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作者 | いつまでも新米 |
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作品名 | イメージソング・フロム・SOS団第四章:7 |
カテゴリー | 長門SS(一般) |
保管日 | 2011-01-31 (月) 11:03:18 |
キョン | 登場 |
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キョンの妹 | 登場 |
ハルヒ | 登場 |
みくる | 登場 |
古泉一樹 | 登場 |
鶴屋さん | 登場 |
朝倉涼子 | 登場 |
喜緑江美里 | 登場 |
周防九曜 | 不登場 |
思念体 | 不登場 |
天蓋領域 | 不登場 |
阪中 | 不登場 |
谷口 | 不登場 |
ミヨキチ | 不登場 |
佐々木 | 不登場 |
橘京子 | 不登場 |
その日はその後何事もなく、夕飯の時間まで各自歌の練習をして過ごした。
考えてみると、まじめに歌の練習なんてするのは生まれて初めての経験かもしれず、やってみると案外面白いものでつい大きな声を出して古泉に面白そうな目で見られるという醜態をさらしてしまった。
「僕とは違う意味で、あなたも自分の内面を他人にさらけ出さない人だと思っていましたが」
うるせー。
夕飯の時間になり食堂に降りて行くと、ハルヒ以外の全員がそろっていた。
「涼宮さん、まだ作曲してるんでしょうか?
あたし、呼んできた方がいいですかねぇ?」
と朝比奈さんが心配そうな声を上げる。
確かに、根を詰めすぎるのも良くない。
朝比奈さんを制し俺が呼びに行こうとしたちょうどその時、当のハルヒがやってきた。
「おう、ハルヒ。
ちょうど呼びに行こうとしてたところだったんだ。
調子はどうだ?」
心なしか疲れているように見えるが。
「ひとまずの目途は立ったわ。
明日一日あれば完成しそう」
「おいおい、時間はまだあるんだ。
あまり無理するなよ」
「わかってるわよ。
でもやることが目の前にあるのに止まってるってのはどうにも性に合わないの!」
全く、さすがは涼宮ハルヒだな。
「あぁ、おなか減ったわ!
食べましょ!この匂いはカレーね!」
「そう」
お、長門が待ちきれないような顔している。
そりゃあ好物だもんな。
俺も腹が減ってきたぞ!
「それでは配膳させていただきます」
新川さんと森さんがてきぱきとカレーの入った皿を並べていく。
「沢山ございますのでおかわりはご自由にどうぞ」
「「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」」
結論から言おう。
カレーはうまかった。
俺もおかわりしたがハルヒと長門は競い合うようにおかわりを続け、意外にも朝倉がそのあとを追いかけていた。
一瞬『ヒューマノイドインターフェースはみんな大食いなのかな』とも思ったが、喜緑さんは小食の部類に入るようで、そういえば昨日の夕食もそんなに食べていなかったことを思い出し、大食いも個性、まことに結構じゃないかと感じることしきりである。
「みんな、歌の練習のほうはどう?」
「大丈夫だよぉ」
「バッチリさっ」
「問題ない」
ハルヒの問いかけに各々が返事を返す。
「あのぁ〜あたしは少し心配なんでできれば涼宮さんにみて欲しいですぅ」
あぁ、朝比奈さん!
なんて健気でかわいらしいんだっ!
「じゃぁこの後お風呂入って、それから練習しましょ」
あ、じゃあ俺も…
「一度に一人ずつよ」
ちくしょっ。
夕食後一息ついたら、昨日のごとくお風呂。
今日は月がきれいに出ていて、秋にも来てみたいな、なんてことをぼんやりと思った。
「秋にもぜひ来たいですねぇ」
む、人の心を読むな。
「ふ、僕にはそんなことできませんよ。
ご存知の通り僕はあくまで…」
おぉーっとそこまでだ。
お前は昨日の醜態を忘れたのか。
「そうでした」
全く、うかつすぎるぞ。
「入浴後ですが、いかがなさいますか?」
朝比奈さんとハルヒは歌の練習だからな。
俺らだけ遊んじゃ悪いし、おとなしく部屋で歌詞の読み込みでもするさ。
「そうですね、今日も風呂上りのデザートがあるそうですよ。
僕はもう上がろうと思いますが、あなたは?」
またしばらく浸かっていくさ。
「わかりました。
長門さんと楽しくお話しされている分には良いんですが、あまり涼宮さん達に心配かけないで下さいよ!」
なんだ、知ってたのか。
「あんな奥まったところの壁に寄り掛かって、しかも反対側に人がいるとなれば気づかないほうが不自然ですよ」
それもそうか。
「あちらの方々も上がられたようですし、僕も行きます。
二十分してこなかったら様子をみにきますから」
はいよ、ご苦労なこった。
さて、向こうに人の気配はしないが…長門!
「なに」
やっぱりな。
どうだ?また話でもしないか?
「…わかった、昨日の場所へ」
ほいほいっと。
俺の長門への気持ちをはっきりさせる為には、やっぱりコミュニケーションが必要だよな。
ついたぞ。
「私も」
どうだ?歌のほうは。
「問題ない」
気に入ったか?
「悪くない。
涼宮ハルヒの感覚の鋭さには驚かされる。
私の正体や心を知っているのではないかと感じるほど」
確かにアイツの感覚の鋭さは異常だ。
警察犬にでもなれるんじゃないかね。
「涼宮ハルヒは犬ではない。
嗅覚も人類並み」
…長門、ジョークってやつだ。
「…そう、あなたは?」
ん?あぁ、俺の歌はってことか。
まぁ素直に認めるのは悔しいが、結構いいと思うぞ。
俺は気に入った。
「そう、レコーディングが楽しみ」
そういえばお前の歌もレコーディングまでのお楽しみだったな。
「そう、だけど早くあなたに聞いてもらいたい。
これはジレンマ」
はは、でもな、そのもどかしい時が一番楽しいのかも知れんぞ。
「…どういうこと?」
まぁ人間にはそういうところがあるってことだ。
たとえば学園祭ってあるだろ。
ああいうのはよく準備期間が一番楽しいって言ってな。
お祭りのための準備を、仲間と大騒ぎしながら一生懸命やってるあいだは充実してるんだけど、いざ当日となるとあっという間に終わっちゃって、なにかさみしいような気持ちになる。
でもその一連の動作も全部ひっくるめて『楽しかった』でくくれちまうから面白いんだけどな。
「少しわかる気がする」
ほう?
「この館であなたたちと過ごす時間を私は楽しいと感じている。
この時間が終わってほしくないとも。
だからレコーディングの日が来てほしくないと思うはずなのに、その日が来るのを楽しみにしている私もいる。
どちらも私の正直な気持ち」
…今回は長門に驚かされっぱなしだな。
感情表現が苦手だなんて、こいつは誰よりも正直に自分の心を表現できてるじゃないか。
それに、最近はよくしゃべるようになってきた。
情報統合思念体よ、これがお前らの求める自律進化とやらじゃないのか?
「長門」
「なに」
「レコーディング、成功させような」
「…もちろん」
長門もハルヒと同じだ、いつでも本気でストレート。
ハルヒと違うのは、口数が多くない分一言一言に重みがある。
ハルヒがマシンガンだとすれば長門はマグナム。
一発で心を射抜いてくる。
やっぱりそうなんだろう。
俺は長門が好きなんだ。
ただ、この気持ちをどう伝えるかなんだが…
「長門」
「なに」
「そろそろ古泉が様子を見にくる時間だから俺はあがるな」
ヘタレだと言わば言え。
なに、時間はあるんだからさ。
「わかった、私もあがる」
みんなもわかると思うが、
「な〜に時間ならまだある」
なんて悠長なことを思っていたせいで後になって焦ることになるなんていうのは、何事においてもありきたりなことであり。
俺も人生において何度も経験している癖に、ついぞ学習できずにのうのうといきている。
この数日後、俺はまたも同じことを思うことになる。
できるときにできることはやっておくべきだと。
その時が来るまでの時間経過は、次の章でご覧にいれよう。