作品

概要

作者000-000
作品名長門有希の大胆発言
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2014-04-21 (月) 12:58:19

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

長門有希の大胆発言

ハルヒに強引に連れてこられた文芸部室で、初めて俺は長門有希と出会った。
(最も、七夕の日に時間跳躍して会っているので、長門からすれば、それが初対面である)
ハルヒ曰く、長門は無口キャラで、誰と話をするときも、必要最小限で済ませていた。
SOS団を結成してしばらく経った頃、呼び出しを受け長門宅へ行ったとき、
自分は宇宙人に該当するという、これまでには想像もつかない長話を聞かされた。
そのときは彼女の話も半分も理解できず、出てきた名称も俺にはさっぱりわからない。
だが、情報統合思念体の急進派に属する朝倉が俺の命を狙ってやってきた際、長門の話したことが、
すべて現実のことなのだと思い知らされた。
 その後も、長門に何度も助けられ、命を救われたこともあった。
俺の中には、長門になにかお礼ができるものがあればと思い、機会を探しているのだが、探してるうちに
逆に助けられたなんてこともあった。ともあれ、俺は長門には感謝という言葉だけではおさまりきらない
程の恩恵を受けているのである。そんなある日のこと…

「これ、読んで」
「ああ、ってこれ前に読んだやつじゃなかったか?」
「続編。帰ったらすぐ読んで」
帰ったらすぐということは、例の栞にメッセージが書いてあるとみて間違いない。
「明日も不思議体験するわよ!9時にいつものところに集合ね!」と、次の日の予定も決められてしまった。
長門のパタンと本を閉じる合図を機に、下校の準備のため、朝比奈さん以外は外に出る。
ハルヒたちはすでに階段を下りていた。今なら栞を見ても大丈夫だろう。

 『今晩、夕食を作って待っているから、食べに来て』

一介の文芸部員にしちゃ、大胆すぎやしませんか?
着替えが終わった朝比奈さんと一緒に先陣を追いかける。帰りはみんなで話しながら分かれ道まで歩いた。
それからというと、急いで家にかえり、制服から私服に着替えてから長門のマンションを目指した。
708号室の呼び鈴を鳴らして、長門の部屋へと上がり込んだ。
そこには、すでに出来たての夕食が並んでいた。
「「いただきます」」
といって箸を勧める。美味い。なんでもありの長門さん、料理の腕も星三つです。
それでだ、一つ気になることが…
「長門、それ俺の量の三倍はないか?食べきれるのか?」
「問題ない。これでちょうど腹八分目」
大食い選手権に出場させたいと心の底から思った。
「ちなみに、カレーの日は何合炊くんだ?」
「二升」
ケタ…じゃなくて単位が違ってた。いつぞやのハルヒのエンブレムを思い出す。
二百キロバイトだったはずが、単位がテラバイトになっていた。
「それより、二升炊く家庭用炊飯器ってあるか?」と、いいつつ学校の給食室の大きな鍋が頭に浮かぶ。
「ない。複数の炊飯器で同時に炊く」
はぁ、それは実に論理的な回答ですが、あの断崖絶壁のようなご飯の山は何合ほどになるんだ。
「8合程度」
喰ったあとに腹がどうなっているか見てみたい。
「それより、おいしい?」
「ああ、もちろんおいしいとも。箸が止まらん」
「そう」
「ところで、今日はなんで呼んでくれたんだ?何か話したいことでもあったのか?」
「特にない。ただあなたと話したり二人の時間をもっと共有したかった。
 文芸部室ではわたしとあなた以外の誰かがいて、二人きりになれる機会がほとんどない」
「長門がそんなこというなんて珍しいな。」長門が恥ずかしそうに少し下を向く。
「…希」
「有希って呼んで」
部活のときから大胆発言連発だ。
「しかし、いきなり言われてもな…こっちまで恥ずかしくなっちまう。
それよりも、ずっとそれで通すのか?学校でも、部活でも」
「できればそうしてほしい」
「ハルヒがなんか言いそうな気がするぞ?」
「問題ない。策はすでに用意してある」
「それじゃあ……有希」
有希はピクンと反応して嬉しそうな表情を見せる。このくらいの笑顔なら、俺でなくても誰でも気づくだろう。
有希だってこんな表情を作れるのだ。無口無表情宇宙人から一歩前進って感じかな。

話をしているうちに二人とも夕食を食べ終え、俺は有希の皿洗いを手伝い、
水場を一通りふいて、皿を食器棚に戻した。
「さて、長門、そろそろ帰るよ。明日の不思議探索ツアーもあるしな」
俺がそういうと、長門が頬をふくらませて俺をじっと見ている。
「俺なんかへんなこといったか…?」
「……ジー」
「あっ、ごめん。有希」
ふくれ面から一転、先ほどの笑顔ではないが、口角が少しあがっている。喜んでいるらしい。
しかし、これだけでは終わらなかった。
「名前で呼ばなかった罰。今晩はここに泊って」
なんですとおおおお!?今日一番の大胆発言であった。

今、俺は呆然と立ち尽くしている。
「お風呂入ってくるから、その辺でくつろいでいて」
そんなこといわれて何をすればいいんだ何を。
国木田あたりの奴ならゲームや漫画の類が部屋にあるが、今俺がいるのは長門有希のリビングである。
カーテンすらかかってない。机しかない。どうすればいい!何もしようがないではないか。
有希から借りた本も家に置いてきてしまった!おそらく寝室に長門が読んでいる本がずらりと並んでいるだろうが、
さすがに女の子の寝室を覗くのは失礼だし。とりあえず床に座って待とう。
それにしても、続編と言われても、ページ数4桁が当たり前みたいな本渡されてもなぁ。
読みきるのにいつまでかかるやら…
「おまたせ、次どうぞ」
「お、そうか。ありが……」
あまりの驚きに、目をそらすことができずに唖然とした間があり、朝倉にナイフを向けられたときみたいに、
慌ててバッタみたいに飛びすさる。その後くるりと後ろを振り返ってようやく声を出す。
「…ちょ、なんでおまえ裸のままで出てくるんだ。バスタオルで髪ふいてないで、隠すとこ隠せよ!」
「下着の替えが寝室にあるからいつもこうしている。
それに、わたしはあなたになら裸を見られてもいいと思っている」
「見られてもいいっていってもな、カーテンもないし、外から丸見えじゃねーか」
「このマンションの近辺に七階以上の建物はないので問題ない」
長門はそのまま寝室へ向かう。当然今度は、長門の後頭部、背中、お尻、両足が目に映るわけで、
再びくるりと回転した。そのあと、パジャマ姿の長門にお風呂に入るよう促され、
マトリョーシカのごとく小さくなっていく俺であった。

風呂を上がった俺は有希がすでに用意してくれていたバスタオルで全身を拭き、洗濯カゴらしき入れ物に入れた。
そのあと、有希の寝室に案内され、ダブルベッドに本棚、洋服店でもないのに北高の制服がズラリと並んでいた。
本棚には、これ以上つめると本棚自体がつぶれそうなほど分厚い本で埋め尽くされていた。
「なぁ有希、俺にも読みやすいような、読書家の第一歩目って感じの本ないかな?今日借りたやつがすでにあるんだけど、あれじゃ、授業中にこっそり…なんてできないからさ。有希のオススメ貸してくれよ」
「…ここにはない。明日図書館にいく機会があれば、探してみる」
「ペアになれるといいな」
「わたしもそれを望んでいる」
俺はリビングで寝ようと、有希に「毛布か何かないか?」と尋ねると、
「ベッドで寝ればいい」
「なんですとーーーーーー!?」
「ダブルベッドだから、二人で寝る」
当たり前のことを当たり前に言われてしまった。もう、こうなりゃやけだ。寝てやろうじゃないか。と、いいつつ
ベッドの端に有希の姿が視界にはいらないように外側を向いてベッドに横になる。我ながら気が小さい。
その姿をみた有希は電気を消し同じベッドに入る。
「もっとこっちにきて」
「そういうわけにもいかないだろう」
「気にしなくていい。きて」
俺はベッドの三分の一程度まで寄った。すると今度は有希の方から近づいてくる。
有希の両手が俺の腰を通りすぎて腹の前で両手を組む。
俺の背中には有希の頬と、腰には小ぶりながら柔らかいものがあたっている
「あったかい」
「そりゃこんな状態でいればそうなる」
「身体こっちに向けて」
この状態で有希の方見ろってのか、どういう冗談だ。俺の理性が落ちてくる隕石のようにだんだんと削られていく
有希の腕に体重が乗らないよう気をつけながら、有希の方に身体をむける。
「あなたの温もりがどんなものか感じたかった」
すると今度は俺の胸に頭を寄せる。自然と俺が有希に腕枕をしているような状態になった。
さすがに俺も余裕がでてきたので、有希に話しかける
「今、どんな感じだ?」
「あったかい、安心する、嬉しい」
「じゃあその気持ちを顔に出してみてくれ」
そこにはハルヒや朝比奈さんと互角かそれ以上といえるほど100%純粋な有希の笑顔がそこにはあった。
その笑顔は写真かなにかで残したいくらいだったのだが、さすがにそれは嫌がるだろうし、
俺は自分の網膜にこの笑顔を刻み込む。有希の髪を撫で、ぎゅっと抱きしめたまま眠りについた。

翌朝
目を覚ますと、そばに有希がいない。自分が寝相悪いのすっかり忘れていた。
隣から音が聞こえてくる料理をしてるようだ。
「ながっ……有希、おはよう」
「おはよう、あとちょっとで朝食ができる。顔洗って待ってて」
「わかった。それより、俺寝相悪くなかったか?有希のこと蹴ったりしてなかったか?」
「問題ない、あの程度なら許容範囲内」
そこはストップかけたほうがいいな。やっぱり俺、寝相悪かったらしい。
今度、部室のパソコンで治す方法でも調べてみよう。

9時の集合に向けて、洗顔、朝食などを済ませ、有希宅をあとにした。
俺の自転車で二人乗りをし、いつもの集合場所まで集まる。
「遅い!罰金!」
「それより、あんたたちどうして二人乗りできたわけ?」
「俺が昨日、本借りたろ?そういえば前のやつまだ返してなかったって思いだしてさ。
 結構な重さだったから自転車のかごに本いれて、それでここまで二人乗りしてきたわけ」
「ふーん、まぁいいわ。事情はどうあれ、罰金は罰金よ」
へいへい、どーせ支払いは俺ですよーっと。
「払うのはわたし」ハルヒと二人でびっくりしていた。
「彼は自転車を置くために、ついてから一度戻っている。ゆえにわたしが一番最後」
「そんな几帳面にならなくてもいいじゃない。キョンに払わせておけばいいのよ!」
「彼にはいつも奢ってもらっている、たまにわたしの回があっても不自然ではない」
「有希がそういうのなら、まぁ…いいわ」

それを機に今日のSOS団の活動がはじまった。
いつも通り一人ずつ爪楊枝をひく。ハルヒ&朝比奈さん&古泉ペア、俺&長門ペア
「なんか、いつもハルヒの方が3人になるな」
「涼宮さん速いから…マラソン選手になった気分です」
「不思議探しをするのに早足でいく理由でもあるんでしょうか。
涼宮さんその辺どのようにお考えかお伺いしたいのですが…」
「簡単よ。その方が時間内に多くの場所を回れるでしょ?」
「たしかにそれは利点ではあるが、規模の小さい不思議を見落としてしまう確率が跳ね上がりそうなもんだが」
「ちっぽけな不思議は我がSOS団にとってはミジンコみたいなものよ。
そんなので満足してたらSOS団のメンツが丸つぶれだわ!」
「そんな大きな不思議だったら誰でも気づく。それに、些細なことが大事件の重要な証拠に
なるなんてこともあるしな」
「……有希?どうしたの?さっきからずーっとあたしのこと見てるけど」
「涼宮ハルヒ、あなたは彼からハルヒと呼ばれている」
「それが?」
「わたしは彼から長門と呼ばれている」
「それで?」
「………わたしも名前で呼ばれたい」
「そんなことでわたしのこと見てたの!?キョン、名前で呼んであげなさい」
「(策ってこういうことね)」
「ゆ……有希」喜びの表情をドリンクメニュー表で隠していた。
「あの…そろそろ注文を伺いたいんですが…」
「あ、すいません!あとはながっ…じゃない有希、おまえだけだ」
「…クリームソーダ」

「それで?散策の方はどうするんだよ」
「涼宮さん、1つ提案があるのですがよろしいでしょうか」
「提案って?」
「グループ分けを3つにするんです。涼宮チーム、朝比奈&古泉チーム、キョン&長門チーム(敬称略)」
「なんでそうなるのよ?」
「まず、僕たち3人で午前で回るルートを決めます。そのルートに従って涼宮さんは大きな不思議を探索する。
 僕と朝比奈さんはそのルートを小さな不思議がないか探索するんです。 
それによって、涼宮さんは後ろの僕らを待ってイライラすることもなく、ご自身の思い通りに進める。
僕らからすれば、涼宮さんのペースについていくのがやっとでろくなものも発見できない。
ということで、僕らはゆっくり進んで小さな不思議を見つける。
さっきの彼の話じゃないですが、小さな不思議がとんでもないことに関わっていた、
なんていうことがでてくるかもしれないですしね」
「ふむ。たまにはこういう事も必要か。古泉君さすが副団長なだけあるわ。キョンとは違って」
「あ、そうそう。涼宮さん、最初に決めたルートにもし変更がでてきたら、お昼のときに教えてください」
「わかった。頼りになるわね」ニヤリという顔で俺の方を見ている。

そう言いながら地図を買いにいくため、ハルヒたちは先に喫茶店をでていた。
残った俺と有希は「今日も図書館でいいのか?」と聞くとなにやらチケットらしきものを出してきた。
「映画のチケット」
「それが?」
「原作を読んだことがある。見てみたい」
「2枚あるけど、もしかして俺の分か?」
「そう」
「映画の代金くらい払うよ」
「いい。遅刻の罰金と一緒。
わたしがあなたを強引に誘っているだけ。気にしないで」
「映画館へはどうやって?」
「あなたの自転車があればすぐに着くはず」
「んじゃ、俺たちも行くとしますか。」
俺は自転車の鍵を置き、後ろに有希を乗せると、映画館へむかった。
「飲み物飲む?」
「じゃ、コーラあたりで」
「わかった」
そして、座席に座ることになったのだが、何この状態。有希が上映中の飲食物をもってきてくれたのだが、
ポップコーン特大サイズのプレーンとキャラメルの2種類、俺にはコーラ1本有希にはクリームソーダ3本
つーか、さっきの喫茶店でもクリームソーダ飲んでなかったっけ?そんなに好きなのかな……
とりあえず、気が向いたら大食い選手権やってるプロデューサーに連絡して有希を出場させることを決めた。

映画が始まる。有希は原作を読んでいるらしいが、どういう気持ちで見てるんだろうか。
(ヒョイ、パク、ヒョイ、パク、ヒョイ、パク、ヒョイ、パク、ヒョイ、パク、ヒョイ、パク、ヒョイ、パク、ヒョイ、パク、…)
映画も中程にさしかかると妙な違和感が…
って!ポップコーンが全部なくなってる!!俺一つも食ってないのに。
なんか妙な音がするなと思っていたがこの音だったのか。
映画が終了し室内が明るくなる。
「どうだったんだ?原作と比べた感想は?」
「ところどころ抜けてつぎはぎされた状態の駄作。ひとり一人の人物の心情がしっかりしていれば、
 最後はもっと感動的になったはず。でも原作のあれだけの内容をこの時間内に注ぎ込む方が無茶
 二部作にでもしていれば少しはマシ」
「その原作を今度見てみたいな」
「機会があれば、学校にもっていく」
「頼んだ」

そのころ 古泉&朝比奈チーム
「さっき古泉君が打開策を提案してくれて助かりました」
「いえ、彼のヒントのおかげですよ。それに涼宮さんと僕らの利害の一致ですね」
「午後も…というより今後もこんな形でいけるといいですね」
「ええ。休日のきままな散歩にはもってこいです。それにあなたのような素敵な女性ならなおさらね」
「相変わらず口が達者ですね。でも褒められるのは嬉しいです。ありがとう」
「どういたしまして」

映画鑑賞も終わり、昼の集合時間となった。
「なんであんた達自転車に乗ってるのよ?」
「そっちが地図買ってルート考えていくっていうから、こっちもここからスタートじゃなくて、
少し別のところを拠点にして回ろうって話になってな。その拠点までは自転車、それからあとは徒歩ってわけ」
「なるほど、いいアイディアですね。今後の参考にしましょう」
「そういえば、ルート通りに進めたのか?」
「僕たちの方は目的地まで到達は不可能と考えて途中でおりかえしてきましたが、涼宮さんは自分で決めたルートよりも先にすすんで、地図に書き込んでみたら、決めたコースの2倍の距離を歩いていましたよ」
お昼を食べながら、まずはグループ決め…したのだが、さっきと同じ組み合わせになってしまった。
有希ちゃんちょっとインチキしてませんかい?

古泉たちは午後のルート決めを始めた。ハルヒは地図を古泉から取り上げると、さっと何かを書き古泉に戻した。
「涼宮さんこんなにいくんですか?」
「とうっぜんよ、あたしに不可能はない!」と豪語して去っていった。ゴジラが歩いているような気がする。
俺たちはというと、昨日から決めていたあそこにいくことにした。図書館である。
「有希、昨日頼んでおいた俺でも読めそうな入門書みたいな感じの奴頼む。」
「わかった」といって探し回ってくれた。俺も自分で探してみるのだが…なかなかいい本が見つからない。
しばらくして有希が戻って…って?大量の本を縦に積み上げてこっちにむかってきた。
「有希、選んできてくれたのは非常にありがたいのだが、図書館から借りられる上限もあるし、
その中からセレクトしてくれないか?5冊ほど。俺も一緒に見て、面白そうなの探すよ」
「わかった」
こうして、俺と有希の入門編ベスト5が決定した。
「あとは読むだけだ。ありがとう有希」
有希は口角をあげ嬉しそうな表情を見せた。それからひたすら本を読み続ける俺に、5冊を除き、
持ってきた本を全て片付けたあと、なんと俺の図書カードまで作ってきてくれた。
「ご、ごめん有希、俺なんにも手伝わないで…すまん」
「いい。あなたのためなら」
「俺のためって今まで俺の方が有希に面倒事頼んでたんだぞ?そのお返しもしてないのに…」
「お返しなら昨日たくさんもらった」
「え?俺なにもしてないぞ?」
「わたしの料理をおいしそうに食べてくれて、わたしの家に泊ってくれて、腕枕とか抱き締められたりとか
 お礼ならいっぱいもらった。今日でイーブン。しばらくはお返しなんて考えなくていい」
「そうか。有希が満足してるならそれでいいよ。つーか、5月のときの逆になっちまったな。
 俺が有希のカード作ってたのに、今日は有希が俺のカードを作ってくれた。ありがとう」
「いい」
言葉は他人がいるときと同じようなもんだが、今日一日中有希の嬉しそうな顔、楽しそうな顔をたくさんみたな。
有希だってこんなに豊かな表情をするんだって皆に伝えたい。
そして俺自身ももっといろんな有希の表情を見てみたい。そう思いながら自転車をこいでいた。
ようやく5人揃ったところで、今日は解散となった。みんなが散ったあと、有希から栞をそのまま一枚渡された。

 『月曜日 お弁当を作って持っていく。昼休みに文芸部室で
                  量は昨日と同じ位にしてある。心配しないで』

「有希が俺にお弁当つくってくる?!」まぁ昨日の晩飯のことを考えれば、願ったり叶ったりってやつだ。
自転車を漕いで帰宅するといきなり母親に怒鳴られた。泊まるとか不思議探索ツアーのこと全然連絡してなかった。
昨日は国木田の家に泊って今日は家に戻らず、直接ハルヒたちと合流してたと告げた。
有希ん家で抱き合ってましたなんて言えないしな。
とりあえず、怒鳴られついでに月曜日の弁当はいらないと告げた。

 いつもの早朝ハイキングコースをスキップしながら歩いていたい気分にさせられるこの高揚感、
授業はすべて読書で潰し、昼休みには有希作のお弁当が待っている。これを高揚せずにいられるだろうか。
教室に着くなり昨日から読んでいた一冊目を開く。
有希のメッセージ入り栞でどこまで読んだか分かるってところがいいね。
ハルヒ的に言うならば、『萌えよ、萌え。萌え要素』って感じかな。
それにしても、読書したいというのに周りがうるさくてかなわん。文章のイメージがわいてこない。
俺の周辺に寄ってくる奴もいるしな。
「キョン、おまえどうしたんだよ。読書なんてらしくないことしてさ」
「らしくないとはなんだ。俺だって大学受験に向けて、色々考えて行動してるのだ。親に塾へいけと言われるのを
なんとしてでも防がないといかん。これがその第一歩目だ」
と告げると、耳を片腕でふさぎながら読んでいたり、授業の板書がしばしおわったところで読んでみたり。
長門はこんな環境下であのスピードで読んでいたのか…しかもべージの内容を全て頭の中に入れて。

三時間目が終わり、トイレ休憩にいき1−5に戻ろうと1−6を通り過ぎようとしたときのことである。
有希が女子三人となにやら話している。有希がSOS団以外には、ほぼ無口なので、
一方的に聞いてるわけなんだろうが、有希に何の用で三人が話しているのか様子をしばらく見ることにした。
「きもいんだよ〜」「何かいってみろよ」
という会話が聞こえ、そのすぐ後に三人のうちの一人が、有希の読んでいた本を取り上げ、
「ほら、取り返してみろよ」と聞こえた瞬間、1−6に入り込み取り上げていた本を取り返した。
「おまえら、どういうつもりだ?長門に一方的に悪口ばっかり吐いて、あげく長門の本を取り上げた。
 長門がおまえらに危害を加えたか?長門がおまえらに喧嘩を売るような真似したか?それともあれか、
 長門より自分がブスだからっていうあてつけか?」
「んなわけねぇだろ」
「本当にそんな訳なかったらすぐ言い返してなんかこないだろ。ブス一号決定だ。
 さて、二号になりたいのはどっちだ?ボロが出る前にとっとと名乗ったらどうだ?」
「……」「……チッ」
「はい、ブス二号決定。舌打ちしたおまえだよ。因みに言っとくが、沈黙することも認めることになるんだよ。
 お前がブス三号だ。さてブス三姉妹、これが初めての長門に対するあてつけではないこと位さっきのやりとりで
すぐ分かる。今までうちの団員が世話になった分、どう償ってもらおうか?」
「ずいぶん言いたいこと言ってくれるじゃねーか」と後ろの座席にいた奴が割り込んできた
「何だおまえ、この金魚のフンのツレか?」
「んだとコラァ!!」といって、机を蹴り飛ばした。
「おーおー、沸点が低いようだな。頭真っ赤だぞ。ちょっと煽ったくらいでキレてるようじゃ、
おまえも大したことないな、机蹴った位で脅しになると思ってんのか?」
「てめぇ、ふざけんじゃねぇ、ぶっ殺すぞ、コラァ!!」
「それは怖いねぇ。死ぬのはごめんだ。こっちも殺す気でやらないとなぁ。
ところでおまえ、死ぬ覚悟あるんだろうな?ぶっ殺すという以上、返り討ちにあってもおかしくないだろ。
『殺すぞ』ってのは脅し文句じゃねぇんだよ。さて、どうする?殺るか?殺られたいか?」
「チッ」といってそいつの席らしき、イスに座った。

しばし間をおいてチャイムが鳴る。「話は昼休みにしようぜ」といって1−5の教室に戻る。
後ろからトントンと突かれる。
「ね、今の何だったの?」
「部活のときに話すよ」
そして昼休み
「キョン、食おうぜ」
「すまん、今日は先約があるからそっちにいくよ。ごめんな」
といって教室を抜け出し文芸部に向かった。扉を開けると大きい弁当が一つ、小さい弁当が一つ、
そしてパイプ椅子に座っている有希は下を向いていた。俺は有希の手を掴む。
「有希、さっきは苗字で呼んで悪かった。有希って名前で呼ぶとあとあと面倒くさくなると思ってな。
 昼休み、一緒に弁当食べようって約束果たさないとな。でも、あんな光景見せられたあとじゃ、有希のこと
 気になって仕方ない。弁当をおいしく食べるためにも、先に話したいんだけど、いいか?」
コクリと頷く。
「まず初めにだ。さっきも言ったけどあんな嫌がらせ、今、始まったことじゃないはずだ。なんで有希は
反撃しないんだ?」
「私の任務は涼宮ハルヒの観察だから、他のことには出来るだけ関与しないことを命令されている」
「朝倉みたいに情報操作でどっか飛ばしたらいいじゃないか?エジプトとか」
「朝倉涼子のときは、敵性と判断され、情報統合思念体から許可がおりたから。あの三人にそれは出来ない」
「今日俺が出張ってしまった以上、明日以降机の落書きや教科書ノートをカッターでぐちゃぐちゃになんて
 陰湿なことになりかねない。今だって、有希がいないことをいい事に、あの三人組が落書きとかしてるかも
しれん。お前のことだから情報結合いじってなんとかなるんだろうけど、ハルヒに気付かれた。
俺と有希がなにかしらのトラブルにあったとしかまだ思ってないようだが、全貌が明らかになるのは時間の
問題だ。ハルヒが知れば、あの三人まとめて屋上から吊下げるなんてことやりかねんしな」
「それは大丈夫」
「どうして?」
「前々から涼宮ハルヒに助けられていた。今日はたまたまあなたが助けに入ってくれただけ」
「じゃあ、ハルヒにさっきのことがバレても問題ないってことか?」
「そう。でもあなたにも見られた以上大げさに出来ない。心配しないで。わたしが決着をつける。
 今日あなたが助けに入ってくれて、すごく嬉しかった」
「よし、じゃ、嬉しい気分そのままに一緒に弁当たべるか。朝から楽しみだったんだ」
「横に座っていい?」
「お、じゃあ俺が少しズレないとな。しかし、俺の予想以上の弁当でびっくりした。母親の弁当は、
ただかき込むだけだったけど、味わって食べる弁当なんてのは小学校の遠足での弁当位で、
それ以降全くなかったな」
「そう……嬉しい」
ようやく有希にも笑顔が戻ったようだ。俺は午前中うるさかった、読書中の騒音について有希に聞いたが、
「しばらく読んでると慣れる」といわれてしまった。まぁ、これまでの出来事を考えると、ハルヒがでかい
声でしゃべってる横で読書してりゃ、慣れるわな…俺はいつになったら読書に集中できるのだろうか。

ご馳走様でした。二人揃ってそういうと、文芸部室を後にした。
1−6に戻ると、有希の机の上には描くスペースが無くなる位の落書き、その上にごみ箱が逆さまに置いてあり、
イスにはたくさんの画鋲、当然針が上を向いている。イスのまわりには有希の教科書・ノートがちらばっており、
カッターでズタズタにされていた。有希が戻ってきて何人かニヤニヤしている奴がいた。
有希はそのうちの一人に近づいた。ブス一号である。有希は左手で相手の首を力強く掴んで宙に上げる。
「これ以上、わたし及び、わたしの周囲の人間に一切関わるな。誰かに手を出したら、わたしが許さない」
有希の殺気が1−6中に襲い掛かる。視線が今度はさっきの男に向いた。「ひぃ」という声を出しておびえている。
「もう…もう、しな…っいから…助けて…」
気絶寸前のところまでブス一号を追いこみ、手を離した。
有希が自席に戻ると、右手をふっと優しく横に流すと、落書きやごみ箱、画鋲が一瞬にして消えた。と同時に悲鳴
が聞こえる。ブス二号が悲鳴を上げている。よくみると、有希のイスの上にあったはずの画鋲がすべてブス二号に
刺さっていた。同時に、先ほど視線を向けた男がごみ箱をかぶっていた。
さらに、ブス三号の周辺に教科書・ノートなどが散らばり、カッターでズタズタ、
机の上は落書きだらけになっていた。有希の教科書・ノートは元通り午前中のまま、傷一つついていない。
有希さん、ちょっとやりすぎでないかい?とりあえず、長門有希の逆鱗に触れてはならない、という1−6だけの
都市伝説が囁かれるようになったのは、もう少し後のことであった
放課後
「なんだ、あれのことだったの。でも決着ついたんならいいじゃない。それにしても、
いじめられてるところに割って入り、言葉だけでその場を収めたなんてキョンもなかなか
やるわね。見直したわ」「そりゃどうも」
「でも、キョンどうしたの?部室きてまで読書だなんて」
「受験に備えて色々とな、つけておかなきゃいけない知識とか、速読ができるようにっていうのもあるし、
漢字とかも勉強になるしな。あ、有希。ここの表現いまいちわからないんだけど、これどういう意味?」
「これは……こう」「お、そういうことか、ありがとう」
「まいりましたね、五人中二人が読書ではボードゲームの相手が朝比奈さんだけになってしまいました」
「でも、文芸部としてはこれが日常なんですよね」
「それもそうですね。部としての活動という意味では妥当なんでしょう。
長門さんは小説を書いたりはしないんですか?」
「読むだけ。書くのは苦手」
「これはこれは、長門さんに苦手なことがあるとは驚きです。うーん僕も読書に励んでみましょう。
長門さんここの本棚からお借りしてもよろしいでしょうか」「いい」
「ちょっとちょっと、この前の不思議探索ツアーの反省会やりたいんだけど?」
「有希、ハルヒもああ言ってるし一旦切り上げよう」
「そう」というと俺たちはキリのいいところで本に栞を挟み、本を取り出す途中だった古泉は本棚に戻した。
「で、ハルヒ。反省会ってどうするんだ?」
「当然、この毎度毎度収穫ゼロの状態を何としても打破するためよ!」
「それより、一昨日は2グループとも今までにないやり方でやってましたよね。次回の散策に活かしてみては
いかがでしょう?」
「さすが古泉君いいこというわ。えーっと、一昨日の策ってなんだっけ?」
「ハルヒが一人で、残り4人が2グループに分かれて散策。あと自転車で拠点を変えてから散策する。だろ?」
「そうね、そうだったわね」
「しっかりしてくれよ、団長様」
「うるさい、キョン。とにかく、未だ収穫ゼロでは探索ツアーをしている意味がないのよ。
 次こそなんとしてでも見つけ出すわよ」
「(おい、古泉。わざとなんか作ったりできないのか?機関使って)」
「(それができるなら、もうすでにやっています。大小関係なく何か不思議なことって意外と難しいんですよ)」
なるほど、と思いながら考えていると、
「おい、ハルヒ。お前が思う不思議っていうものの例をいくつかあげて欲しいんだが。大小わけて。それがわかれば俺たちも探しやすい」
「ふむ…例ねぇ…んー…とにかく不思議なものよ!意外なものが不思議になるかもしれないんだから、例を幾つか挙げたらそういうものにばっかり目がいってしまうじゃない」
「おまえ、今考え付かなくて、ごまかしたんじゃないだろうな?」
「うるさい。とにかく不思議なものよ!」
「それじゃ、探検の新案がでた以外は反省になってないだろうが」
「とにかく!不思議が見つかるまで探索続けるわよっ!」
といって、反省会を終えると団員は元の活動に戻った。今度は古泉も含め、5人中3人が読書、朝比奈さんは掃除をし、ハルヒはパソコンをいじっている。
「ハルヒ、すまんが少しだけパソコンかしてくれ」
「あんた、読書してるんじゃないの?」
「読めない字とか、意味が解らない四字熟語が多くてな。調べたい。」
「ふーん、そういうことね。ならどうぞ」
といううちに日も暮れ、有希のパタンという音とともに皆帰り支度をした。

俺は帰ってから食事と風呂を済ませると、さっきまで読んだ本ではなくメッセージ入りの続編の方のページをめくった。さすがにこの本を学校に持って行って戻ってくるので、学校では有希が選んでくれた本を読み、帰ってから分厚いほうの本を読むことにした。しかし、さっきのハルヒに言った話ではないが、俺にはわからない語句や熟語が多い。比喩もわけわからない表現ばっかりで、どんな雰囲気なのかイメージがつかん。国語辞典と漢字辞典を横に置き、解らなかったものを現代文のノートの裏にメモしていった。
「キョン君一緒に遊ぼう〜」と、ノックもせず部屋に入り込む妹だったが、
「俺はお前と遊んでる暇はない。読書中だ」といって妹をつまみ上げ部屋から放り出した。
ページをめくるうち、自然と床で寝てしまっていた。

次の日
朝から読書してたのだが、有希のクラスでの決着以降、どうなっているのか隣のクラスが気になり、今日の全ての
休み時間、終わる直前に隣のクラスの様子をみにいっていた。さすがに昨日の決着の甲斐があってか、
有希から半径3メートルは誰も近づいてない、そんな感じがした。「もう、安心みたいだな」
放課後、有希からまたしても一冊の分厚い本が渡された。
「これ、この間の映画の原作本」
「こんな分厚い内容をあの時間でまとめていたのか!?」
「そう、無茶しすぎ」
「何、キョン、有希と映画見に行ってたの?」
「ああ、日曜の午前中にな」
「なんで有希とあんたが映画見に行く関係になってるのよ?」
「わたしが強引に誘った。彼に文句を言うのならわたしが替わりに聞く」
「有希がそういうならいいわよ」
「(さて、先週の金曜日に借りた奴も今読んでるし、休み時間とかに読むものもあるし、映画見たからには
 すぐにでも読み始めたいし…どうしようか…な}」
と悩んでいると、
「キョン君お茶です。机に置いておきますね」
「あ、すみません、ありがとうございます」
俺は鞄もおかずに立って悩んでいた。ひとまず荷物と映画の原作本を置く。
しばらく考えていると、朝比奈さんから意外な言葉が発せられた。
「キョン君、私と会ってしばらくしたときのこと覚えてます?」
「え?何があったかとかは覚えてますけど、細かいところまではなにも」
「この間の長門さんじゃないですけど、時期的に私が最初に言った思うんだけどな」
「ええ?そんなことありましたっけ?」
「私のことは、みくるちゃんとお呼びください♪」
「あ!!!確かにあった。でもそんなの言えるわけがないじゃないですか。朝比奈さん先輩だし。
 俺なにもしていないのに部室に来たら毎回お茶出してくれますし…」
「へぇ、そんなやりとりがあったんですか」
「古泉が転校してくる前のことだったからな」
「キョン君、呼んでもらえませんか?涼宮さんだって『みくるちゃん』って呼んでくれるんですよ?」
「みくるちゃん、コイツ甘やかさない。すぐ調子に乗るんだから」
「そりゃお前のことだろ」
「うっさい、エロキョン」
「どうしてもだめですか?」
「申し訳ないですが、朝比奈さんをそんな風に呼ぶやつなんてハルヒくらいですよ。さすがにそれはできません」
「そっか、残念。私がキョン君たちと同学年だったら呼んでくれていたかな?」
その言葉、朝比奈さんの場合、嘘に聞こえないからな。俺たちに合わせて未来から一年余計に遡ったとすれば、
それが現実になる。朝比奈さんが先輩でホッとした。
さて、どうしたものか。原作本もちかえるのも一苦労だしな。部活中はこれをメインに読むか。家では先週かしてくれた本、教室内では文庫本と取り決めた。
「有希、この原作本部室の本棚に入れさせてもらってもいいか?」
「かまわない」
朝比奈さんのお茶を飲みながらしばらく読んでいると、映画の最初のシーンが頭に浮かぶ。こうやってイメージできるとページがどんどんめくれて良い感じだが、ちょっと雑念が入ると三行くらい前から読み直すことになったりして、本読むのに支障が出る。ハルヒ、おまえはゆっくりしててくれ。読書の邪魔だから。

金曜日
読書生活にもだいぶ慣れてきてクラスがざわついているのが気にならなくなった。今の俺はベスト5のうち1冊を読み終え2冊目にかかっている途中である。明日、午前午後どちらにせよ長門と組みになることができれば、図書館に1冊は返し、2冊目以降は一旦返してまた借りるという手筈をとろう。教室にある国語辞典と漢字辞書が俺のすぐ横に置かれていた。
放課後、またしても有希からの栞入りの小さめの本を渡された。
「近くの古本屋で見つけた。あなたが借りた5冊とちょうどいいと思う」
「さんきゅ、有希。これ、いくらだ?」
「いい。偶然見つけただけ。気にしないで」
「ありがとう」と言って鞄にしまい、映画の原作本を読み始めた。
「こんな格好で私が言うのもどうかと思いますが、なんだかホントに文芸部らしくなってきちゃいましたね」
「あんたたち、ここはあくまでSOS団なんだからね!SOS団らしい活動をしなさい!」
「SOS団らしい活動ならしてるじゃないか」
「どこがよ!」
「俺や有希が読んでいるのは地球の外の話だ、いろんな物理的な用語がいっぱい出てくるからいつも調べてるんだけど、ワープの仕組みだの空間を歪ませて、どこでもドアみたいに移動する手段だのそういう話だ。
よく言うだろ?一つのワードを知ると、あちこちでそのワードを見かけるなんてこと。
これも情報収集というれっきとしたSOS団の活動だ」
「むぅ…たしかに理屈は通っているわね。」

その夜。自室に着くなり、有希からもらった本を開いて栞を確認する。先週と同じ内容だ。
着替えを済ませた後、図書館から借りた本と洗顔&歯磨きセットをもち、母親には泊まることになるかもしれない。
と告げて、有希宅へと急いだ。何せ有希が風呂入っている時間なにもすることがないしな。
俺、有希の家に泊まりに行く気満々みたいな感じになっているけど、あくまで備えであり、有希の裸をもう一回
みたいとかではないのだ。本屋にいって寝相を良くする本を買って熟読していたのは内緒だ。
 そんなことを考えているうちに、有希のマンション到着。呼び鈴を鳴らしてリビングへ移動する。
先週同様すでに夕食がならんでいた。俺の来る時間を計算されているかのように、
どれも一番おいしいときの温度で食べることができた。さすが有希様である。
「どう?おいしい?」
「感無量です」
「よかった」
「今日泊っていって」
「俺は別にいいけど、先週といい、俺が有希のところに泊まる意図ってあるのか?」
「あなたのぬくもりが一週間ずっと忘れられなかった」
「そうか」なんて普通に答えられるか!!この二週間大胆発言連発だぞ。
「俺でいいんなら泊っていくよ」
「よかった」
そのあと二人で片付け、交互に風呂に入り寝る前は二人で読書会となった。それがいくら習慣でも
一回や二回くらいは下着を前もって持っていくか、バスタオルを巻いて歩いて欲しいもんだ。
読書しながら寝転がって呼んでいると俺の頭すれすれを通り、とんでもない角度で裸を見せられた。
図書館からかりた本のうち2冊目を読み終え、キリのいいところでダブルベッドに寝る。
先週は有希に促されながら抱き合っていたが、今回は枕のど真ん中で寝ていた。
電気を消した有希がベッドに横になると、自然と二人で中央により、抱き合っていた。
「月曜日にまたお弁当作っていくから部室にきて」
「また作ってくれるのか?」
「……」コクリ
「じゃまた期待して待ってるよ」
「できれば、毎週このパターンがいい」
「金曜に夕食を食べて、有希と一緒にベットで寝て、次の日はそのまま不思議探索ツアー、で月曜日にお弁当?」
「そう。毎週泊ってほしい。」
「そんなに俺泊っていいのか?」
「いい、わたしはあなたのそばにいたい」
「そうか、わかった」といって長門を抱きしめた。
「あなたのやさしい抱擁がわたしの好きなもの。ずっとこうしていたい」
「好きなだけ堪能していいよ。こんなんでいいならいつでもやってやるさ」
「嬉しい」そのまま二人とも抱き合ったまま眠った。

土曜日
 目を覚ますと、寝たときの姿勢のままでいたことに気づく。寝相直す本熟読しておいてよかった。
意外に早く目を覚ましたようだ。有希におはようと告げ、二人で朝食をとる。片付けが済むと、いつもの公園についた。どうやら俺たちが一番乗りしたらしい。しばらくして、古泉、朝比奈さんが到着し、
「あれ?キョンにしては珍しいじゃない」
「ああ、今日は結構目覚めがよかったからな」
「まぁいいわ、いつもの喫茶店にいきましょ」
月曜日の反省会を活かし、喫茶店でのクジは五本から四本になっていた。
午前中は、ハルヒが独り歩き、俺&朝比奈さん、古泉&有希となった。
三回連続で俺と有希だと怪しまれそうだしな。
古泉が先週買った地図をもとに、拠点を決めて喫茶店を出ようとしたときに
ハルヒが注文したシートを俺の前にスッと寄せた。
「おいこら馬鹿ハルヒ、今日の支払いはお前だ」
「今日財布忘れちゃって」
「すぐにばれる嘘をつくな」
「女の子に払わせる気?」
「男勝りの運動神経しているやつが女の子といえるか。男女雇用機会均等法を発令する」
「あなたはいつも、彼よりちょっと前に来ている。あなたが支払いする回があってもおかしくはない
 先週のわたしと一緒」有希のサポートが入った。ナイス有希
「涼宮さん、言い逃れはできないようですよ?」
「ブー。わかったわよ」
といって見事団長に支払わせることに成功した。有希と一緒なら奢らなくて済むような気がするぞ。
喫茶店をでた俺たちはグループごとに出発、俺はというと、帽子が飛んでいかないように片手でおさえている
朝比奈さんを乗せ、拠点を目指した。ちなみに今日の朝比奈さんのファッションはというと、
白く大きな帽子にノースリーブで淡い水色のワンピース姿であった。
「じゃ、行きますか」
「はい」
「そういえば朝比奈さんと二人きりなんて結構久々ですね」
「毎回涼宮さんとグループが一緒にならないように祈りながら毎回クジを引いているんですけど、全然ダメで
古泉君が先週提案してくれたおかげで、ようやくほっとすることができました。それにキョン君」
「なにか?」
「長門さんとどこまで進展したんですか?」
「長門とどこまでって、朝比奈さんが考えているような関係じゃないですよ?」
「ここ二週間で色々ありました。長門さんから何回も本を受け取り、二人で読書する毎日
 長門さんの表情もこの二週間で随分変わりました。そこまで条件が揃っていて
何も無いなんておかしいですよ。見てれば誰だって気づきます」
「読書については受験対策ですよ、速読、漢字の読み書き、難しい四字熟語なんかは意味調べたりとか」
「ふふ…それでも二人揃ってあんなに厚みがある本を二人で読んでるなんてびっくりです」
「朝比奈さん、それは長門が貸してくれた本がゴツイ本ってだけで、こんなデカい本読めって言うのか!
 なんて毎回考えていますけどね。お願いだから、もうちょっと優しい本貸してくれって言ってました」
「長門さんがうらやましい」
「なぜです?」
「あなたと話しているときの長門さんすごく楽しそう。
前は無表情でしたけど、私にも分かるくらい表情が豊かになっている」
「そんな風に長門のこと見ていたんですか」
「キョン君、一度だけでいいですから、みくるちゃんって言ってくれませんか?」
「それはちょっと…じゃないかなり抵抗が…」
「一度だけでいいですから」
「みくるちゃん」
「はい。やっと呼んでもらえました。今とっても嬉しいです。長門さんの気持ちが分かった気がします」
「これだけでそんなに嬉しいもんなんですか?」
「はい、とっても。あっ、そろそろ戻らないとお昼になっちゃいそうですね」
といって拠点に止めておいた自転車で戻る。昼食後、今度は有希とペアになることができた。
早速自転車を漕いで図書館を目指す。俺は早速借りていた二冊返し、三冊の本をまた借り直したあと、
途中になっていた3冊目を読み始める。有希はというと、先週借りられなかった分、
あちこち見てまわり面白そうな本があると立ち止まって読んでいた。帰る時間になり、
集合場所に戻る。当然収穫はゼロ。月曜日に反省会だそうだ。その前に有希の弁当が待っている。

金曜の夕食から月曜の弁当までの流れを数週間繰り返し、どんどん表情が豊かになっていく有希、
その変化を俺と有希を除く三人も気づいていることだろう。有希の部屋に泊まると、不思議探索ツアーの支払い
がだんだんハルヒに集中していくのが面白くてしかたない。「あんたたちちょっとは団長を立てなさいよ!!」とか
いう日もあったが、俺もかなり払わされたんだ「おまえの決めたルールだ」としぶしぶ払わされるハルヒであった。
その間の平日も読書に明け暮れ、最初に続編といっていた本もなんとか読みきることができた。
有希とペアになるたびに図書館へと向かった。有希が選んでくれた5冊も読み終わり、
最初にきたときに、有希がもってきた本の中から6位以下をチョイスしてくれた。
(当然ながら、あのとき持ってきた本全部覚えており、さすがハルヒの観測者だと思わせられる)
不思議探索ツアーが無い週は土曜日の朝食を予め作っておいて、ずっと二人で抱き合ったまま過ごしたり、
抱き合ってそのまま一線を超えた日もあった。

そんなある週の月曜日である。毎週月曜にどこかに弁当食べに行くと気づいた谷口は、
「キョン、ちゃんと愛妻弁当好き嫌いせずに食べて来いよ!」
「お幸せに」と国木田。うるさいなーもう。
いつも通り文芸部室に向かう。すでに有希はいた。待ってたとばかりに抱きついてくる有希
「あついわね、二人とも。こっちにも少し分けて欲しいな」
「朝倉、またお前か、何の用だ」といいながら有希が情報結合解除に入るための時間を稼ぐ。
「用っていうか、注意しに来たのよ。ちゃんと仕事してくれない誰かさんをね。」
「なるほど、俺とくっついているせいで、有希がハルヒを観察するのを怠ってるってことか」
「察しがいいわね、それにこうやってナイフを持ってても平静を装っているみたいだし。それに長門さんのこと
 有希って呼ぶんだ。いつからそんな関係になったのかしら?」
「そりゃナイフ突きつけられるのが三回目となれば多少はな。有希とは、そうだな…二ヶ月くらい前かな
それで?有希が仕事をしていないってのはどの程度なのか、聞かせてほしいんだが」
「あなたさっき自分で言ったじゃない」
「予想通り、俺といた時間全部ってわけか。当たってほしくない予想だったよ。ところで、用じゃなくて注意
 って言ったのに何でナイフなんか持ってるんだ?有希に対する脅しにはならなそうだが。俺を人質にして
 有希に何かするつもりか?」
「普段から持ち歩いているから、ついね。それにしても冷静な判断するわね。あなたを人質にすることなんて
 考えてもみなかったわ。さぁ、そろそろ答えて欲しいものね、長門さん」
「通常報告なら欠かさずやっている。それに、たとえ彼といるときでも何か起こればすぐにでも察知できる。
何も問題はないはず」
「問題あるわよ。あなたの仕事は観測よ?恋愛ではないわ。そう言われてあのマンションで三年間過ごして
きたんじゃないの?涼宮ハルヒが北高に入学するまでずっと。同じ姿勢で」
「入学してしばらく経つまではそうだった。でもそれからは感情が芽生えた。
彼と一緒にいるときはその感情が次第に豊かになってきた。情報統合思念体が求める自律進化のきっかけは
この感情にこそある。涼宮ハルヒは情報フレアを爆発させた、人類の中でも稀有な存在であり、
無視できない観察対象ではある。だからこそわたしたちが派遣された。涼宮ハルヒの感情の起伏によって
発生するものはどこにいても把握でき、古泉一樹が所属する機関がそれの対応にあたっている。
でも、涼宮ハルヒだけが、自律進化の可能性を秘めた存在というわけではない。
彼との時間は怠慢ではない。感情という概念を情報統合思念体が認めることができればそこから
進化のきっかけにつながっていく。」
「私にはよくわからないのよね、その感情って概念が」
「お前は急ぎすぎた。2か月もしないうちに有希に情報連結解除されたから感情というものがまだ理解できて
ない状態だったからだ。おまえの考えてること位容易に想像できる。同じクラスでもないのに、
SOS団のメンバーとして加入した有希。その有希にはアプローチするくせに、自分が話しかけても全く話そうとしないハルヒ。お前は考えたはずだ。なぜ長門有希なのか、なぜ俺なのか、なぜ自分ではだめなのか。
おまえの中で嫉妬や憂鬱、だめな自分に対する責めなどの負の感情を制御できない間におまえは強行策にでた。
おまえはもっと人類から学ぶべきだったんだ」
「うるさい!」
「そうやって受け入れずに殻にこもっていたらいつまでたっても自立進化出来ないぞ。今の気持ちを認めろよ。
 これが悔しいって気持ちなんだって。高校生ぐらいの体格で周りの人間とコミュニケーション取れるといっても、感情を表すことは出来ないんだよ。お前はまだ何も知らない赤ん坊なんだ。1年でいいから、こうして対話していれば感情が出てくる。おまえは性格や人づきあいもいいくせして、なんでそう急ぐんだよ」
「うるさい!うるさい!うるさい!」
「ただの有機生命体ごときが偉そうな口きいてくれるわね」
朝倉の視線が俺たちの弁当に行く。朝倉がもっていたナイフで弁当を狙った。俺は弁当を庇い窓側に転倒した。
「久し振りだが、相変わらず痛いな…」かばったときにナイフが俺の右腕に刺さっていた。
あたりを見回すと初めて朝倉に殺されそうになったときの異空間になっている。
教室ではなく部室なので、前回より狭い異空間になっていた。
「さてと、これでもう注意ではなくなってしまったな。今のおまえは涼宮ハルヒを観察している長門有希の邪魔をするただの復讐者だ」
俺は左腕で2つの弁当を持ち、ナイフが刺さった右手はそのまま下におろしていた。
傷口から溢れた血が指から滴る
「あんた、なんのとりえもないくせに、よくも私にあれこれ言ってくれたわね。覚悟できているのかしら?」
「マジックを知っているか?朝倉」
「ええ、でもそれがなんだっていうの?」
「マジシャンっていうのは観客の視線を別の方に誘導している隙に、裏で本当に必要なことをしている」
「それが何の関係があるかって聞いているのよ!」
「俺はその誘導役、さぁ、裏で必要なことをしている人は誰でしょうか?」
「…しまっ!」
「コードネーム朝倉涼子を敵性と判定、情報連結解除開始」
「ふふっ、一瞬焦ったけど、今からこの空間で情報連結解除始めたって遅いわよ…なにっ…これどういうことよ!?」
「防護壁のステルスモード解除、あなたの異空間は彼があなたと話している間に全て破壊した」
「またしても私の負けようね。悔しいってこういう気分をいうのかしら?」
「朝倉なら負の感情ばっかりだけじゃなくて、正の感情も理解できる日がくるさ」
「そのときを楽しみにしているわ、またね」

 気づくといつもの部室に戻っていた。
「弁当を庇うのは無茶。あれくらいまた作ればいい」
「んなこといったって、俺には宝石の入った宝箱にみえたぞ?」
「わたしの料理は宝石じゃない。でもそう思ってくれているのは嬉しい」
そう言いながら有希はナイフの情報結合を解除し、傷の手当をしてくれた。
手当といっても、元通りにしてくれただけなのだが。当然ブレザーもシャツも斬られてはいない。
「さて、弁当食べようぜ。ちょっと無茶な庇い方したから、中身ずれているかも」
「あなたが守ってくれた弁当だから多分大丈夫」
「そういや谷口たちが言っていたな、『好き嫌いするなよ。お幸せに〜』ってさ」
「毎週全部食べてくれるあなたに好き嫌いあるの?」
「ははっ、特にないと思う。さてと、いただきます」
朝倉のナイフから守った甲斐があったというものだ。俺と有希のコンビネーションで朝倉を撃退し平和が戻った。
「そういや、この前の映画の原作本ようやく読み終わったんだけど、原作本全部読み終えたら、また映画みたくなっちゃってさ、あれもう上映してないよな?」
「DVD化されているから、レンタルしてきて一緒に見ればいい」
「あれ、有希の部屋にテレビあったっけ?それにあの映画みたあと結構辛口なコメントしていたけど大丈夫か?」
「コンパクトサイズのDVDプレイヤーがあるからそれで見る。
わたしはあなたとくっついていることがうれしい。だから大丈夫」
「じゃあまた今度の金曜日に、だな」
「わかった。DVDはレンタルしておく」
「面倒事ばっかりおしつけちゃってごめんな」
「別にいい。気にしないで」

「遅いじゃない。5時間目サボるなんて、有希と一体何してたの?」
「食べる前に色々話してたら昼休み終わりのチャイムがなっちまってな、折角有希が作ってくれた弁当を
かきこんで食べるなんて有希に悪いからな。サボりでもいいやと思ってゆっくり食べてたよ」
「キョンにしては思いやりがあるのね。有希が羨ましいな…」
「そうか?」
「あんたがあたしのこと大切に思ってくれたことあるかしら?」
「そういわれても……何かあったっけ?」
その時、俺の携帯がメールが来たと知らせる。
 『明日の昼休み、部室に集まってください。お話したいことがあります。
昼食を食べながらでもかまいません。よろしくお願いします。』
古泉からだ。また閉鎖空間関連かぁ?面倒なことになりそうだ。

火曜日
 昨日指示された通り、昼食をもって部室に行く。すでに三人とも来ており、俺が座ってから古泉が話し始めた。
「ここ2,3カ月で閉鎖空間が多発しているんです」
「やっぱりその話か。原因は…何も見つからないツアー、部室で読書にいそしむ俺と有希と古泉。
最後に俺と有希の今の関係ってところかな」
「御名答、まさにその通りです」
「で、古泉は俺たちに何をさせるつもりだ?」
「不思議を作りだしてほしいんです。」
「作り出すってどうしたらいいんでしょう?」
「僕も具体的な案がでなくて困っているところなんですが…」
「有希、何もない異空間を作ることってできる?フットボールをたてにしたような亀裂を作って、侵入したハルヒを閉じ込めてみるってのはどうかな?」
「できないことはない。でも他の一般人に気付かれる可能性が高い」
「涼宮さんが来る直前にその異空間を発生すれば…なんとかなりませんか?」
「わかった」
「しかし古泉、こんな案でいいのか…?」
「いやぁ名案だと思いますよ。長門さんの能力を熟知してないと出てこない案ですからね」
「んじゃ、クジもいじってもらって、俺と朝比奈さんペア、古泉と有希のペアにして、
俺たちがハルヒの後ろからついて行く、有希と古泉で異空間を発生させるのと機関からのサポートってところか。
 ハルヒを閉じ込めたら古泉と朝比奈さんと連絡をとって亀裂を再度入れる時間を決定。
朝比奈さんならポイントにつくまで秒単位で計算できるだろ。異空間で小一時間ハルヒをほっといて、
時間になったら異空間に小さな亀裂を再発生させて、そのあとハルヒの力でこじ開けて、
出たらちょうど俺と朝比奈さんがばったり出会う感じでいいか?」
「いやぁ、常套句しか思いつきませんが、さすがとしか言いようがありません。機関でどう対処するかずっと悩んでいたのに、こんなに簡単に解決策がでてくるとは思いませんでした。ありがとうございます。」
「それと…俺も前に有希と見に行った映画の原作本読み終わったし、俺と古泉はしばらくは部室でまたボードゲームかな?」
「そうしていただけると助かりますし、僕も楽しめます。ありがとうございます」
こうして、ハルヒの不思議発見ヤラセツアーの計画ができた。有希は少し喜んでいるようだ。
俺の意図に気付いたのかもしれん。

金曜日
「あれ?何か家具が増えてる。テレビまで…有希、これどうしたの?」
「お風呂入っている間読書だけじゃつまらないと思った。あなたの本を入れておく棚と、あなたの服を入れておく洋服タンス、映画は大画面でみたい。二人用のソファー、色々買ってみた」
「なんかもう、同棲生活してるみたいになってきたな」
「あなたが良ければ毎日でも…」
「毎日はさすがに親が怒るだろうな。3泊4日くらいなら大丈夫そうだ」
「そう、できるだけ一緒にいたい」
そうして、いつものようにふたりで夕食を食べ、一人ずつ風呂に入り、ベッドで横になる。
「火曜日の昼にあなたが出した案のこと…」
「ああ、多分有希は気づいたと思ってた。俺たちの今の関係壊したくないからな。有希との関係に嫉妬して、
ハルヒの強制閉鎖空間に巻き込まれたくないし、有希を巻き込みたくない。最悪の場合、縁切れなんて言われたくないし。他の事でそれが回避できるならそれにこしたことはない。もう俺も有希との関係を壊したくないんだ」
「ありがとう」と言って両手を背中にまわし、抱きついてきた。俺も抱きつき返す。そのまま何も話さなかったが、俺も有希も幸福感につつまれていた。

土曜日
俺たち四人は地図を確認し合い、異空間ポイントをきめた。
それからハルヒの奢りの喫茶店でくじを引き、ハルヒ&俺&朝比奈さんチーム、古泉&有希チーム、これも事前打ち合わせ済み。地図は一応俺が持った。朝比奈さんがいるから今どこのポイントにいるのかすぐ分かるのだが、念のためだ。
「今日こそ不思議見つけるわよ!出発!!」といって先にずんずんいくハルヒ。
俺と古泉はアイコンタクトで確認し合いそれぞれの場所へとスタートした。
早くも異空間ポイントへ到着しようとしていた。
「さすが涼宮さんですね、普通ならあのルートでここまで来るにはあと20分くらいかかりそうなものですが」
「来た。異空間展開、異空間の一部に亀裂をつけた」
「あれ?これなにかしら…」ハルヒの動向を見守る古泉たち
「なにこれ!中の景色が全然違う!砂漠になってる!入ってみる価値あるわね!」
「涼宮さんの侵入を確認しました。長門さんお願いします」
「わかった」
ハルヒが異空間へと入っていくと、亀裂が消え。古泉が朝比奈さんに連絡をとる。
「朝比奈さん、あとどれくらいでつきますか?」
「このままいくとあと25分位になると思います」
「わかりました」
「なんかすごいところに来ちゃったわね。探検し甲斐がありそうだわ!」
しばらくして…
「むーおかしいわね。ずっと同じ方向に歩いているの何も見えてこないし。方向間違えたかしら?
それに、あたしの動きに合わせてこの空間がついて来ているような…もう!ここは一体どこなのよ!
携帯圏外になっちゃって誰とも連絡とれないし」
「そろそろ彼らが来る時間帯です。長門さん、お願いします」
「わかった」
異空間に再び亀裂が入り、その亀裂が光っていた
「これ…さっき私がこの空間に入った場所?出られるかも!?
んしょ…ちょっときついわね…もっと開きなさいよ!!」本当に力でこじ開けた。
「ハルヒ?こんなところで何してんだ、お前」
「え?キョンなんでここに?」
「おいおいそれはこっちのセリフだぜ。先にどんどん進んでるはずじゃないのか?」
「んと…なんかよくわかんないんだけど…なんて言ったらいいのか…
とにかく、不思議っぽいもの見つけてのぞいてたら時間が過ぎてちょうどあんた達が歩いてきたのよ。」
「どんな不思議を見つけたのか聞いてみたいが、ハルヒも説明しにくいみたいだし、合流して皆がいる前で、
 話したらどうだ?それまでにハルヒも考えをまとめておくといい」
「それもそうね。そうしましょう(…なんて説明していいかわかんないわよあんなの)」

そして昼食時
「涼宮さん大手柄じゃないですか。地道に続けていた甲斐がありましたね」
「ふふん、この団長様にかかればこんなのちょろいもんよ」
「それで、全員揃ったんだから、聞かせてくれよ。どんな不思議だったのか。今後の参考にもなる」
「あたしが見つけたのは縦に裂けた亀裂。まわりの町並みとは全然違ってたからすぐ気付いた。手を伸ばしたら
 入れそうだったから、亀裂から入ってみたの。そしたら砂漠と雲ひとつない快晴が広がってて、入ってきた亀裂
 もしばらくしたら消えていた。携帯みても圏外で、とりあえず一方向に進んだんだけど全然なにも見えてこないしなんだか空間に追いかけられて、ずっと自分のところで足踏みしてるような気分だったわよ。何も変化しないところにいても仕方がないと思ってたら、また亀裂ができているのを発見して、無理やりこじ開けて戻ってきた
ら、あとから追ってきた、キョンとみくるちゃんにあったわけ。とにかくわけわからない世界だったわ」
「わけがわからないなら不思議なんじゃないのか?」
「違う空間に足を踏み入れたっていうのは確か。でも、それ以上はあたしも掴めなかった。
あたしも文句ばっかり言ってないで異次元とかワープがどうとか、物理法則がどうとか調べなきゃ」
「あのぅ、不思議を発見したのはわかりましたけど、この後はどうするんですか?」
「今日はあの異次元空間のことでいっぱいだわ。みんなさえよければ解散しましょ」
と言ってハルヒは去っていった今頃本屋に立ち寄って異空間や異次元に関連した書籍をあさっているんだろう。
「みなさん御協力感謝します。お時間が少しあるようでしたら、いつもの喫茶店でブレイクタイムにしませんか?
 今日は僕の支払いでかまいませんので」
「じゃあ、少しだけ」
「俺たちの反省会だな」
「いい」

「改めて、皆さんありがとうございました。閉鎖空間も小規模になり、そのまま消えていったものもあるようです。」
「そんなにかしこまらなくても」
「私はただ歩いてきただけですし」
「問題ない」
「このプランを立てた俺が言うのもなんだが、このあとハルヒはどういう行動をとるんだ?
火曜日に話したボードゲームじゃないが、今度はハルヒから本を読め!っていわれそうな気がするんだが…
それに不思議探検ツアーはどうなる?しばらく謎が解けるまでやめる?
今まで通り行う?まさか倍に増えるなんてないよな?」
「とりあえずしばらくは不思議を発見できたことで満足してくれるでしょう。
それ以降は彼女の行動の様子見ですね」
「問題ない」それから暫く雑談をして、帰路につくことになった。
「今日も来て」
「一旦家に帰って必要な物持っていくよ。映画も見ないとな。延滞料かかっちゃいそうだし」
「わかった」

有希にそう告げて、一度家に戻った。平日に泊まることも考慮して、教科書、制服一式、下着、洋服数点、
ゲームもついでにもっていった。一緒にやっているうちに有希が新境地へとベクトルを
変えるかもしれないし。対戦なれば、それはそれで俺も楽しいし。
母親にこれから、泊まりが多くなると思うと伝えた。意外にも快諾を受けて俺の方が吃驚したくらいだ。
持ち物を全てカゴに詰めて、自転車を走らせた。
有希の部屋に入ると、料理しているにおいが漂ってきた。
「有希、晩御飯の準備にしては早くないか?」
「映画が終わると大体その時間」
「なるほど、すぐ食べられるようにってことだな。俺のお姫様は隅々まで配慮がきいていてすごく嬉しいよ」
「お姫様はいいすぎ。でもちょっと嬉しい」
俺は自宅から持ってきたものを有希が用意してくれていたタンスや本棚に収納し始めた。
収納が終わると同時に料理も作り終えたようで、さっそくDVD鑑賞を始めた。
二人掛けのソファーにくっついて座り、手をつないだ。恋人つなぎというやつだ。
有希は頭を俺の右肩にのせる。原作を読んでから映画を見ている有希はさすがに飽きているようで、
途中から寝息が聞こえてきた。俺は一人で映画鑑賞し続け、見終わったあとも有希が寝ていたので、
感想を話すのはまた今度にしよう。一旦繋いでいた手を放し、有希をお姫様抱っこでベットに運ぶ。
運んでいる途中で有希が起き、両手を俺の首の後ろまで持っていき組む。
「起こしちゃったか?ご飯どうする?」
「このままベッドで抱かれていたい」
「んじゃ寝室に行きますか」
「……」コクリ
その日は午前中の緊張感もあってか、晩御飯も食べないまま俺もすぐ寝てしまっていた。

翌週月曜日
 教室に入ると目の下がクマだらけのハルヒがいた。
「お前、何をしたらそんなになるんだよ」
「あの異空間見つけてから今まで寝ずに専門書読んでた」
どうやら、あれを解明しなければ気が収まらないらしい。
2日間寝てなかった分、全ての授業、休み時間、昼休みを寝て過ごし、俺が部活いくぞといって起こすまで
ずっと眠ったままであった。…Sleeping Beautyなんて言葉が思い浮かんだが、
コイツの場合、眠り姫じゃなく、熊が眠っているほら穴って感じだからな。いつ襲われるかわからん。
部室までのハルヒの足取りは重かったが、すでにきていた有希を見ると目を輝かせて、二人で電波話を始めた。
異空間が発生する頻度がどのくらいの確率なのかとか、どうやったら異空間に入ることができるのかとか、ハルヒが論文を書いて、それを少年に渡していたときのことを思い出す。
 古泉とアイコンタクトして部室の外に出る。
「どうだ?状況は?」
「いたって平静というべきでしょう。あなたの策が見事目的を達成したわけです。
機関を代表してお礼申し上げます」
「それはいいんだが、ハルヒは異空間発生の解明で頭がいっぱいのようだし数日はもつだろうが、
そのあとがこわそうでな。そのときに今回のような対応策が浮かべばいいんだが…古泉はどう思っているんだ?」
「そうですね、今あなたが懸念している長門さんとの関係については、涼宮さんは二人を応援する方向に
向かいつつあると踏んでいます。あなた一人が長門さんを連れまわしているのではなく、
あなたが困ったときにすぐ彼女がフォローに入ってくれる現状を考えれば、自ずと答えは見えてくるでしょう」
「だといいんだがな…」
部室に戻ると、ハルヒと有希の会話がまだ続いていた。というか終わりそうにない。有希は今日はハルヒにつきっきりで会話をしていた。しばらくして有希が本を閉じた。
「あーもう、有希とまだ話したかったのに!有希、今晩有希の家に泊めて!」
そこまでするか?ヤラセ空間に…。気がつくと有希が俺の方をみていた。
今日は俺はいいからハルヒを泊めてやればいい。ハルヒも有希の視線に気づいたらしく、
「キョンがいてもいいから!お願い!」
「これはこれは、大胆な発言ですね。そこまでしてあの謎を解明したいなんて、解くまで長門さんを放してくれそうにありませんね」
有希の視線がまた俺に向く。
「有希のしたいようにすればいい。俺はどっちでもかまわない」
「わたしは、あなたにも来てほしい」
「わかった。二人の邪魔をしないように読書でもしてるよ。有希、徹夜になりそうなのに、いいのか?」
「問題ない」

といって、ハルヒが加わり、3人で食事することになった。今日は久々のカレーである。有希の断崖絶壁は分かる
が…なんでハルヒのまで断崖絶壁になっているんだ??それを気にすることもなく崖を少しずつ崩している
ハルヒ。有希の寝室にあった専門書を借りてカレーを食べながらどんどんページをめくっていくハルヒ。
これは有希よか読むペース速くないか?そのうち二人とも食べ終わる。
二升炊いたご飯がたったの三合になっていた。

「皿洗いは俺がやっておくから、有希はハルヒの面倒みてやってくれ。」
「わかった」
皿洗いを終えると少しでも眠くならないように、三人分のコーヒーを煎れた。
「ほれ、食後のコーヒー。少しでも眠くならないようにな」
「キョンにしては気がきくわね。どういう風の吹きまわし?」
「別に。いつも有希にしてることの一つみたいなもんさ」
「有希、キョンなんてボロ雑巾みたいに扱っていいんだからね!もっと積極的にアプローチしなくちゃだめよ!」
「わかった」
これまでも十分積極的なアプローチだった気がするが…などと考えながら風呂からあがったあと、寝室で図書館から借りた本を読んでいた。二人の声が隣からずっと聞こえて寝るには少しうるさかったが、さすがに眠くなりそのまま寝てしまった。

翌朝
 俺が目を覚ますと、リビングの机の上に頭が二つ乗っていた。お姫様抱っこで一人ずつ寝室のベッドに寝かせ
俺は制服に着替えて学校へ向かった。『起きたら連絡してくれ』とメッセージを残して。
 結局メールは来ないまま授業が終わってしまった。古泉と朝比奈さんに事情を説明して有希の家へと向かった。
部屋に入ると二人はすでに起きており、また話し合いをしていた。
「学校行ってもただ寝るだけだし、登下校の時間がもったいないからこのまま昨日の続きよ」
「それはいいけど、あんまり有希を疲れさせるなよ?」
「分かっているわよ」
「それで、二人とも食事は?」
「起きてから何も」
「それじゃ、コンビニで何か買ってこよう。欲しいものあるか?」
「なんでもいいから、大量に食べたいわ」
「わたしも」
昨日あれだけの量食ってるからな…俺の小遣いで足りるか不安だ。とりあえず片っ端から弁当をつめこんで戻る。
適当な弁当を1つずつ置いた。昨日と同様食後のコーヒーを煎れ二人に振る舞った。
「昨日といい今日といい、気がききすぎじゃないの?キョン。どうしちゃったわけ?」
「有希に煎れるついでだ。大事な人を大切にするのは当たり前だろ」
「そりゃまぁそうね。有希が羨ましい」
「……ジー」
「その視線は…この間と一緒?」
「彼と二人きりの時間が欲しい」
「有希、また大胆な発言するわね」
「昨日積極的なアプローチをしたほうがいいと言ったのはあなた」
「そ、そうね。さすがに二連泊はまずいしね。今日は帰るわ。有希ありがとう」俺にはなんもねえのかよ!
「とりあえず有希、お疲れ様、疲れたろ、風呂入ってきな。その間に片付けやっておくから」
そういうと、有希が抱きついてきた。
「お楽しみはあとにとっておこうぜ。俺だって話したいことたくさんあるのにハルヒがいて話せなかったからな」
「……」コクリと頷く。
その後片付けを済ませた俺は、ちょうどいいタイミングで風呂からでてきた有希と交代で風呂に入る。
俺が上がってくるとリビングの明かりが消えて寝室の明かりだけが灯っていた。すでに横になっている有希を
確認して、電気を消し、反対側からもぐりこんだ。入ってすぐ有希の方から抱きついて来た。
「抱きついてきてくれるのは嬉しいけど、さすがにちょっと苦しいよ」
「ずっとこうしたかった」
「たかが2,3日空いただけだろ」
「もう、毎日こうしてなきゃ嫌」
「大袈裟だな」
「でも、そのくらいあなたが愛しい」
「そういってもらえるとうれしいよ」
「わたしは、高校を卒業したら、あなたと二人で暮らしたい」
「それは、結婚ってこと?」
「そう」
「有希のほうからプロポーズされるとは思わなかったよ」
「私は高校卒業後、涼宮ハルヒの観察の命を解いてもらい、あなたのような普通の一般人になりたい」
「有希が人間になることができるってことか?」
「そう、申請すればすぐにでもできる、でも、今それをやってしまうと、代わりの観察者が朝倉涼子になる」
「それはちょっと…じゃなくてかなり厳しいな」
「あなたの安全のためにも、卒業後、涼宮ハルヒと別れてから、人間になるように申請する」
「じゃ、婚約指輪でも今度見に行ってみようか。」
「そう。……映画どうだった?」
「有希が途中で寝ちゃったやつか?その感想としては、有希の言う通り肝心な部分が抜け落ちているけど、
それ以外は原作に忠実につくられていて、そのシーンのイメージがわいた気がするよ」
「そう。あなたに読んでもらえてよかった」
「紹介してくれてありがとな」

翌日放課後
「「「婚約発表!!!???」」」
「卒業してから二人で暮らすことになった。まぁ、今でもほぼ毎日一緒にいるんだけどな」
「おめでとうございますぅ」といって拍手する朝比奈さん
「結婚式には是非呼んでくださいね」荒川さんみたいに改まって礼をした古泉
「キョン、有希のこと泣かせたらあたしが許さないからね。死刑台に叩き込んであげるから!
 とりあえず今日はみんなでお祝いパーティやるわよ!!」
「いいですね、やりましょう」 
「どこでやるんですかぁ?」
「あたしの家。あたしの料理の数々を皆にふるまってあげるわ!」
「じゃ、御呼ばれされますか、主役でも荷物持ちとかさせられそうだな」
「あったりまえよ、あんたは有希の夫のまえに、SOS団の雑用係なんだから!」
「やれやれ」

後日談
ハルヒはその後も有希の部屋に度々泊まりにきて、異空間の解明を進めた。
その後「異空間の歪みと発生について」の論文が学会から認められ、高校生にして大学教授になってしまった。
有希はというと、気まぐれで応募した大食い選手権でダントツトップで優勝を飾り、優勝賞金一千万円を手にしたのである。「腹八分目で丁度いい」と余裕の表情で帰ってきた。

おしまい

 


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Last-modified: 2014-04-21 (月) 12:58:20 (1160d)