作品

概要

作者心音
作品名隣に彼がいる。序章
カテゴリー消失長門SS
保管日2014-04-21 (月) 17:21:56

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

長門有希ちゃんの消失の世界でのお話。
......................................................

 

もうすぐ高校2年生へと進む三月の終盤、今は春休みの半ばだ。
俺は早朝から有希の住んでるマンションに呼び出されていた。
しかし俺を呼び出したのは家主の有希ではなく、彼女の幼なじみの朝倉だった。
有希、と呼んでるところで察しの良い人は気づくかもしれないが1月半ほど前から俺と有希は付き合っている。
告白されたのはバレンタインデーのときだな。何度思い返しても恥ずかしい。
少し遅れたが俺たちの祝福会でもしようというのか?
でもそれにしては思いつめたような言い方だったな...
俺はそんなことを考えながら好奇心半分不安半分でマンションまで自転車を漕ぎ、マンションの駐輪場に自転車を止めてからインターフォンを押した。

 

「キョン君?」
有希が控えめな声で応答するかと思っていたが、出たのは朝倉だった。
「あぁ、俺だ。」
「うん。あがって!」
「おう。」
俺は通話を終了すると、エレベーターへと乗り込み7階のボタンを押す。
思えばこのマンションにもよく来るようになったな。自分には何の関係もないと思っていた駅前の高級マンションなだけあって初めてしたときは多少緊張したものだが...
ま、住むことなんて一生ないだろうがな。

 

今ではすっかり馴染んでしまったエレベーターを降りると部屋の前で朝倉が待っていてくれていた。
「朝早くからごめんね。さ、入って。」
「気にするな。お邪魔します。」
「あ、いらっしゃい」
リビングから有希の声が聞こえた。
良かった。元気そうだ。
朝倉が早朝から呼び出すくらいだから有希絡みで何かあったのかという不安はとりあえずなくなったな。

 

靴を揃えてリビングの方へ向かうとこたつにちょこんと正座した有希が小さく手を振っていた。
俺は出来る限りにこやかな笑みを浮かべ手を振り返し、有希の横に座った。
「あらあら。小さいこたつなのにわざわざ横に座るなんて仲がいいわね。」
ニタニタした朝倉がこっちを見つめながら茶化してくる。
朝倉の言う通り大きなこたつではなく正方形のいかにも一人暮らし用のこたつなわけで、自然と有希と肩が触れ合う。
俺は別に恋人だから、と気にしていなかったが有希は真っ赤な顔で俯いていた。
とりあえずそんな空気を変えるため朝倉に声をかける。
「ほら、朝倉も入れよ。何か話があるから呼んだんだろ?」
電話で出来ない話とはなんだろうと色んな意味で気になっていたため急かすような口調になってしまった。
朝倉はすぐ話すわ、と答えて俺たちの向かい側に座った。

 

冷静さを保つよう努力していたらしい朝倉が目を伏せ、少し言いづらそうにしていた。
この態度からあまりいい話ではないと直感したが、こういう場合は急かさない方がいいなと思い静かに待っていた。
1分...2分ほど経っただろうか。
朝倉が決心したように目線を上げ、俺たちを見た。固く閉じられていた唇がゆっくりと動き出す。

 

「私ね。明後日に、海外に引っ越すの...」

 

一瞬頭が回らなかったが、確かにそう言った。
隣を見ると完全に思考停止して固まった有希、真正面には今にも泣きそうなのを必死に堪えてる朝倉の姿。
重たい沈黙が続き、俺がその空気を破ろうとしたとき有希が口を開いた。
「どう...して......」
その両目からは大粒の涙がぼろぼろと溢れてこたつ布団を濡らしていた。
「私、海外で両親が働いてるでしょ?それで、そっちに行かないといけないの。」
「なんで...なんで......!」
ふと、家族の事情なんだから仕方がないだろ?と有希に声をかけようと思ったが思いとどまった。
友人があまりいない有希にとって朝倉は唯一無二の親友。
その彼女が明後日に居なくなると知ったら。
俺に口を挟めるような状況ではない。

 

「お父さんが決めたの。向こうで、3人で住もうって。」
「でも...なんでそんな急に......」
「この話は...半年くらい前から決まってたの。でも、長門さんにそれを伝えたら落ち込むことが分かっていたから......辛い顔、見たくなかったの...ごめんなさい。」
「...そう、なの......でもそうだと知ってたらもっと色々思い出の作りようもあった...のに......」
いつの間にか、朝倉の頬にも堪えきれなくなった涙が伝っていた。
号泣する二人を目の前にして、俺も自然と俯いていた。
悲しくないなんてことはない。高校に入って、有希と知り合って、文芸部に入って。俺だってたくさん世話を焼かれたし、かけがえのない友人だと思っていた。
でもここで俺まで泣いてしまったら恐らく沈黙だけが続くだろう。
意を決し、俺は二人に聞こえるようはっきりと呟いた。

 

「なんだ。まだ二日もあるじゃねえか。」
その言葉に、二人がこちらに顔を向ける。
「引越し、明後日なんだろ?今日、明日があるじゃねえか。まだ今日も朝早い。今から全力で楽しむんだよ。この二日間。」
少し驚いた表情で俺の言葉を聞いていた二人だったが、やがて納得したように少し微笑んだ。

 

俺たちは3人でこの2日間を遊び倒した。
その様子は各々の想像にお任せするとして、割愛させていただく。
だってこれは...3人だけの大切な思い出にしたいからな。

 

朝倉の衝撃の告白から僅か2日後。
お別れの日がやってきた。
まぁ朝倉も盆と正月は日本に戻ると言っていたし全く会えない訳ではないが...俺だって寂しい。
eメールで毎日話そうと思えば話せるが、俺以上に有希はつらく寂しいだろう......
現時刻は朝の9時。朝倉が乗る飛行機はあと30分ほどで飛び立ってしまう。
俺たちは空港のロビーで語り続けていたのだが、朝倉の「もう行かなきゃ」の一言で俺と有希は一気に現実に引き戻される。
「行っちゃうん...だね......」
有希の頬は既に涙で濡れていた。
そっと有希の頭を撫でる。
そういう俺も、もう堪えきれなくなりそうだった。
「ええ...でも、また会えるもの。それに、長門さんにはキョン君がついていてくれるわ。」
「......ぅ...ぁああああ.........」
有希が声を上げて泣き出した。それとは反対に、朝倉は笑みを浮かべていた。
朝倉も辛いはずだ。でも自分まで泣いてしまったら有希がもっと辛くなると知っているから。
朝倉は必死に笑顔を浮かべ続けた。
「ほら、長門さん。私もう行くんだから。最後に笑顔で見送ってほしいな!」
朝倉がそう言うと、有希は真っ赤な顔を上げて朝倉を見つめていた。
ポケットからハンカチを取り出し、有希の顔を優しく拭いてやる。
もう、涙は溢れてこなかった。
「...うん。」
「キョン君?私がいない間長門さんをお願いね。もし長門さんを悲しませたら...すぐに日本に飛んできて刺し殺してあげるわ。」
朝倉が笑顔のままそんな言葉を告げる。
少し前の俺なら多少なり恐怖感を抱いただろう。
でも俺は真っ直ぐ朝倉を見つめ、叫んでいた。
「任せろ!お前の代わりに有希は俺が守ってやる!有希は絶対に悲しませない...お前に殺されるくらいの覚悟はあるさ!!」
有希がそっと俺の腰に手を回してきたが、俺は朝倉を見つめたままだった。
「よし、合格!安心してお別れできるわ。」
「朝倉さん...色々あり.....が..とう、ね...」
「ほら、泣かないで。笑顔で見送ってって言ったでしょ?」
「うん...うん.......」
ぎこちない笑顔を朝倉に向ける有希。
どうやら、もう時間のようだった。
俺たちは誰からというわけでもなく3人で抱き合った。
もう誰の目にも涙は浮かんでいない。
それから言葉はなく朝倉はひとり空港の奥へと消えていった。

 

「...有希。帰ろうか」
「うん...」
寂しい顔をしてる有希の腕を少し強引に俺の腕に絡め、笑顔で言った。
「朝倉も言ってただろ。笑顔だよ。有希は笑顔が一番似合う!俺は朝倉みたいに万能じゃないがな、それでも有希の隣にいる。ひとりじゃ、ないんだ。」
そこまで言うと有希は顔を上げ、ふっきれたように笑顔で言った。
「...ありがとうっ」
「ああ。じゃ、帰るか...」
「......待って。少し、話がある。大事な話。」
「ん、なんだ?家に帰ってからじゃダメなのか?」
「そうじゃない...けど......時間を空けたら、言えそうにない......」
「そっか。じゃあ聞くぞ。」
「うん...」

 

有希は決心した顔で俺を真っ直ぐ見つめている。
そしてゆっくりと口を開いた。
「私の、部屋に...いや、私と一緒に...住んで......私の部屋で。」
「...え?」
「私と、暮らして...あんな広い部屋でずっと独りで暮らすなんてつらい......もう、朝倉さんはいないけど、あなたは私のそばにいてくれる...あなたさえよければ...一緒に住んで...ください......」
俺はぽかんと口を開けたまま硬直していた。
一緒に住む?俺と有希が?嫌なんてことはない。むしろ歓迎したい。が、俺には実家も親もいるわけで説得するのは難しそうだ。第一にバイトをしないと生活費もない。
「俺は...いいんだがな......親がなんていうか......」
「そ、そう...だよね......ごめんなさい。」
有希が俯く。
さっき有希を悲しませないと朝倉に言い放ったじゃないか...
「いや、朝倉と約束したからな。頑張って親には話してみるさ。ただ、上手くいくかどうかは保証出来ないが......」
「私も...行っていい?」
「えっと...俺の親を説得しに、か?」
「...そう。」
あの人見知りの有希が説得に参加しようというんだ。相当本気なのだろう。
「わかった。その方が心強いよ。じゃ、俺の家に行こうぜ。親は家にいるはずだ。」
「うん。行こう」
俺たちは必死に言い分を話し合いながら帰路に着いた。有希の顔は嬉しそうだが、どこか寂しそうにしている。恐らくあまり上手くいくとは思ってないのだろう。
生活費は...バイトでもすればどうにかなる。食費や光熱費も2人で払えばそこまで大した額ではないしな。だが俺も子どもで、親の反対には逆らえない。それに今回は事が事だしな。
色々と思案しているうちに俺の家までたどり着いた。
まだ完全には計画をたててないんだがな...

 

「...ただいまー」
「お、お邪魔します...」
俺たちが靴を脱いでいると、ドタドタと騒がしい妹がお出迎えくださった。
「キョン君おっかえりー!......あー!キョン君が女の子連れ込んでる!お母さーん!!」
「なっ...」
「......」
有希は顔を赤くして居心地が悪そうにしている。
「ま、まぁ...あいつのことはあんまり気にすんな......」
「...うん。」
とりあえず母さんと話をするため、有希をリビングに通す。
うちの家では子どもの教育に関する権利はほぼ母親が持っている。
よって母さんさえ説得できればいいのだが...
「あら、ほんと。可愛らしい女の子捕まえたのね」
「ちょ...捕まえたなんて人聞きの悪いこというなよ......」
「それで?どんな関係なの?」
ものすごいニヤニヤしてやがる。
無難に同じ部活の子と言おうと思ったが同棲することを言わなければならない。
流石に部活の友達との同棲なんて認めてはくれないだろう。
素直に言うしかないか...
俺は覚悟を決めて「彼女だ」と言おうとしたが先に口を開いたのは有希だった。
「キョン君と...交際させていただいてます......長門有希、です......」
それだけ言うと、俺の裾をつかみ身体の半分くらいを俺で隠している。
そんなに恥ずかしいなら無理して言わなくてもいいのに...
「あらあら。彼女さんだったのねー。それで、今日はなんでうちに来たの?お家デート?」
「いや...その......ちょっと母さんに話したいことがあって、な。」
そう言うと俺は2人に座るよう伝え、シャミセンを餌食にして妹を追い出す。

 

そして、全てを話した。
母さんはどこか険しい顔をしている。
うちの母親は基本的に甘甘だが、ダメなものはダメとはっきり区別をつけている。
やはり同棲なんて無理だったか...
そして俺たちを見つめ何か言おうとした、が。
母さんが口を開く瞬間、有希が遮った。
「キョン君...ちょっと、出て...ほしい......2人で話したい......」
「俺がいちゃ言いにくいことなのか?」
「えと...その......恥ずかしい、から...」
有希が恥ずかしい話しをするというのは少しだけ気になったが素直に従うことにする。
とりあえず妹の相手でもしとくか...  

 

......................................................
〜長門side〜

 

うぅ...キョン君には出てもらったけどやっぱり恥ずかしい......そもそも初対面の人と1対1で話すなんて...
キョン君のお母さんを見てみる。
ニコニコしながら私が言い出すのを待っているようだ。急かすような感じはないし言いやすいかもしれない。 
彼は私のために覚悟を決めたんだ。私だって。
「...キョン君とは......結婚を前提にお付き合いさせていただいてます...」
キョン君はどう考えてるか分からないが、少なくとも、私は...
彼のお母さんは、納得したような顔で私を見つめていた。
まるで、私が言い出すことを最初から知っていたかのように。
「そう...可愛い娘が増えちゃったわ!」
「え、えっと...その......」
「同棲のこと、認めてあげるわ。」
「あ、ありがとうございます...!」
「...娘は母親に敬語なんて使わないでしょ?」
「......ありがとう、お義母さん...」
「よろしい。じゃあ、キョン君が来るまでちょっとお話しようかな。」
「...えっと......話題を振って...ください」
私は人と会話するのが苦手。
特に自分から話題を振るのは無理だった。
とりあえずお義母さんに話題を振って貰おうとしたのだが、これが間違いだった...
「だから敬語はダメって言ったでしょ?...話題ねぇ...じゃ、キョン君とはなんで知り合ったの?」
「えっと...彼に最初に会ったのは春の図書館で...私が貸し出しカードを作れなくて困ってるとき話しかけてくれて、代わりに作ってくれて......」
「あら、優しいのね意外と。」
「それで2回目は12月...文芸部は部員が私一人で...廃部が決定してたけど諦めきれなくて校門でチラシ配ってたら彼が入るって言ってくれて......」
「それで入部したの...なんだか運命的ね。」
「...そう。それでバレンタインに告白したら受けて......」
「それで?どこまでしたの?」
「えっ...えっと......どこ、まで.........」
見なくても自分の顔が真っ赤になってるのが分かる。お義母さんは新しいおもちゃを買ってもらった子どものように楽しそうに笑っている...
この後彼が戻ってくるまで、お義母さんの質問攻めは続いた......

 

......................................................
〜キョンside〜

 

妹の相手をして疲れ果てた俺は、もういいだろうと思いリビングへ戻った。
そこにはニヤニヤした母さんと顔を真っ赤にして俯く有希がいた。
...有希になにしやがった。
「キョン君...OKだって......」
真っ赤になったままの有希が嬉しそうな顔で呟く。
「本当か!?」
「ええ。可愛い娘の真剣な頼みを断るほど鬼じゃないわ。」
「む、むふめ!?」
驚きのあまり声が裏返った挙句噛んでしまった。
恥ずかしい......
「お、お義母さん...そのことは...その......」
なるほど。お母さん、ね。
有希は今両親が居ないから寂しかったのかもしれんな...
そこでうちの母さんに甘えてみたくなったのかも。それだと恥ずかしいって言ってたのも納得できるな...... 
「さ、分かったら自分の荷物をまとめなさい。その間私は有希ちゃんとお話してるから!」
「あ、あの!私も手伝う...」
有希が慌てたように手伝いを申し出た。
だから有希になにしやがった......
別に俺は持ち物も少ないし割とまとめてあるから手伝いは必要なさそうなんだが...
「そうか。じゃあ行こうか...」
「あらあら。ひとときも離れたくないほどラブラブなのね〜」
ええい無視だ無視だ!
俺は有希の手を引きつつ自分の部屋に向かう。
「変な本は持ってっちゃダメだからねー」
「持ってねぇよそんなの!!」
思わず反応してしまったが母さん相手にしたら日が暮れちまう。
俺は早歩きで自室へと駆け込んだ。

 

まぁ大きい家具とか生活必需品とかは有希の部屋のを借りるから持っていかなくても大丈夫だし...
テレビはゲーム用にあるよな。
すると持っていくものは衣類、布団、ゲーム機、学習用具、あとは雑貨ぐらいだろう。
有希に手伝わせるのも悪いし量もほとんどないから2時間もかからんだろ...
「あー、有希。多分2時間もかからないからベッドの上で適当に何かしてていいぞ。お前の嗜好に合うか分かんないが少しばかり本もあるし、テレビもあるから。」
「いい。手伝う。」
「......そっか。じゃあやるか」
まぁ手伝うって言ってくれてるから遠慮するのもな...
有希が手伝ってくれたおかげで整理は1時間ちょっとで終わり、昼食を食べてから母親の車で運んでもらった。
あとは自転車だけだし2人乗りで行けばいいだろう。妹の寂しそうな顔はちょっとつらいがな。

 

こうして俺と有希の同棲が始まった。

 

......................................................
キョンと有希ちゃんが同棲するまでのお話でした。ちょっと長くなってしまいましたが...

 

次回から本編に入ります。
時系列はありますが、別に続き物ではないのでどれから読んでも大丈夫です。
第何話などではなく、題名を個別につけておきます。

 

恐らく長さもバラバラですが
殆どは短いものになると思います。

 


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Last-modified: 2014-04-25 (金) 12:33:40 (1127d)