作品

概要

作者いつまでも新米
作品名イメージソング・フロム・SOS団第五章:4
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2011-01-31 (月) 11:12:02

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 山の中は日陰が多く、夏だというのに全然暑くなかった。
 どっかのんびりできそうな所あるか?
 GPSを眺めている長門に尋ねると、
「ここを六十二メートル進んだ所とそこからさらに二百十三メートル上流に進んだ所に滝がある」
 そーか、じゃあ上の方の滝に行こう。
「…そう」
 集合は正午だったからな。
 まだ三時間もある。
 つーか早起きして散策って健康的だな。

 SOS団の思い出話や最近読んだ本のこと、シャミセンが相変わらず寝てばかりいることなんかをとりとめなく話していると、目標の上流側の滝に到着した。
「ほ〜、たいしたもんだ」
 別に有名な滝でもないし、それほどでかいわけではないが、やはり近くでみると圧倒される。
 しかも水の落ちる所の近くにいるからか、心なしか涼しい。
「気持ちいいな」
「…爽やか」
 うん、ここならいいか。
「長門」
「なに」
「近くに誰もいないよな?」
 長門はしばし目を閉じると
「いない」
 と答えた。
「よし、お前に聞いてほしいことがあるって言ったよな?
 お前も俺に聞いてほしいことがあるって言ってたが、どっちから話す?」
「先に言ったのはあなた。
 あなたから話すべき」
 やっぱりそうだよな。
「よ、よし、じゃあ聞いてくれ。
 実はな…」
 そこで妙なことに気がついた。
 いつの間にか霧にまかれている。
 さっきまではカラリと晴れてたのに。
 霧ってこんなに早くはるもんなのか?
 ん?どうした、長門。
「うかつ」
 何かあったか?
「緊急事態、離れないで」
 この霧か?
「違う、霧は副産物的なもの。
 我々のいる空間が隔離されている」
 どういうことだ?
 またハルヒか?
 …あんなに機嫌が良さそうだったじゃねーか!
 いつの間にか周りの風景から色が抜け落ちている。
「違う」
 なら天蓋領域か急進派か?
「どちらでもない。
 この空間を覆っている力は、我々の世界にあるものとは違う」
 …我々の世界と違うって、もしかして異世界人てことか!?
「断定はできない。
 しかし可能性は高い」
「ピンポーン。
 だいせいか〜い!」
 間の抜けた声が響いたかと思うと、俺と長門は後ろからの衝撃を食らって林の中に吹っ飛んだ。
 ぐぁっ!誰だ!?
「誰だって〜?
 さっき自分で言ってたじゃん、異世界人てヤツだよん」
 俺の視線の先には、影がそのまま動いてるような、アニメで正体不明のキャラクターを表す時の黒ずくめの人間のようなヤツがいる。
「あ、こんな姿でしつれ〜い。
 この世界は案外ガードが固くてね〜。
 自分の影を投影するので精一杯なんだよね〜」
 聞いててイライラする喋り方をしやがる。
 長門、大丈夫か?
 …長門、息があがってないか?どうした!?
「情報統合思念体との接続が切れかかっている。
 今の私は機能が大幅に制限されている。
 ヒューマノイドインターフェースとしての身体能力はそのままだが、情報操作は殆ど使えない」
 何だって!?
 それじゃあ、大怪我してもここじゃ直せないのか?
「問題ない、あなたは私が守る」
 そうじゃない!
 お前の情報操作任せの無茶が通じないってことは、お前が危ないってことなんだぞ!
「オレは彼女みたいに万能じゃないからさ〜。
 せいぜいが空間を隔離して君らを孤立させることと、自分の影を送り込むぐらいでさ〜。
 今も攻撃手段は物理衝撃、つまり殴る蹴るぐらいしかできないもん。
 だからハンデだよハンデ」
 けっ、何がハンデだ。
 ユラユラしやがって。
「何が目的だ」
「ほら、アノ子、涼宮ハルヒちゃんだっけ〜。
 アノ子の力さ〜、最近安定してきてるでしょ〜?
 面白くないんだよね〜」
「面白くない?」
「そ。
 オレたちの目的って〜、新しい世界を作り出すことなんよ〜。
 でもそんなことが出来る能力をもったヤツなんて全くといっていいほど存在しないんだよね〜。
 もう無理かな〜って思ってたら、存在するだけで世界の成り立ちに大きな影響を与える人間を発見したんだよね〜」
「それがハルヒか…」
「そ〜そ〜。
 世界を作り出すってのとはすこ〜し違うんだけど、オレたちの求める能力にかなり近いものがあったから、観察をしてたんだよ〜」
「覗きたぁいい趣味じゃねーな」
「そ〜かな〜。
 君らが右往左往するのを見てるのは楽しかったけどね〜」
 クソ、いまいち正体が掴みきれん。
「新しい世界なんて作ってどうする」
「決まってんじゃん。
 自分たちの理想郷にして、楽しく暮らすんだよ〜。
 オレたちは世界の狭間を漂って生きる存在だから、安住の地ってヤツがないからね〜」
 世界と世界の狭間に湧くなんてまるでボウフラだな。
「その姿が影なら、本体も同じ形なんだろ?この世界の生物でもねーくせになんで人間と同じような姿をしてんだ?」
「オレたちはあらゆる世界を旅してるんだから、君らのごとき下等生物の真似事くらい簡単さ〜」
 埒があかんな。
 長門、ここから出られるか?
「完全に接続を絶たれたわけではないことから推察すると、この空間の壁に脆い所がある筈。
 そこに飛び込み私の今使えるありったけの情報操作能力を叩きつければ出られる可能性はある」
 なるほ…
「あれれ?もしかして逃げられると思ってない?」
 長門が突然俺を突き飛ばした。
 とっさのことにわけがわからなくなってる俺が見たのは、あのボウフラ野郎に吹っ飛ばされ、足蹴にされている長門だった。
「言ったよね?
 ハルヒちゃんの力が安定するのはつまらないって。
 世界を一から作る能力は存在しなくても、世界を作り替えちゃう力はあるんだ。
 だったら目の前にある力を使う方がよくない?」
 どういうことだ?
 長門から離れろ!
「世界を縛る因果律ってのは、あらゆる世界を渡り歩くオレたちにも手出しができない程強固なものだ。
 だ・け・ど、ハルヒちゃんが力を使うとその因果律に揺らぎが生じるのがわかったのさ〜。
 力の解析の為にしばらく放っておいたけど、このまま落ち着かれるとオレたちの目的が達成できなくて困るんだよね〜。
 だって、ハルヒちゃんが思いっきり世界を作り替えちゃう時に因果律に干渉して、オレたちの好きな世界を作っちゃおうってのがオレたちの計画だからさ〜。
 で、君たちにここまで計画の内容を喋った理由はわかるよね〜?」
 俺たちを消す気だから…。
「そのと〜り〜。
 ハルヒちゃんの心の鍵を握る君と、ハルヒちゃんの側で反則的に強い力を持ってるこの子が邪魔なんだよね〜」
 ふざけんな、こんなことがあってたまるか…。
 俺は怒りで歯ぎしりしながらヤツを睨みつけた。
 ふと右手に触ったものに目をやる。
 信号弾だ。
「さ、もう喋りすぎたし、さっさとヤっちゃうか。
 君らの死体をハルヒちゃんの前に転がせば、ショックで世界を作り替えちゃうだろうし、邪魔者も消せるし、一石二鳥だね〜」
 そう言うなりヤツは長門の肩を踏みつけていた足を振り上げ、思いっきり蹴りつけ始めた。
「長門から離れやがれ、このボウフラ野郎!」
 ブチキレた。
 視界が真っ赤にそまり、体が勝手に動いた。
 長門を助けなきゃ、その意識だけが俺を支配していた。
 思いっきり走り出し、クソ野郎に体当たりをかますと、信号弾をヤツに向けて発射してやった。
「ウガァァァ!」
 どうやら直撃したらしいが、ヤツは影だと言ってたから油断はできない。
 そんなことより長門っ!
 唇が切れ、体のあちこちに擦り傷がついている。

 

 服の上からじゃわからないが、あれだけ蹴られたんだ、アバラが折れたり、内臓にダメージがいっていてもおかしくない。
「おいっ、長門っ、長門っ」
 俺の呼びかけに反応してうっすら目を開く長門。
「大丈夫か!?」
「大丈夫ではない、このままでは足手まとい。
 あなただけでも逃げて」
「バカやろう!お前置いて一人でどこに逃げろってんだ!
 俺は絶対にお前を見捨てない!
 少し痛くても我慢しろよ!
 お前を連れて逃げる!」
 そう言うと、俺は長門を抱え上げ、お姫様だっこってヤツだ、川沿いを走り出した。
「空間の脆い所がどうだとか言ってたな!
 どこだかわかるか?」
「…二つあった…滝…の下流…側」
「わかった!うわっ」
 突然足元を掬われた俺はすっころんでしまった。
 慌てて長門をかばいながら背中で倒れる。
 振り返るとあのボウフラ野郎がユラユラと追いかけてきていた。
 信号弾が効いたらしく動きはゆっくりだが、どうやら腕を伸ばすんだか衝撃波を飛ばすんだかができるらしい。
 まっすぐ走るのは危ないと判断した俺は、一旦林の中に入った。
 後ろの方で、木が何かを打ちつけられているような音が断続的に聞こえてくる。
 ゴホッ、と長門が咳こむ声が聞こえ思わず顔を見ると、血を吐いている。
 まずい、マジで内臓に深刻なダメージが来てるらしい。
 呼吸もヒューヒューいいだした。
「もう…いい。
 ここからでも…ポイントの特定は可能…情報操作もできる…。
 …私を置いて…あなただけでも帰還を…」
「何度も言わすな!
 俺はお前と一緒に帰る!」
 クソ、涙が出てきやがった。
 情けないぞ、俺!
「なぜ…そこまで…」
「好きだからだよ!」
 あ、言っちまった。
「好きなんだよ!
 古泉より、朝比奈さんより、ハルヒより、お前が!
 友達として以上に、長門有希という女の子が好きなんだよ!
 お前が俺をどう思ってようと、好きな女を置いて逃げられるワケねーだろ!」
 はぁ、なんでこんな命のかかった状況で告白なんだよ。
 クソ、こんなことになるならもっと早く告げてれば…。
「…私は…私も…あなたが好き…」
 …何だって?
「あなたのことが…誰よりも…好き…」
 ほ、本当か!?
 こんな状況なのに喜びで顔がほころびそうになる俺はアホだ。
「…通常空間に…復帰する前に…私の生命が終わってしまえば…二度と回復できない可能性がある…だから…今…伝える…」
 バカやろう!
 一緒に生きて帰るんだよ!
「…大好き」
 俺も大好きだ!
 だから生きろ!

 

 やっとの思いで下流の滝にたどり着いた。
「どうすればいい!?」
「滝壺に…飛び込んで…」
 何!?
 後ろから衝撃波が迫っている。
 迷ってるヒマはない!
 行くぞ!
 うぉぉぉぉ!
 長門が例の高速早口を唱えているのが聞こえたと思うと、ぐるっと一回転するような感覚がして次の瞬間、俺は自分が、飛び降りた滝壺のわきにへたり込んでいて、目の前に朝倉と喜緑さんがいるのを認識すると、安堵感からか涙腺が決壊するのを感じながら、長門を助けてくれと泣き出した。

 

「よくやってくれましたね。
 有希ちゃんは大丈夫ですよ。
 まもなく再構成が終了します」
 喜緑さんが俺の頭を優しく撫でながら語りかけてくれる。
 数瞬の後、長門が目を開けたのを確認した俺は、喜緑さんの前だというのも忘れて長門を抱きしめた。
 その一連のやり取りの間中ずっと、朝倉は滝壺を睨みながら高速早口を唱えている。
 怒りに燃えたその表情は、正直とても怖かった。
 俺の腕の中の長門は、しばらく俺にされるがままにしていたが
「大丈夫」
 と言うと立ち上がり朝倉の隣で高速早口を唱え始めた。
 次いで喜緑さんもそこに加わる。

 

 即席の情報操作コーラス隊は暫くそのまま唱えていたが、やがてこちらを振り向くと、
「終わった」
 と告げた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:51 (2708d)