作品

概要

作者いつまでも新米
作品名イメージソング・フロム・SOS団第二章:3
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2011-01-31 (月) 09:30:56

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木登場
橘京子不登場

SS

 

 特訓とはいっても、どこぞから取り出したカラオケセットのマイクを長門が握りしめ、知ってる曲を片っ端から入れて歌っていくのを俺が聞く、という単純明快な方式を淡々と繰り返すだけだ。

 

 長門の歌声はと言えば…まぁ声は綺麗だし音程には正確なんだが…うーむ、どうしたもんかね。

 

 表情込みで聞けば、俺ならかなり感情が込められていると判断できるが、
 声だけでは難しいな。
「自分の声とメロディーだけで感情を表現するのは難しい」
 と言った長門は悲しそうに俯いてしまった。
 悲しそうな人間(だれがなんと言おうと長門は人間だ)と二人きりというのはとても息がつまる。

 

 打開策を求め俺の脳が普段の三倍のスピードで回転したところ、妙案を思い付いた。

 

 つい先日街をうろついていた所、中学時代の友人に出会い、近況報告なんかをした。
 そいつは高校生になってから突然吹奏楽部に入ったというヤツで、変わってんな、と思ったら大して珍しいことではないのだと。
 話を戻そう。
 そいつ曰わく、
「オレは歌うのが好きだったんだけど、あんまうまくなくてな、それは知ってんだろ?
 でも部活入ってうまくなったぜ〜。
 やっぱりコツだな、コツ。
 感情ののせ方とかもなんとなくわかるようになったしな〜。
 つ〜ことで今度カラオケ行かねーか?
 あ、でもSOS団だっけ?が忙しいのか〜」
 だそうだ。
 ヤツがSOS団を知っているということに関しては釈然としないものがあるが、やはり知ってる人に聞くのが一番だな。

 

 ハルヒに聞いてもいいんだが、高確率で
「仕方ないわね、バカキョンの為に特訓ね」
 となるであろうので却下だ。
 本当はクラスの合唱部のヤツのアドレスでもしってりゃ早かったのにな。

 

 ということで、長門に
「なんとかなるかもしれんぞ」
 と声をかけ、早速ヤツにメールした。

 

 to:××××
 title:突然すまん
 ――――――
 お前、こないだ上手に歌うコツを覚えたとか言ってたよな?
 それを教えてくれないか?
 できれば感情をのせて歌うコツを。
 頼む。

 

 ――――――

 

 どうやら暇らしく、ものの十分程度で返事がきた。

 

 to:キョン
 title:Re:突然すまん
 ――――――
 確かに突然だな笑
 合コンでモテる必要でもできたか?
 ま、お前なら違うだろうが。

 

 うまく歌うコツは自分の音域にあった歌を選ぶこと。
 感情をのせるコツは、共感できる歌詞を選んで、その歌詞の登場人物になりきることだな。あ、声質が似てる人を選ぶとなおいいぞ。

 

 後はそーだな、歌い方を真似ること。
 歌手は当然感情込めて歌ってるから、その声の出し方を真似ると、意外にどんな感情で歌ってるか分かるかもよ。

 

 音程がとれないなら音楽教室にでも行きな笑

 

 つーかお前ならこのぐらいの理屈を思い付きそうなもんだがな〜。

 

 ――――――

 

 なるほど。
 言われてみればそーだな。

 

 俺はお礼の返信をし、長門にメールを見せた。
 実はさっきから長門の歌声を聞いていて
「この歌手の歌をうたってみて欲しい」と思っていた歌手がいたのだ。

 

 長門の透明感あふれる涼やかな声にあいそうな。

 

 長門にそのことを伝えると、その歌手の歌から共感できそうな歌詞を探し始めた。

 

 程なく何曲か選びだした長門はさらにじっくりと歌詞を眺める。
 さらに気に入った曲をネットのダウンロードサイト(もちろん合法的なものだぞ)で入手して聞きながら時々目をつむって歌詞の一部分を呟いている。

 

 俺は静かにまっていた。

 

 時間にして二十分くらいであろうか、歌詞に浸っていた長門はおもむろに立ち上がるとマイクを手に取り、件の曲をセット、歌い始めた。

 

 奇跡というものはしばしば起きることになっているらしい。
 なぜかって?
 俺の前に天使様が降臨なさってるからさ。
 心苦しくもわが心のエンジェル朝比奈さんですら全く太刀打ちできないレベルの天使が俺の前で歌っている。
 歌詞は切ない歌なのだが、長門の涼やかな声がその切なさをクリアに浮き立たせている。
 俺の細胞一つ一つを震わせ心を締め付けていく。
 部屋全体が青の光に包まれているかのような錯覚に陥り、俺は息をするのも忘れて長門の歌う姿に見惚れていた。

 

 いつの間にか歌い終わっていたらしく、長門が評価をまっているかのような顔でこちらを見ている。
「な、長門」
「どう?」
「何と言っていいか…。
 表現できない、スマン」
「………そう」
 しまった、悲しそうな顔だ!
「違う違う!良くなかったってことじゃない。
 良すぎてどうにかなりそうだった」
「…そう」
「おそらく観客が何万人いたとしても長門に釘付けになるんじゃないかってくらい良かった。
 スマン、俺にはこれ以上の表現ができん」
「そう」
 心なしか嬉しそうだ。
 良かった。
「これなら歌のほうは大丈夫そうだな」
「大丈夫。
 あなたのおかげ」
「礼なら俺の友達に言ってくれ、俺は何もしていない」
 長門は首を振る。
「私があの女性歌手の歌に出会えたのはあなたが選んでくれたから。
 彼には感謝しているが、あなたにも感謝を」
「そうか」
「そう」

 

 いまだにあの歌っていた長門の姿がちらついてドキドキしている俺だが、時計をみて焦った。
「やべ、もう十時を過ぎてるじゃないか。
 長門、スマン、俺帰るよ。
 また明日な!」
「そう、また明日」

 

 慌てて身支度を整えると長門のマンションを飛び出た俺は帰宅の一途を辿った。
 道中あの長門の姿がちらついてボンヤリしてしまったりしたが、なんとか家にたどり着いた俺は、
「なんだ、泊まってくるかと思ったのに、この根性なし」
 という訳の分からん罵声を浴び、上の空のまま風呂に入り、そのまま寝た。

 
 

 しかし、
 俺は夢の中でも長門が歌っている姿をずーっと眺めていたのだ。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:48 (2711d)