作品

概要

作者ながといっく
作品名Dear wonderful world
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2011-03-31 (木) 15:16:39

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 十二月二十一日。
 夕暮れが夜闇へと変わり、街を歩く人影はまばら。住宅地の一角に立つこの病院も、面会時刻を過ぎた今は閑散としていて、時折廊下を巡回する看護士の姿を見かけるくらいである。
 そんな、静かな夜だった。

 

 屋上へと続く扉の前に佇む少女の名は、長門有希。
 ある一人の地球人の少年に会うために、少女は此処にいた。
 少年が屋上にいることを感知することは、ヒューマノイド・インターフェースである彼女の能力を持ってすれば容易いことだった。そして、彼が自分を待っているであろうこともわかっていた。けれども、少女はその一歩を踏み出せずにいた。
 ――臆病者。
 有希は思う。
 彼がわざわざこのような人気のない場所に来た理由は明白だった。この場所ならば、人目を憚ることなく有希と話すことができるからだ。だからこそ、有希もまた、彼が屋上に出てすぐにここまできた。しかし、いざ屋上への扉を前にしたとき、まるで呪いでもかけられたかのように、彼女の足はピタリと止まってしまった。
(どのくらい、経っただろう)
 いつまでこうして固まっているつもりなのだろうか。彼が屋上に出た頃は、まだ陽が出ていたというのに。
 まるで、金縛りにでも遭ったかのように動かない両足を少し忌々しく思いながら、少女はゆっくりと瞼を閉じた。

 

 

 あの日、"目覚めた"少女の目に写った光景は、決して穏やかなものではなかった。
 血まみれになって地に伏す彼。その脇に佇むもう一人の彼と、二人の朝比奈みくる。そして、もう一人の"長門有希"。
 少女はすぐに悟った。
 世界改変が失敗に終わったこと。自らが再改変されたこと。彼を傷つけてしまったこと。
 そして、彼があの世界を否定したこと。

 

 しかし、すんなりと理解できたのはそこまでで、
『同期を求める』
『断る』
 もう一人の"長門有希"による同期拒否は、まったくの想定外であった。
 彼女が有希の異時間同位体だとすれば、同期を拒否する理由など無いのだ。
 もっとも、あの"有希"が今の有希の未来の姿である保証はどこにもない。情報統合思念体にとって、有希と全く同じ形をした別個体のインターフェースを作ることなど容易いし、周囲の人間の記憶操作にしても同様だ。もう一人の"有希"が同期を拒否した理由も、二人が別個体なのだとすれば辻褄が合う。
 だが、仮にそうだとしても、彼女が同期を拒否する理由として述べた言葉は不可解なものだった。
『なぜ』
『したくないから』
 同期する必要がない。同期できない。同期するなと命じられている。あるいは無視。返答はそのいずれでも良かったはずだった。しかし、彼女は「したくない」と自己意思を示した。
 同期をしたくない、情報を得たくない。
 そう思う理由は、思うことのできる理由は、有希には考えもつかないことだった。
 もちろん彼女の言葉が本心とは限らない。
 しかし、有希にその可能性を捨てさせるだけの力強さが、彼女の言葉にはあった。

 

 まもなくして、もう一人の"有希"の手によって世界は再改変され、情報統合思念体もその存在を取り戻した。
 その後、彼らが有希に下した命令は「処分は現在検討中。当面は当該事象の事後処理を命ずる」というものだった。
 手ぬるい、と当事者である有希ですら思った。
 観測任務を放棄したどころか、情報統合思念体そのものを消滅せしめてしまった自分は紛れもない反逆者だ。即刻"処分"されても不思議ではない。かつて、自らが朝倉涼子をその手で"処分"したように。
 もっとも、いずれそうなることは間違いないだろう。
 あるいは、せめてもの情けにと、少年に一目会う契機を与えてくれたのかもしれない、と少女は思った。

 

 情報統合思念体の命令に従い、「少年が階段から落ちて三日間昏睡する」という歴史を"造った"有希は、少年が目覚めるまで三日間、様々なことを考えた。自宅にいる間も、買出しに出ている間も、涼宮ハルヒらとともに決して目覚めることのない彼を見守っている間も、ずっと。
 自らが引き起こした事件。先の見えない未来。もう一人の自分の言葉。
 けれど、何を考えても最後に行き着くのは、少年のことだった。
 過去も現在も、少女の世界の中心には少年がいた。もしも未来があるのならば、きっと未来もそうだろうと思う。それなのに、少年が自分にとってどんな存在なのか、自分が少年をどう思っているのか、少女にはわからないでいた。
 それでもただ一つだけ、確かな望みとして少女の胸に秘められていたものが、今もまだ燻り続けている想いがあった。
(彼の日常になりたかった)
 長門有希は、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースとして、この世界に産み落とされた。
 生まれると同時に、この惑星の人間が未来永劫持つことはないであろう超越的な力や知識を、涼宮ハルヒの観測という任務と共に与えられた。もちろん、少女はそのことを嫌だと思ったことも、不幸だと思ったこともなかった。なぜなら、それは当たり前のことだったから。それが少女の世界であり、少女の日常だったから。
(でも、彼はそうじゃない)
 少年は日頃から「平凡な日常」を求めていた。その原因が涼宮ハルヒであれ他の誰かであれ、彼は自らの日常を脅かす「非日常」を疎んでいた。
 当然のことだ、と有希は思う。
 その「日常」こそが彼の世界であり、彼の守るべきものなのだから。
 そこに、少女が抱えるジレンマがあった。
(彼は、わたしのことも嫌っているのだろうか)
 思えば、有希は少年の嫌う「非日常」そのものだった。
 涼宮ハルヒ、朝比奈みくるや古泉一樹と比べても、その非日常性は際立っている。彼らは特殊な属性を持ってはいても、元は少年と同じ人間だ。でも、少女は違う。自分が彼らとは異質の生き物であることを、何よりも少女自身が理解していた。
 ある時、有希は思った。
 もしも、彼が非日常を嫌っているのならば。
 人間ではない長門有希を好ましく思っていないのならば。
(彼は、わたしが普通の人間になる世界を望むのではないだろうか)

 

 たとえ、"それ"がわたしでなくても。

 

 こうして、少女は世界を造り変えた。
 涼宮ハルヒの力を奪い、情報統合思念体を含めたあらゆる非日常性を消し去り、人々の記憶を改竄し、自らに至っては、その人格さえも消失せしめた。
 少女の願いは確かで、強固だった。
 だからこそ、有希は朝倉涼子にあの世界を守る役目を与えた。
 けれど、その一方で、有希は少年の記憶は改竄しなかったし、世界を再改変するヒントも残していた。
 相反する二つの行動。
 その理由を、少女は自ら説明できなかった。
 だが、それも今になってはどうでもいいことだった。
(彼の日常にはなれなかった)
 結局、少年は有希の世界を否定したのだ。
 人間でない有希はおろか、普通の人間となった有希ですら、少年の日常にはなれなかったのだから。

 

 結局、考えても考えても何もわからなかった。
 だけど、自らがすべきこと、したいことだけは、はっきりとしていた。
(謝りたい)
 全てが水泡に帰した今、少女の望みはそれだけだった。
 失望などしていないし、する資格もないと思った。
『大丈夫、あたしがさせない』
 守ると誓ったはずだった。彼も信頼してくれていた。
 だからこそ、少年を自らの身勝手な世界改変に巻き込んでしまったことは、悔やんでも悔やみきれないことだった。守りたいと思っていた人を裏切り、傷つけ、死の淵に追い込み。何も得るものはなく、後悔だけが残った。
(彼に会う資格もない)
 それでも、謝りたいと思った。最後に一目会いたいと思った。
 勝手だと思う。
 あるいは、謝ることも許されないかもしれない。疎まれ、罵倒され、拒絶されるかもしれない。それも覚悟の上だった。
 それが、少女の最後の願いだった。

 

 

 何も語らない古びた扉を前に、少女はゆっくりと瞼を開いた。
 いつまでも、彼を寒い場所に留まらせておくわけにはいかない。
(行こう)
 行って、伝えよう。
 そして、全てを終わらせよう。
 壮絶なまでの決意をその小さな胸に秘め、少女は冷たい夜空の下に赴いた。

 

 病院の屋上。
 人が立ち入ることなど殆どないその場所に、少年はいた。
 彼は、キョンと呼ばれている。もちろん本名ではなく、あだ名や愛称のようなものだ。涼宮ハルヒらは少年をそう呼ぶが、有希はその名を口にしたことはなかった。
 転落防止の柵の手前で、家路へと急ぐ車のヘッドライトが照らす夜の街を物憂げな顔で眺めていた少年が、有希の存在に気がつくのに時間はかからなかった。
 厚手のコートを羽織ってはいるとはいえ、その下は薄い病人服である。そんな格好で、この寒空の下、ずっと少女を待っていたのだから、当然身体は冷え切っている。しかし、少年はそんな様子はおくびにも出さず、
「探したか?」
 柔らかな声色で問い掛けた。
 それは答えを求める問いでも、待たせたことへの皮肉でもなかった。
「そんなはずないか」
 その声色で、少年が自分を責めるつもりが無いことを知る。しかし、少女はそれを嬉しいと思うことはできなかった。責めてくれたほうがいいとさえ思った。少年の優しさが、痛かった。
 それでも、少女はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「全ての責任はわたしにある」
 どこか他人行儀で、本当に伝えたい言葉からは程遠かったけれど。
 そんな謝罪に、少年は少し戸惑うように表情を曇らせて、
「お前がバグることは三年前には解っていたんだよな」
 そう、と平坦な口調で少女が答える。
「なら、いつでもいいから俺に言えばよかったじゃないか」
 そうすればすぐに戻ってこれたのに、と。
「仮にわたしが事前にそれを伝えていても、異常動作したわたしはあなたから該当する記憶を消去した上で世界を変化させていただろう」
 それだけはしたくなかった、と少女は思う。
「また、そうしなかったという保障はない。わたしにできたのはあなたが可能な限りもとの状態のまま十八日を迎えるように保持するだけ」
 たとえ世界を丸ごと変容させてしまっても、あなたの記憶にだけは、触れたくなかった。
「脱出プログラムを残してくれただろ。充分だよ」
 少年は心底そう思っていた。
 裏切られたなどと思ってもいないし、自分が少女を救えなかったことを悔やんでさえいた。朝倉涼子の凶刃に倒れた時でさえ、彼はそれが有希の意思であることを頑なに否定した。それは、少年が有希に向ける信頼の大きさを示していた。
「長門」
 視線を落とす少女に、少年は語りかける。
「悪かったな」
 優しく、いたわりに満ちた声で。
(なぜ)
 予期せぬ言葉に、困惑する。
 なぜ、あなたが謝るのか。謝るべきなのはわたしなのに。
 まだ、わたしは何も言えていないのに。
(何ひとつ、伝えられていないのに)
 いつの間にか、有希は俯いていた。
 その頭上で、言霊が、響いた。

 

『ユキ』

 

 そっと、視線を上げる。
 少年が口にしたそれは、少女の名前―――ではなく。
 空に舞い始めた白い結晶のことだった。
(わかっている)
 失望は、なかった。
 少年が自分をそう呼ぶことはないことを、最初からわかっていたから。
 そっと、少女は両手を空にかざした。
 ゆるやかに舞い落ちる、寂しい粒を受けとめるように。
 少女と同じ名を持つ結晶は、手のひらの上に落ちて、そして、消えた。

 

 まるで、少女の未来を暗示するかのように。

 

「わたしの処分が検討されている」
 それは、別れの言葉だった。
 再び、少年が表情を曇らせる。戸惑いではなく、憤りを滲ませて。
「誰が検討しているんだ?」
 不快さを隠さぬ口調で、少年が問い質す。
「情報統合思念体」
 まるで自分のことではないように、少女は淡々と語り続けた。
「わたしが再び異常動作を起こさないという確証はない。わたしがここに存在し続ける限り、わたし内部のエラーも蓄積し続ける。それはとても危険なこと」
 もう、あなたを裏切りたくはない。
 もう二度と、あなたを傷つけたくはない。
(だから、さようなら)

 

「くそったれと伝えろ!」

 

 少年が吐き捨てたその言葉は、有希の思考回路を裁ち切り、頭の中を真っ白に染め上げた。辛うじてできたのは、僅かに首を傾け、瞬きをすることだけだった。
 その短い言葉の意味を少女が理解しようと試みるより先に、
「お前が消えるなり居なくなるなりしたら、いいか? 俺は暴れるぞ。なんとしてでもお前を取り戻しに行く。俺には何の能もないが、ハルヒをたきつけることくらいはできるんだ」
 少年はそうまくし立てると、少女の前に傅き、その小さな手を取った。今まで何度も自分を守ってくれたその手を、愛おしみ、慈しむように。
 それは、誓いだった。
 姫君に忠誠を誓う騎士のごとき造作を用いて、少女を絶対に守るという意思を、少女を絶対に失わないという意思を、少年はそこに示した。
 やがて少年は立ち上がり、少女の頭に乗った白い雪を優しく払った。そして、自らが着ていたコートを羽織らせ、フードを被せる。
 少女は抵抗せず、そっと目を瞑ることでそれを受け入れる。もはや考えることすらできない少女には、それが精一杯だった。
 瞼を開いた少女が少年を見上げ、二人の目が合う。
 少年の目に映る少女の瞳は、漆黒の闇のように黒く、しかし磨き抜かれた水晶のように透き通っていた。

 

 少年は憤る。
 何故、この少女がこうも苦しまなければならないのか。
 何故、この少女は苦しみを表現する手段すら与えられなかったのか。
 何故、この少女の苦しみに気付いてやれなかったのか。
 同情でも哀れみでもなく、純粋な憤りだった。感情豊かな"少女"を知る唯一の人間だからこそ、少女の願いがその目に焼き付いているからこそ、少年の憤りは大きかった。

 

 夜闇に染まった天を仰ぎ、溜息をつく。
 世界の理不尽さへの憤りは尽きそうもなかった。
 そのせいでこいつはおかしくなって、自分自身を消してしまうなんて馬鹿なことを考えるようになってしまった。
 それでも、と少年は思う。
 少女自身ですら、少女を認めることができないというのなら。消してしまってもいい存在だと思っているのなら。
 自分が認めてやればいい。あるがままを受け入れてやればいい。
 それは、少女の願いを否定してまでこの世界を選んだ自分の義務かもしれない。だけど、義務だからそうするというわけでは、決して無かった。
 なぜなら。
 少年にとってのかけがえのない存在である"長門有希"は、ただ一人、目の前の無表情な少女だけだから。
 感情の赴くままに、少年は吠える。
「お前が居ない世界なんてあってたまるか!」
 再び有希の白い手を握りしめ、
「つべこべぬかすならハルヒと一緒に今度こそ世界を作り変えてやる。お前は居るが情報統合思念体なんぞは居ない世界をな。さぞかし失望するだろうぜ。何が観察対象だ。知るか」
 拙い脅迫だった。情報統合思念体がそのような脅しが通じる相手ではないことを、少年は知っている。それでも、そう言わざるには居られなかった。全てをかなぐり捨ててでも、何を犠牲にしてでも、この不器用な少女を守りたいと思った。
「世界をひっくり返してでも、必ずお前を取り戻す。お前の親玉に、そう伝えろ」
 守りたいと、思った。

 

 握られた指先が感じる熱さが、少年の体温が、有希の思考を呼び覚ます。
 もたらされた情報の奔流と、湧き上がるエラーデータ、否、感情はあまりにも大きくて、全てを処理することなどできなかったけれど。
 それでも、少年の言葉は少女の心を激しく揺り動かした。
 無音だった世界に音が生まれるようだった。
 無色だった世界に色が彩られるようだった。
 何百年という長い時を経ても変わることのなかった少女の世界が、今、確かに息づいた。
(わかった)
 初めて、少女は気付いた。
 どうして、少年に選択肢を与えたのか。
 どうして、少年の記憶を操作することを忌避したのか。
 それを為した少女自身にさえもわからなかった、謎の答えに。
(彼の日常になりたかった)
 嘘ではなかった。
 でも、本当でもなかった。
("わたし"が、彼の日常になりたかった)
 少女によって作られた"普通の人間としての長門有希"ではなく。
 普通でもなければ人間でもない、ありのままの長門有希が。

 

 少女の願いは、叶った。

 

「伝える」
 少女は謂う。
 その真摯な黒い瞳で、しっかり少年を見据え。
 あくまでも淡々と、けれど、全ての想いを込めて。
 わたしを見つけてくれた、あなたに。
「ありがとう」

 

 街頭と月の光が仄かに照らす夜の街を、有希は静かに歩いていた。その背に、少年から預かったコートを羽織って。
 雪は既に降りやんでいたし、男性もののコートは、有希の小さな身体には些か大きすぎたけれど、このぬくもりを手放すつもりはなかった。
 少年に謝ること。それが最後の願いのはずだった。別れを告げに行ったはずだった。それで、何の未練もなく消えることができると思っていた。
 けれど、どうだろう。今になって、少女の心は生への執念で満ち溢れている。
 この世界に居たいと思ったことも初めてだった。
 消えることが怖いと思ったことも初めてだった。
 誰かのために生きたいと思ったことも初めてだった。
 喜び、希望、感謝、恐れ、不安。あらゆる感情が体中を駆け巡る。
 今までならば、それらはエラーデータとして蓄積されるばかりだっただろう。
 だけど、今は違う。
 その全てがかけがえのないもので、自分を形作るものであることを、わたしは知っている。
 あなたが、教えてくれたから。

 

 一筋の風が、有希に襲いかかる。
 思わず立ち止まり、風に飛ばされようとするコートを硬く握り締める。
 まるで、少女の未来を阻むように激しく舞い上がる風。
 しかし、少女はたじろがない。
(もう、何も怖くない)
 彼が、言ってくれたから。
 わたしを取り戻すと。決して失わないと。
 それは、どれほど強大な力よりも、どれほど豊富な知識よりも、有希を勇気づけ奮い立たせてくれた。
 一歩踏み出して、夜空に手を伸ばす。
 見えない未来を、手探りで探し当てるように。
 大切なものを、必死に掴みとるように。
 握られた手が、今も熱を持っているような気がした。

 

 やがて風は止んで、少女は再び歩き始めた。
 その目はしっかりと前を見据え、その足取りにはもはや一片の迷いもなかった。
 これからのことは何もわからない。
 明日、この世界に自分が居られるかどうかすら、今のわたしにはわからないのだ。未来が見えない不安は、この先もずっと付きまとうことだろう。
 それでも、と少女は思う。
(わたしはここにいたい)
 この世界を守りたい。
 この世界を信じたい。
 この世界を愛したい。

 

 あなたが選んだ、この世界を。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:53 (1772d)