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作者 | キョン長 |
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作品名 | SOS団大学進出! 〜1〜 |
カテゴリー | 長門SS(一般) |
保管日 | 2013-10-03 (木) 03:18:50 |
キョン | 登場 |
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キョンの妹 | 不登場 |
ハルヒ | 登場 |
みくる | 不登場 |
古泉一樹 | 登場 |
鶴屋さん | 不登場 |
朝倉涼子 | 不登場 |
喜緑江美里 | 不登場 |
周防九曜 | 不登場 |
思念体 | 不登場 |
天蓋領域 | 不登場 |
阪中 | 不登場 |
谷口 | 不登場 |
ミヨキチ | 不登場 |
佐々木 | 不登場 |
橘京子 | 不登場 |
時間の流れというものは、誰にでも平等におとずれるもんだ
それがたとえ宇宙人、未来人、超能力者、挙句の果てには神とも呼ばれている存在でも関係ないのである。
もちろんいたって普通の一般人であるオレにも時間の流れとういうものは当然やってくる
…つまりだ、なにが言いたいのかというと
「みんなー!明日は卒業式よ!」
というわけである
ちなみに今のセリフは部室のドアをこれでもかと言わんばかりに弾き飛ばすようにあけたハルヒが
満面の笑みで言ったものだということは説明するまでもない
あれからもう3年もの月日が流れたというのか…
いろいろあった…というかありすぎたが、あっという間だったような気もする
まぁ、世界の存続やらを握ってる我らが団長様のトンデモパワーはいまだ健在であるらしく(古泉談)
油断はこれぽっちもできないわけだが
「キョン!卒業式といえばなに!?」
団長指定席にどっかりと腰を下ろしたハルヒが、にたりと悪徳業者が浮かべるような笑みを見せてオレに質問した
「高校という名の牢獄から解き放たれるための非常にありがたくてめんどくさいイベントだ。」
いつものようにため息まじりでハルヒに返答する
だが、実際高校を卒業してしまったらオレはすごく寂しい
小学校、中学校の卒業式ではなんとか理性をフル稼働して涙腺の防衛ラインを死守することができたが、今回ばかりは自身がない
とゆうか確実に泣いてしまうだろう
実際去年朝比奈さんが卒業してしまったときは涙がとまらんかったしな
ただ、あのお方もハルヒの力が失われないかぎり現代にとどまっていらっしゃるようで、今はごく普通の大学に通っているのだそうだ(古泉談)
とどのつまり、オレがこのような発言をしたのは自身の寂しさを紛らわせるためでもある
「あんたあたしの質問ちゃんと聞いてた!?あたしが聞いてるのは卒業式の概要じゃなくて、卒業式といえばなに?って質問よ!?」
そうかい
さっぱりわからんね
いつもの応対がはじまると、これまたいつものように古泉が口を挟む
「思い出…卒業アルバムでしょうか?」
「流石古泉くん!どっかの万年ヒラ団員とは訳も格もちがうわねっ!」
そういいながらハルヒは古泉に駆け寄りその肩をバシバシとたたく
なにが流石なのか全く持って理解できん
当の古泉本人はいつものにやけスマイルにマジスマイルを三割増しにしたような表情でこちらを見てきた
ええい!ウインクするな!
「有希は?卒業式っていえばなんだと思う?」
「………」
有希という名を聞いて、ひそかに長門に対して恋心を抱くオレの心臓がトクンと脈打った
…ぬ?お前はいつ長門に惚れてたんだって?そんなもの決まってる
一年生の時起こったハルヒ消失事件後から、オレは長門にぞっこんだった
いや、もしかしたら朝倉の襲撃から守ってくれたときからかもしれない
だが、自分の感情に気づいたころにはすでに彼女は回復できないほどのエラーを蓄積させちまってたんだ
だから…オレはあれから長門を何があっても絶対に守ると誓った
所詮一般人のオレにはできることが限られているかもしれない
けど、長門が一人で苦しんでるところなんてオレはもう金輪際見たくないんだ
だから、せめて何かあったら一人で溜め込まずオレに相談してくれと長門には言ってある
実際、私用で呼ばれるほどにオレ達の仲は着々と進行していた(はずだ)
だが…高校を卒業してしまったら出会う機会もへってしまうだろうな…
古泉にじゃれつきながら、ハルヒはまたまたいつものように窓際の指定席に座る寡黙な美少女宇宙人へと視線を向ける
それにつられてオレも視線を移動させる
長門は一瞬こちらに視線を合わせたあと、最初のころに比べたらずいぶんと感情がこもった声でこう言った
「…涙…」
その一言に、部室の中がシンとしずまりかえる
…長門よ、確かにお前の今の一言は的を射てるかもしれん。いや、むしろ直球すぎだ。
ほら、ハルヒなんてきっと今まで我慢してたであろう涙を隠そうともせずに鼻を鳴らしはじめたし、古泉も普段からは想像もつかん嗚咽をもらしてやがる
「…私は皆と離れたくない」
あぁ、だめだ。オレもほんとにだめだこりゃ。
ぶわっと一気に視界が滲む
今までSOS団として活動してきた記憶映像音声がまるで映画のフィルムを高速再生したかのようにオレの脳内をめぐった
つらいこともたくさんあったがその分楽しいこともたくさんあった
ハルヒ、朝比奈さん、古泉、そして長門…
それだけじゃーない
谷口や国木田だってともに活動してきた準部員だし、鶴屋さんにいたってはほんとに感謝の言葉をいくら送ってもたりんくらいすばらしい名誉顧問だった。
「………」
しまいには言いだしっぺの長門でさえもうつむいてしまった。
その姿を滲む視界に納めながら、オレは自身が鼻声になってるとも気づかず長門に話しかける
「オレ達はずっとSOS団の仲間だ」
あとで回想してもくさいと思わずにはいられないセリフに全員がこちらへと視線を向けた
「たとえ高校を卒業したって、いつでも皆で集まればいいじゃないか」
もちろん朝比奈さんも誘ってと続けたオレの言葉に、まるで泣いていたのが嘘のような笑顔でハルヒが賛同した
「そうね。キョンにしてはいいこと言うじゃない!全員休日祝日はなるべく予定を空けておきなさいよ!」
ここで『なるべく』という辺り、ハルヒも成長したのだなとかんじる
「もちろんです」
そしてハルヒの案に真っ先に賛成の意を示したのはSOS団きってのYESマン副団長の古泉である
ただ、今回ばかりは心の底から賛同しているであろうことは容易に分かった。
「…必ず」
誰にでも判断できるくらいに口元を緩め強くうなずく長門
これほどまでに感情を表に出してくれるようになってくれてオレも嬉しい限りだ
「当然だろ」
長門の表情を確認したのち、俺もハルヒの言葉に同意する
その日その後はあきれるくらいいつもどおりの団活だった
朝比奈さんに代わりお茶を入れるようになった長門は、いつものようにオレのもとへ真っ先にお茶を届けてきてくれたし、
そんな些細なことで顔をにやけさせるほど喜ぶオレをハルヒが問い詰めそれを古泉がなだめて長門はオレ達の行動をじっと観察するという光景なんて、もはや日常茶飯事である
「それじゃー、【今日は】もう解散しましょ。みんな明日欠席するなんてバカなまねはしないようにねっ!」
いつもよりすこし早いんじゃないかなというぐらいの時間で、ハルヒがカバンを引っつかみ振り返ることもしないで団室を出て行った
あいつも流石に今晩は枕を涙でぬらすだろうな
「実際僕もとても悲しいですよ」
ハルヒが完全に退室したのを確認して、言葉とは裏腹な満面のスマイルを浮かべる古泉
「そりゃそうだ。悲しくない奴なんていない」
だが、できればもうちょい顔を遠ざけてほしんもんだ
長門ならいくら近づいてきても大歓迎だが
「んっふ。これは失礼」
最後に気持ちの悪い笑い声を発すると古泉も、空気を読んで一足先に帰宅するとします。というセリフを残してハルヒのあとを追っていった
「………」
確かめるまでもなく今オレと長門は二人っきりである。
古泉の足音が聞こえなくなると、長門はとてとてとオレの席の隣まできた
「どうした?」
「………」
オレの問いに長門は眉を潜め返事を模索しているようだった
この空気で全く緊張してないといえばうそになる。
まぁ、この場合は恋愛感情からくる心地いい緊張感だが
「…今はあなたの隣にいたい…だめ?」
もちろんダメな理由など宇宙の重力並みにまっさらない
「そうか。なら、好きなだけ隣にいていいぞ」
「そう」
オレの返事にかすかな微笑を浮かべ、長門は自分のパイプ椅子をオレの隣に設置し腰を落ち着けると、頭をオレの肩に預けて本を読み始めた
…長門からオレに対する気持ちを実際に聞いたことはないが、こんな行動をとられると期待するなという方が無理である
「なぁ、長門」
「なに?」
「オレ、明日お前に言いたいことがあるんだ」
「…そう」
その時ハルヒが隣にいようが両親が隣にいようがオレは自分の気持ちを伝えることにした
卒業式に告白なんてありきたりすぎるかもしれんがな
「私も…明日あなたに伝えたいことがある」
本から目線をはずし、こちらをじっと見つめる長門
くもりひとつない透き通るような瞳に、嬉しそうに微笑むオレの姿が映し出されていた
「おう。分かった」