作品

概要

作者PDFの人
作品名がんばれながとさん 〜ゆけむり銭湯編〜
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2006-08-06 (日) 18:50:37

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

PDF版

 

 ■PDF版ダウンロード : fileがんばれながとさん 〜ゆけむり銭湯編〜.pdf

 

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 ※ 作者としてはTEXT版よりPDF版を推したいところです。

 

TEXT版

 【がんばれながとさん 〜ゆけむり銭湯編〜】

 
 
 

 あの長門が何を血迷ったか、いやあいつのことだから血迷ってなどいないのだろうが、なんと銭湯の経営を始めたという。放課後部室でいきなり近づいてきたと思ったら、行きたいところがあるというからどこだと問うた俺を誰が責められよう。いきなり銭湯に行きたいと言い出したのだ。小動物系の可愛らしい少女が、男性を銭湯に誘うとはどういうことか。妄想すること100回、どうにかリビドーを押さえ込んだ俺は、詳しく事情をきくことにした。
「わかった、よし、まずは説明してくれ」
「なにを」
「いや、だから、なぜ銭湯に行きたいのか、だ」
 おまえの家にはでっかい風呂があるじゃないか、と言いそうになったが、ハルヒに殺されたくないのでそうは言わなかった。風呂の修理に呼ばれただけだなんて理由は信じてもらえそうにないからな。
 さて、長門いわく、興味があったから銭湯というものの経営をしており、世間の評判は上々なのだが一回来て問題があれば指摘して欲しい、ということらしい。なるべく自分に近い人に来てもらった方が遠慮なく問題を指摘してもらえるだろうということだ。当然のごとく、ハルヒは大はしゃぎである。銭湯をプールとでも思っているのかお前は。遊びに行くんじゃないんだ、他でもない長門の頼みごとだぞ、ぞんざいに扱ったりしたら俺がゆるさねえ。
 しかし、かく言う俺にも、断る理由なんてどこにもないし、むしろ長門の経営する店なんてたとえ警備員が百人いたって突破して訪れたいくらいだ。だから今日は部活を終わりにしてこれからすぐ向かおうというハルヒの意見に、俺はもちろんのこと、ミスタースマイルも専属メイドさんも異論はないようで、その日の部活、いや団活はそこで切り上げ、SOS団そろって出向くことにした。しかし風呂に入りにいく部活って何なんだよ、俺たち。

 
 

 さて長門は、その銭湯の所在地を告げて一足先に銭湯に向かった。なるべく自然な状態で、ということだから、おそらく俺たちを番頭に立って出迎えてくれることだろう。いやまて、長門が番頭? まさかそんな、あいつのことだからずっと制服で居るだろうし、制服で番頭なんて論外だ。男性客はみんなテントを張ってしまって風呂どころではなくなるはずだしな。いやだぜ、オトコがみんな前かがみになってそそくさと風呂場に向かうシーンなんざ見たくないね。って、そんなこと考えるなよ俺。テントってなんだテントって。俺はそういうのとは無縁なの! エロとかアダルトとかとは無縁なの! 少なくとも表面上は!
 閑話休題、とにかく、俺たちがすべきことは、何も考えずに銭湯にいって、何も考えずに風呂に入って、何も考えずに帰って、振り返ってみてアレ、おかしいぞ、と思ったことを長門に伝えるまでだ。よし。

 

 というわけで、長門以外のSOS団員は、風呂の準備をして三十分後に駅前に集合となった。

 
 

 さて、その三十分後になった。が、なぜだかハルヒが来ていない。次回の不思議探索ツアーはあいつに奢ってもらうことにしようと考えながら、同時に隣で可愛らしく立っておられる朝比奈嬢の入浴シーンをほわほわと妄想してしまっていた。ああ、裸のハルヒにいろいろされるんだろうなあうらやましいってちがうちがう。だってアレだぜ、俺のほうには裸の古泉が居るんだぜ。せっかくの風呂なのに一瞬たりとも気が抜けないねこりゃ。ってまた俺は何を考えているのか。いかんな、風呂となるとどうも落ち着けない。
 と、一人でわたわたしているうちに、ハルヒが走ってやってきた。
「ごっめーん! めんごめんご! みくるちゃんのためにいろいろ準備してたら遅くなっちゃった! じゃあ行きましょ!」
 朝比奈さんがひくっと小さい声を漏らしたのを俺は聞き逃さなかった。ここはやっぱりフォローを入れておくべきだろう。
「何を持ってきたのか知らんが、あんまり変なことするなよ」
「あったりまえじゃない! 団長たるもの団員においたはしないわ! アンタじゃないんだから!」
 おい、俺がいつおいたをしたよ。っていうかお前ふだんからおいたしまくりじゃねえか畜生。ところで何を持ってきたんだ?
「なに? 気になるの? いやらしいこと考えてるでしょう。顔にかいてあるわよこのエロキョン!」
 というや否や、俺の背中をばしんと叩いて、目的の銭湯に向けて走り出した。
「はやくしなさーい! おいていくわよー!」
 どうやらかなり機嫌がいいらしい。やれやれだ。あいつが機嫌がいいと、俺や朝比奈さんが迷惑をこうむるのが常だからな。ちなみに、ミスタースマイルはそういうときは笑っているだけでなにも被害はない。畜生。

 
 

 そこの暖簾には、長門湯、とでかでかと書いてあった。藍地に白文字、銭湯の王道スタイルである。しかし長門らしい明朝体ではなく、相撲の番付表のような達筆な筆文字であった。意外なこともあるものだ。案外、中も普通なのかもしれん。

 

「いらっしゃい」
 前言撤回。普通じゃない。マジで長門が番頭だ。制服の上から、法被というのかなんというのか、とにかくそれっぽいアレを羽織ってちょこんと座っていた。羽織るのはいいがな、その下を考えようぜ長門よ。それにいらっしゃいだなんて。普通の銭湯なら普通なセリフも、長門が言うからとてつもなくシュールじゃないか。普通の銭湯に普通じゃない少女がいて普通のセリフを吐くという、普通なんだけど普通じゃないみたいな、そんな状態だ。
「有希! かわいいじゃない! 明日からその格好で学校にきなさい! で、脱衣所はどこ? あ、あそこね! じゃあ行くわよーみくるちゃん!」
 一気にまくし立てると、朝比奈さんを引っ張って脱衣所に飛び込んでいってしまった。ミスタースマイルは隣で肩をすくめている。俺も肩をすくめたいところだが、その前に言っておかなきゃならんことがある。ハルヒの言いつけを愚直に守るこいつのことだからな。
「なあ長門」
「なに」
「その法被、似合ってるぞ」
「……」
「だがな、それで学校に来るのはダメだ」
「……そう」
 ……来るつもりだったのかよ。ていうかそんな哀しそうな顔するな。
「じゃあこうしよう、着るなら部室の中でだけ。どうだ?」
「……」
 無言とともに、長門はかくんと首を縦に曲げた。うれしそうな顔をしやがる。文化祭の魔法使いの衣装といい今回の法被といい、俺たちにとってイレギュラーな衣装が好みなのかねこいつは。かわいいやつめ。

 

 そんなこんなで、ミスタースマイルと一緒なのが気に食わないが、脱衣所へ向かった。脱衣所はこざっぱりとしていて、落ち着いた雰囲気だった。しかしちょっと……カゴが散乱しすぎのような。誰も居ないというのに。
「意外ですね、長門さんが銭湯なんて」
「まったくだ。まあしかし、あいつなりに考えたんだろうな。本屋のほうが似合う気がするが」
「しかし誰もいませんね。ガラガラです。そのわりに……ちょっとちらかっていますが」
「……まあ、まだ夕方だし、な。散らかってるのもまだなれてないんだろう。できたばっかりっぽいし。長く続くかわからんが、たまに来てやろうじゃないか」
「やさしいですね、あなたは。大方、僕も同意見ですけど」
 落ちていた適当なカゴを拾い棚に戻し、二人して服を脱ぎながら(しかし古泉、筋肉あるな)、そんなことをぐだぐだと話していた。長門が興味を持ったんだ、俺としてやれることは、長門が満足できるように精一杯バックアップすることだけさ。長続きするようにな。それはそうと、脱衣所が散らかっているのは客の印象を悪くするな、これは後で伝えておこう──
 ──ガラガラ
 お、新しいお客さんか……っておいっ!
「長門っ!」
 俺たちはあわてて前を隠す。当然だ。
「……そうじ」
「……いやその、掃除って普通は誰も居ないときに……」
「へいき。きにしないで」
 とぽつりと言うと、散らかった脱衣所を手際よく片付けて言った。いや、気にするって……しかし俺たちだったからまだいいものの……枯れた爺さんとか血気盛んな兄ちゃんとかだったらどうなることやら……これは後でしっかり言っておく必要があるな。

 

 数分後、テキパキと片づけを済ませた長門は、ごゆっくり、とつぶやいて、とことこと出て行った。

 
 

 その後はいたって普通の銭湯だった。中もこざっぱりしていて、落ち着いた雰囲気である。湯加減も良いし、温泉通でもなんでもない俺は非常に満足していた。女湯から聞こえてくるハルヒと朝比奈さんの騒ぎ声も心地よいBGMだしな。問題点、といえば、少し女湯が騒がしすぎることくらいか。朝比奈さん、大丈夫かね。あんな声出しちゃって。ああ、ちなみに古泉は、何もしてこなかった。安心である。

 
 

 風呂上りお決まりの、牛乳の一気飲みを全員で済ませ、帰路についた。朝比奈さんがげんなりしていたのが気になるが、何かいうとハルヒにまたエロキョンバカキョン言われるのは目に見えてるから、何も言わないことにする。ごめんなさい朝比奈さん。
 そのまま、その日は解散となった。

 
 

 その夜。
 長門に伝えるべきことを整理するため、今日の銭湯の様子を振り返っていた俺は思った。脱衣所のことである。床は、濡れていなかった。綺麗に乾いていたし、ホコリひとつ落ちていない。横に並んでいる洗面台も綺麗に磨かれていて使われた形跡もみられなかった。ちなみに風呂場も、未使用といって差し支えないほど綺麗だったし、隅から隅まで長門らしく整理整頓されていた。
 さて、それなのになぜ脱衣所の、それもカゴだけが散らかっていたのか。

 

 まさか、ね。
 長門が脱衣所に入る口実を作るための工作、だったなんてことはないと信じたいものである。

 



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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:50 (1834d)