作品

概要

作者いつまでも新米
作品名イメージソング・フロム・SOS団第六章:2
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2011-01-31 (月) 11:20:43

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 七日目、レコーディング開始の日である。

 

 手伝ってくれるスタッフやミュージシャンの出迎えをする。
「これから三日間、よろしくお願いします」
 みんなの代表で挨拶するハルヒ言葉を合図に全員頭を下げる。

 

 それからの三日間のことはダイジェストお送りしよう。
 予定としては一日目に伴奏部分の収録、二日目に本録り、三日目に田丸さんの音楽仲間(おやじバンドだという)とENOZのみなさんがレコーディングに参加するらしい。

 

 まず一日目、さすがにプロは仕事が早く、見る見るうちに準備が進んでいく。
 ハルヒはと言えば、その中をくるくる動きながら、時に手伝い、時に話をきいたりしている。
 真剣に考え込むような表情をしながら話を聞いていたこともあり、どうやら古泉の予定通り音楽業界の厳しさの話でも聞いたんだろう。
 後で聞いたら、その話を聞かせてくれた人にいたく感情移入したハルヒは、その人の所属しているバンドが出演するライブのチケットを俺たち全員の分もらったらしい。
 プロが目の前で演奏している様を眺めたりしたが、あまりのすごさにこりゃもっと真剣に歌わなきゃな、と気合が入った。

 

 二日目、いよいよ俺たちの歌を収録する日が来た。
 昨日演奏していただいた伴奏にのせて歌うわけだが、一回通して歌えばいいのかと思いきや(プロの中には一発どりという方式をとる人もいるらしい)、何度か歌って気になるところを編集で修正していくものなんだと。
 みんな他人の歌はレコーディングまでの楽しみにしておこうと思っていたらしく、ほとんどの人の歌は初めて耳にするわけだ。
 散々レコーディングまでの楽しみと言っていた長門の歌は素晴らしく、俺は心をわしづかみにされたような感覚を覚えた。
 ちなみに俺の歌はみんな気に入ってくれたらしくなかなか好評だったぞ。
 長門に評価を求めると、かすかに、ホントにかすかに表情をほころばせ
「ユニーク」
 と言ってくれた。
 …俺としてはアレがまかり間違って世に広まることになったら、首をつるのにちょうどいい枝を探さなくてはならないところだがな。
 収録中は羞恥心をかなぐり捨てて歌いきったが、終わって素面にもどると穴があったら入りたいような感覚におちいる。
 全員分の収録がおわり、完成したマスターCDをみんなで聞いた時には結構感動ものだったな。

 

 三日目、ENOZの皆さんと久しぶりの再会。
「こんな貴重なチャンスをありがとう」
 と言われたハルヒは照れながらも
「あたしたちだって降って湧いたようなチャンスなんだから、独り占めしたら悪いじゃない!」
 と返した。 
 やっぱり大人になったな、ハルヒ。
 驚いたといえば田丸さんのバンドのメンバーだ。
 なんと裕さんがいる。
「やぁみんな、久しぶりだね!」
 兄弟で同じバンドに所属してるってよっぽど仲がいいんだな。
 …本当に兄弟なら、だが。

 

 そうそう、三日目にはこんな騒動があった。
 ニヤニヤ笑いで顔が完全に崩れているハルヒが朝比奈さんににじり寄り
「みくるちゃ〜ん。
 実はあなたにサプライズがあるのよね〜」
 とのたまった。
「え、えぇ?な、なんですかぁ?」
 朝比奈さんは全くわかってらっしゃらないようだが、俺には嫌な予感があった。
 実はこのレコーディング話が持ち上がった時から朝比奈さんの為にあえて話題に上げないようにしていたことがあるのだが。
「みくるちゃん、あなた実は一人だけ良い曲をもってるわよね?
 下手に練習されて普通になっちゃったらもったいないから今まで黙ってたのよ〜」
「ふぇ、そ、それって、もしかして…」
「そうよ!
 みくるちゃん!『恋のミクル伝説』も収録するのよ!」
「ひ、ひぇぇぇぇぇ、いやですぅ!」
「残念ね、これはすでに決定事項なのよ!
 さぁ、このウエイトレス衣装に着替えなさい!」
「えぇ!?ななななんで持ってきてるんですかぁ!?そそそそれにレコーディングなら格好は関係ないんじゃ…」
「つべこべ言わずにさっさと着替える!
 なんならあたしが着替えるの手伝ってあげるわ!ほら!」
「ひゃ、や、やめてすずみやさ、一人でできますぅ!いやぁぁぁぁぁ!」
 ご愁傷様です、朝比奈さん。

 

 突如としてスタジオに現れた闘うドジっ子ミニスカウエイトレスに男性スタッフ陣はくぎ付けになっていたが、無理からぬことだろう。
 …俺も、正直たまりません…て、イテテッ!どうした長門。
「なにも」
 そ、そうか、なら俺のわき腹から指を…
「承服しかねる」
 お、俺は別に朝比奈さんに特別な…
「浮気者…」
 スマン。

 

 そんなこんなであっという間に三日間は過ぎていき、スタッフさん達も撤収し、ENOZの皆さんも先に帰った。
 俺たちももう帰る時間だ。
「圭一さん、本当にありがとう!」
「なに、君たちと遊ぶのは楽しいからね、また何か思いついたら声をかけてくれ」
「もっちろんよ!」

 

 
「ねぇ、古泉くん、CDは何枚作る気なの?」
「圭一さん達のついでという形ですからね。
 百枚といったところでしょうか」
「ま、最初はそんなもんね。
 製品版が出来上がったら何枚かちょうだい、宣伝に配るから」
 なに!?まずい、古泉、なんとかしろ!
「わかりました」
 無抵抗かよ!
「大丈夫、情報操作は得意」
 長門!
「涼宮ハルヒの配るCDの音質をより良いものにしておく」
 そっちかよ!

 

 帰りの席順は行きと一緒だった。
「アンタと有希は行き一緒だったわよね。
 なら変えなくていいわ。
 感謝しなさい!」
 へいへい。

 

 車中では朝倉と喜緑さんにお互いの魅力について根掘り葉掘り聞かれ、また長門がいちいち照れながらも真面目に答えるから、質問責めはヒートアップし続けた。
 俺は顔から火が出る思いだよ!
 宇宙人でも地球人でも女の子は女の子なんだな。

 

 夕方、十日ぶりにやってきたいつもの駅前は当たり前のことだがいつもと変わらず、
「あぁ、帰ってきたな」
 という気分させてくれる。
「みんなお疲れ様!
 みんなが頑張ってくれたから、素晴らしいものが出来たわ!
 特に、協力してくれた鶴屋さん、喜緑さん、涼子、妹ちゃんには感謝してる」
「あたしも楽しかったからお礼なんていいっさ!」
「えぇ、貴重な体験をさせてもらいました」
「こっちがお礼いいたいくらいだわ」
「楽しかった〜、またやりたいね〜」
 まったくだ。
「ここに全員分のCDが袋分けしてあるから、受け取った人から解散していいわ。
 SOS団も明日明後日は休みよ」
 さすがにハルヒも帰って早々何かを仕出かそうとは思わないか。
「キョン〜?
 休みだからってグダグダしちゃダメよ!
 去年の二の舞にならないように宿題をちゃんとやりなさい!
 それから、有希をちゃんとデートに連れてくこと!」
 わ、わかってるよ
「どーだかね」
 ハルヒから紙袋を受け取ったやつから順に去っていく。
 よし、俺たちも帰るか。
「だめだよキョンくん!
 有希ちゃんおいてっちゃ」
 む、そうだな、しかし方向が違うし…そうだ。
「長門」
「なに」
「お前を家に送ってやりたいのは山々なんだが妹を置いて行くわけにはいかんからな」
「わかった、大丈夫」
 おいおい、帰ろうとするなって、話は最後まで聞きなさい。
「だから、いったん俺の家に来ないか?
 そうすれば自転車だして、お前の荷物も運んでやれるしな」
「いいの?」
「もっちろんだよ〜、ね、キョンくん」
「おう」

 

 そうして三人で連れだって俺の家に向かった。

 

 家にたどり着くと母親が玄関で出迎えてくれたが、長門の姿を認めると状況の説明を俺に促し、さて、どう説明するかと口を開く前に妹の
「キョンくんの彼女だよ〜。
 がっしゅくのあいだにキョンくんからこくはくしたんだって〜」
 という事実直球ど真ん中な発言に狂喜し、
「この馬鹿息子がね〜。
 こんなかわいい子を。
 上がって行きなさい、夕飯ごちそうするよ」
 などと言って長門を引っ張り込んだところで、馬鹿息子発言に抵抗しようとした俺には発言権なぞないことに気付いた。

 

 夕食の会話の際に長門が一人暮らしであることが発覚したのと、その食いっぷりを気に入ったお袋による
「ちょくちょくご飯を食べに来なさい」
 との提案を俺が肯定したのを受けて
「…よろしく…お願いします」
 と頭を下げた姿は非常に可愛らしかった。

 

 一息ついてから長門をマンションまで送ろうと立ち上がった俺たちだったが、
「泊まっていけばいいのに」
「有希ちゃん泊まってって〜」
 という攻撃にしばし足止めを食うことになるが、さすがにいきなり他人の家に泊まるのは抵抗があるらしく
「また、今度」
 と言って家をでた。

 

 ポツリポツリとなんてことない会話をしながらゆっくりと歩いていたが、残念なことに前進を続けていれば目的地についてしまうものであり、マンションの前に自転車を止め、長門の荷物をとりだし手渡した。
「帰ったら連絡するな」
 といって自転車に乗ろうとした俺を長門が止めた。
「まって」
 どうした?
「…お願いがある」
 なんだ?言ってみろ。
 という俺の問いかけに、長門は行動でもって答えた。
 立ち尽くす俺にスッと近づき、腰に手を回し、胸元に体重を預け、上を向いて、綺麗で大きな瞳を閉じると、薄く開いた唇を突き出した。

 

 これは、アレ、だよな。

 

 心拍数が跳ね上がる。
 覚悟を決めた俺は、同じように長門の体に手を回すと、自分の唇を長門のそれに重ねた。

 

 唇を重ねる。
 たったこれだけの行為なのに全身を幸福感が包むんだから不思議だ。

 

 どれくらいの間そうしていただろうか。
 どちらからともなく離れると、お互いぼんやりとしたまま
「また」
 といって別れた。

 

 夢の中を漂っているようなフワフワとした感覚のまま家にたどり着き、そのまま風呂に入り、自室に戻った。
 やっと落ち着いてきた俺は、長門に連絡すべく携帯を取り上げた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:51 (2711d)