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作者 | いつまでも新米 |
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作品名 | イメージソング・フロム・SOS団第四章:6 |
カテゴリー | 長門SS(一般) |
保管日 | 2011-01-31 (月) 11:00:39 |
キョン | 登場 |
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キョンの妹 | 登場 |
ハルヒ | 登場 |
みくる | 登場 |
古泉一樹 | 登場 |
鶴屋さん | 登場 |
朝倉涼子 | 登場 |
喜緑江美里 | 登場 |
周防九曜 | 不登場 |
思念体 | 不登場 |
天蓋領域 | 不登場 |
阪中 | 不登場 |
谷口 | 不登場 |
ミヨキチ | 不登場 |
佐々木 | 不登場 |
橘京子 | 不登場 |
再びスタジオに集められた俺たちに向かって、超敏腕プロデューサー殿が熱弁をふるいはじめた。
「さっきキョンの分まで歌詞チェックが終わったから一通り済んだことになるけど、誰か大幅な変更したい人はいる?
語尾とかちょっとした言い回しくらいな断らないで変えちゃっていいわよ」
みんな一様に首を振る。
やっぱりそれなりにきちんと練ったものな。
ハルヒプロデューサーは満足そうに頷くと、
「じゃあいよいよ歌の練習ね!
ここにそれぞれの歌のメロディー部分だけ録音したMP3プレーヤーがあるから、自分の歌詞を当てはめながら歌ってみて。
さっきも言ったけど、うまくはまらないとことかあったら変えちゃっていいから。
ただし、歌詞全体のバランスは崩さないようにね」
おう。
「了解した」
「承知しました」
「わかりましたぁ」
みんなの返事を確認したハルヒは、
「じゃ、あたしは伴奏とか諸々を作り込むから!
圭一さん、手伝いお願い」
「あぁ、任せてくれ」
と言ってスタジオの奥へ消えていった。
おい、古泉。
「何でしょう」
機関の人間てのは、作曲もできるのか?
「いえ、確かに今回の為に勉強していただいたのも確かですが、圭一さんの趣味が音楽活動というのは本当で、作曲の心得も元から少々あったようです」
なるほど、スタジオの機材をいじったりハルヒの曲を聞いたりしてる時に妙に嬉しそうだったのはそういうわけだったのか。
「じゃあ曲の方は涼宮さんに任せて、僕らはそれぞれのすべきことをしましょう」
そうだな。
部屋に戻った俺たちは早速自分に与えられた曲を聞き始めた。
メトロノームの合図で始まるメロディー。
ハルヒがキーボードで弾いたものの録音のようだ。
どうやら初日に聞かされた時より完成されており、改めてハルヒの才能に舌を巻く思いである。
思わずステップを踏みたくなってしまうほど軽快なこの曲を俺はいたく気に入った。
「いつもながら涼宮さんは素晴らしいですね。
なぜメロディーのみでこれだけ人を唸らせるものを作り出せるのでしょうか」
古泉は心底感心したような声を出す。
「ハルヒだからだろ」
「そうでした。
なんだかいつもと立場が逆になってしまいましたね」
そういって苦笑する。
「その感じだと、お前の方も気に入ったみたいだな」
「はい、もちろんです。
音域もピッタリで、曲風も僕の好きな感じになっています。
やはり涼宮さんは団員のことをよくわかってらっしゃる」
そーだな。
あ、そうだ。
「なんです?」
お前さっき、『ハルヒに生じた良い変化』を午後にでも話すって言ってたけど、そりゃなんだ?
思いの外予定が早く進んだからまだ午前中だが、折角だから話しちまえよ。
「…そうですね。
わかりました。
聞いていただけますか?」
しばしの間黙って考えていた古泉が口を開いた。
「僕らのバイトの頻度がここのところ一時期より更に減ってきているのはご存知ですね?」
あぁ、春先に一度頻発したらしいが、以降は殆ど出てないんだろ?
「えぇ、これは偏にあなたのお陰だったんです。
今までは」
今までは?
「はい、確かに今でもあなたは涼宮さんの『鍵』であり、あなたの行動次第で閉鎖空間を生み出すのも〈神人〉を暴れさせるのも左右されます。
ただし、我々は最近〈神人〉の状態から、ある仮説を立てました」
古泉が長い人差し指をピンと立てながら話を続ける。
「あなたも見たように〈神人〉の存在目的は閉鎖空間内での破壊活動によるストレスの発散です」
俺の脳裏には、あの灰色空間で暴れまわる青白い発光巨人が浮かんでいる。
「ですが、春先の事件以降に出現した閉鎖空間内の〈神人〉は自らの破壊衝動を抑えようとしているように思われました。
拳を振り上げ、叩きつけようとするも途中で留め、首を振るかのような仕草をして、静かに立ち尽くす。
また、近くで涼宮さんを観察していることで気づいたんですが、以前の涼宮さんなら間違いなく閉鎖空間を生み出していたであろう出来事があってもそれが起きない。
どころか、実際に不機嫌を表にだすことすら減ってきました。
以上のことを踏まえて、我々の立てた仮説とは…」
ハルヒが少し大人になった?
古泉が驚いたような顔をしている。
「気づいてらしたんですか?」
おいおい。
「アイツが不機嫌になって真っ先に被害を被るのは俺なんだぞ。
さすがに気付くわ」
「そうですか…。
それもそうですね」
長広舌の末にオチを俺にとられたからか、少し残念そうだ。
「実は俺も感じてたんだ。
あまりに多いんでいちいちあげたりはしないが、
今までだったら理不尽に蹴りが飛んできたようなことなのに『しょうがないわね』で済ませたりとかな。
極めつけはさっきの歌詞チェックの時だ」
「何かあったんですか?」
「あぁ、詳しいことはプライベートに関わるから今は明かせんが、俺の言葉への対応がまさに大人って感じだった」
古泉は少し考え込む素振りを見せたが、やおら発言した。
「そのことについては、いずれ話せる時がきたらお聞きします。
ですが、あなたの話を聞いて我々の仮説に確信が持てましたね」
やっぱり良いことなんだろ?
「えぇ、もちろん」
ハルヒの力はどうなるんだ?
「もちろん未だ健在ですよ。
力がなくなれば我々にはわかるはずですから。
そうですね、一時期の力の変動もなくなり安定しています。
我々は、涼宮さんが無意識下で能力をコントロールする術を学んだんだと考えています。
我々とあなたの考えが正しければ、恐らく、これまでのように涼宮さんの力の発現に戦々恐々とすることもなくなるでしょう。
…完全に安心することもできませんが」
ま、俺たちSOS団は変わらずにアイツと接し続ければいいんだろ?
「そういうことです。
…ですが、注意してください。
僕ら機関の目的は現状維持。
朝比奈さん達未来人の目的は自分たちの未来を守ること。
長門さん達情報統合思念体の目的は自律進化の鍵を探すこと。
涼宮さんの力の安定は、僕たち機関と朝比奈さん達未来人にとっては喜ばしいことであり。
長門さんたち情報統合思念体も、人間の感情と情報の関係に進化の鍵がありそうだと研究を進めようとしていると聞きます。
僕たちSOS団に一番近い三つの派閥の目的達成には近づいているとはいえ、涼宮さんの力に注目している組織は他にもいる。
その中には、涼宮さんの力が安定するのを面白く思わないものもあるはずです。
折角涼宮さんの力が安定してきたという嬉しいニュースの後になんですが」
油断はできない…ってことか。
「残念ながら。
でも、あんまり気にしないでください。
我々機関と情報統合思念体のTFEIは涼宮さんやあなたのことを守るために動いてくれますから」
「それは信頼してるさ」
「あなたからそこまでの信頼を勝ち取れたなら、僕のアルバイトも無駄ではなかったようですね」
けっ、言ってろ。
話は終わった、とばかりに俺はイヤホンを耳に突っ込みメロディーを覚えるべく奮闘を開始した。