長門が有利な状況だ。
 
「一か八かの賭けにでますよ、彼は」
 古泉が言うのと、ほぼ同時のことだった。
 国木田が全速で長門に向かって走り始めた。あきらめたのか?
「いいえ違います。前屈姿勢を取って、できるだけ標的範囲を減らそうとしているんですよ」
 古泉の馬鹿丁寧な解説が終わった時。
 国木田が飛び上がった。
 飛び上がったら攻撃を避けられないだろう、それくらいは俺にでも解る。
 俺の想像のとおり、長門は空中の的に向かって、雪弾をその手から発射した。
 しかし、その雪球は的には当たらず、、二発目を長門が放ったその時。
 両者の体で同時に雪球が炸裂した。
 
 国木田は飛び上がると同時に横回転し、長門の第一弾をかわすと同時に渾身の一撃を放ったのだ。
 
「あーあ、勝てなかったかぁ」
 国木田が、雪に身を任せながらぼそっと漏らすと、長門がその横に近づいて、
「あなたは、とても優秀。あの至近距離で、わたしの攻撃をかわした」
 そう言った。それを聞いた国木田は立ち上がって一言、
「まぐれ、だよ」
 そんな会話をしている。国木田、おまえは良くやった。
 長門相手に相打ちできるヤツは、そんじょそこらに転がってはいないからな。
 がっちりと握手しているのは、、、今回は見逃してやるから早く手を離せ。
 
「うお、相打ちかっ!」
「そうなんですかぁ?」
「そうですね、そういうことになります。と、言うことは」
「何もしていない卑怯者の勝ち、ってことね。面白くないけど」
 ハルヒは羽交い絞めをほどき、崩れ落ちた俺の顔を見下ろした後で、にやりと笑ってこう言った。
「先にご飯にしましょ。お腹空いたわ!」
 


 
 公園のベンチに女性陣が腰掛け、男性陣は立ち食い、というスタイルでもって昼食は始まった。
 またしても宣言どおりに、昼飯時にはポカポカしてきてるのが癪にさわる。
 で、いつものにぎやかな食事、というわけにはいかんのだ。少なくとも俺は。
 この昼食の話題はただ一つ。俺が誰を選ぶのか。それのみで進行しているのが現状だからだ。
 
「まったく、俺なら選ばなくても良かったんだがな。贅沢な」 谷口が愚痴る。
「そうだね。せっかくキョンが代わってくれるって言ったのになぁ」 国木田も愚痴る。
「あんたたちしつこいっ!キョンが勝ったんだから。これはルールなの!」 ハルヒががなる。
「あの〜、あたしなら写真くらいいつでも」 朝比奈さんが途惑う。
「ほ、本当ですかぁ!」谷口と国木田が喜ぶ。
「みくるちゃんまでそんなこと言うの?でも、ダーメ。キョンに選ばせるんだから」
 だからおもしろいんでしょ!とばかりに俺の顔を見て、意地の悪い笑いを浮かべるハルヒ。
 古泉は笑ってるだけで役に立たん。携帯を気にしている場合か。そうならんように何とかしろ。
 とりあえず写真だ写真。誰と写れというのか。俺は代わってやると言っているんだ。
 
 長門はひたすらおにぎりやらから揚げやらをパクついている。
 ときたま、「むぎゅ」なんぞという声を上げて静止して、お茶を飲んでいるのが気になるが。
 飯は逃げない、と言いたいところだが、七人がかりで喰ってるわけだから無くなるやも知れん。
 しかしまぁ、逃げやしないわけだからそう言っておこう。
 
「まぁ、ゆっくり喰え。写真は逃げやしねぇからな」
 
「………」
「………むぎゅ」……こくこく
「………あれ、どうしたんですかぁ?」
「そっか、キョンは、ながむがっ」「…ちったぁ空気を読め、国木田!」
 
 いや、写真じゃねぇ、飯だ飯!
 訂正を申告しようとしたが、そうはハルヒが卸さない。
「ふ、ふ〜ん。そう、有希と2ショットね。いいわ、わたしが撮ったげる」
 その顔は、にこやかな悪魔の形相であった事は言うまでも無い。
 


 
 それからどうなったか?ああ、確かに2ショット撮影だったさ。
 
 俺と長門の写真だが、なぜか俺の顔が見切れているとか、
俺の顔面に雪球が当たる決定的瞬間とか、長門が俺にあっかんべーしているとか、
長門の右手が俺の顎にヒットしているとか、雪に埋もれた俺を掘り起こした長門だったりとか、
まともなシチュエーションが一つも無かったから、まともな写真も当然、一枚も無かったがな。
 
 撮影監督がハルヒなばっかりに、結局、ネタにされてハイおしまい、ってことだ。
 ほぼ、指示に従ったわけだが、噴水に落とされそうになったときはさすがに拒否した。
 監督がハルヒでなけりゃ最高だった、のだろうか?他でもそう変わらん気がする。
 
 帰り道、疲れきった俺は、ほうほうの体で家に帰ろうとしていたのだが、別れ際になって見ると妙に足が動かない。後ろを見ると、長門にベルトを掴まれていた。
 
「写真」
 ぽそっと言って、俺を見つめてくる。
 さっき撮ったやつじゃ、おまえも納得いかんと言いたいんだな。
……こくり。
 同感だ。よし、プリクラで良いか?
「ぷりくら?」
 ああ、行けば解るさ。
 
 しかし、行っても解らないことがあった。
 俺が昔、プリクラ撮った時と比べると、妙に機能が増えていて、要するにどうやって撮っていいのか解らん。
 俺は、枠を選べば良いってもんじゃないのが、最近のプリクラだと言うことを思い知る破目になっていた。
 まぁ、何とか写真が取れて、印刷待ちをしている最中。
 
 フードを下ろしてから撮ったら良かったか、などと話していると、
「おーい、早く出てくれよ。こっちは急いでんだ」
……聞きなれた声が聞こえてきた。
「なによ、いっぱいじゃない。他の機械、空いてないの?」
「このプリクラが一番きれいに撮れるんだよね。待ってようよ」
「あ、あの〜、なにしにきたんですか?」
 最悪だ。なに、俺と同じ事考えてやがるんだ谷口!
 よりによって同じプリクラを勧めるな、国木田!
 
 どうすっかな、この状況。
「大丈夫。情報操作は得意」
 心強いな、長門。で、どうするんだ?
「フードはかぶっていなかったことにした」
 出来上がったプリクラを持った長門が、心なしか満足気な顔でそう言った。
 
 そっちかよ。
 
 
                             あーっあんたたち何やってんのーっ!

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:02:02 (3092d)