作品

概要

作者いつまでも新米
作品名イメージソング・フロム・SOS団第二章:2
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2011-01-31 (月) 09:23:57

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木登場
橘京子不登場

SS

 

程なくして長門のマンションについた俺たちは、もう幾度となく訪れた長門の住居である708号室に足を踏み入れた。

 

 ついでに言うと、春先の事件以降、俺はちょくちょくこの部屋に来ている。
 別に他意はないぞ。

 

 相変わらず何もない…と思うかもしれないが、それは素人(何のだ?)の考えだ。
 これでも初めて来た時より物が増えている。
 一番目に付くのは本だが、朝比奈さんに影響されたのかティーセットなんかが増えているのも俺は見逃さない。

 

 つーか目の前でそのティーセットを使ってお茶を入れてもらってるのに気がつかないヤツがいれば、それはそいつがおかしい。

 

「それ、今までなかったヤツだよな?
 どうしたんだ?」
「朝比奈みくるに選んでもらった。」
 なんと!朝比奈さんの影響とは思ったがまさかそこまでとは。
 一瞬驚きで動きの止まった俺に、説明の必要ありと思ったらしく、長門が口を開く。

 

「ここしばらくそれなりの頻度であなたが私の家に来るため、何か来客用のもてなしが必要と考えた。
 来客の際は飲料、とくに温かいお茶の類を出すのが通常らしい。」
 俺は初めてこの部屋に来たときに飲まされたお茶を思い出した。
「私の周りで一番その類のことに詳しそうなのが朝比奈みくる。
 故に手助けを求めた」
 へぇ〜、あの朝比奈さんがねぇ。
 確かに思わぬ所で先輩スキルを発揮なさるからな、あの方は。
「紅茶の淹れ方も教わった。
 どう?」
 どれどれ。
 ズズッ…。
 お、うまいぞ!
 部室で頂けるクオリティと同じものが飲めるなんて思わなかったぞ、長門。
「そう」
 あ、少し嬉しそうな顔をしている。
 この表情がたまらんのだよな…って、ハッいかんいかん、また思考があらぬ方向に、って長門?
 どうした?表情が少し暗いぞ。
 こんなにコロコロ表情を変える長門も珍しいな。

 

「でも、違う」
 違うって?
 茶葉の種類、量、器具、湯の温度、量、注ぎ方、飲むタイミング。
 全て同じなのにどこか違う。
 私にはわからない」
 どういうことだ?
「朝比奈みくるには『気持ちを込めたかどうかでは』と言われた」
 ア、アバウトな。
 しかし正鵠を射た答えかもしれんぞ、それは。

 

「私にはわからない」
 うーん、それは困ったな。
 「朝比奈みくるもそう言って困らせてしまった」
 そりゃそうだろう、気持ちなんてのは目に見えないから感じるしか…。
「違う」
 ん?
「そこに込められた気持ちを感じることはできる」
 じゃあ、何だ?
「私にわからないのは気持ちの込め方」
 なんと!
「私が今淹れた紅茶にも気持ちを入れてみようと思ったが、わからなかった」
 それ、朝比奈さんにも言ったか?
「言った。
 ますます困らせてしまった。」

 

 うーん、気持ちを入れるってのはおそらくアレだよな。
 おいしくなーれ。
 とかいうことだよな。
「参考までに聞くが、お前の気持ちを込めるってどんな感じでやってみたんだ?」
「あなたに飲んで欲しい。
 あなたに美味しいといって欲しい」
 う、直球だな、面と向かって言われるとテレるぞ。
 えぇい余計なことは考えるな。
「じゃあそれは朝比奈さんに?」
「言った。
 それが心を込めるということだと言われたが、私が理解できていないとみると沈黙してしまった」
 なるほどな。
 朝比奈さんのことだ、長門にわかりやすく説明しようと焦ってこんがらがってしまったんだろう。

 

 ま、説明は難しいが答えは単純だ。
 うまくできるかわからんがやってみるか。
 意気消沈といった面もちでうなだれている長門に俺はこんな声をかけた。
「長門、気持ちを込めるってヤツだがな、朝比奈さんの言うとおりお前にはできてるぞ」
「………?」
「ただお前は難しく考えすぎなんだ。
 確かに気持ちは目に見えるもんじゃないし、入れた所で成分が変わるわけじゃない。
 だけど、こうして入れてもらった人間にはなんとなく感じることはできる。
 さっきの『部室と同じクオリティ』ってのは気持ちも込みでの話なんだぜ」
「でも私は朝比奈みくるではない」
「もちろんそうさ。
 残念ながら、誰の気持ちが入ってるかなんてことをきっちり判別できるヤツなんざいないからな。
 『俺のためにいれてくれたんだ』っていう受け取る側の勝手な思い込みにすぎないかもしれんが、渡す側の『あなたのために』と受け取る側の『自分のために』が合わさることが気持ちが通じ合うってことで…ん?
 何がいいたいのかよくわからなくなっちまったが、要はさっきお前にお茶をいれてもらった時、俺は『俺のためにいれてくれたんだ』って思って気持ちがあったかくなったんだから、お前の気持ちはきちんと伝わってるぞ。
 多分、お前の気持ちの入れ方がわからないというのは、伝わってるか自信がないからそう感じるんだ。
 大丈夫、伝わってるから自信もてよ」

 

 さぁ、うまく説明できたか自信はないが、どうだ。

 

「…少しわかった気がする」
 お、やったか。
「理解を深めたいのであなたにお茶を淹れて欲しい」
 な、なに!?
「あなたは私が淹れた紅茶をのんで心が暖かくなったといった。
 私があなたに淹れてもらった紅茶をのんで同じように心が暖かくなったと感じれば私は気持ちを入れるということを理解できると思う」
 うーむ、わかったようなわからないような理屈だが、お前にそんな目で見つめられちゃしょうがないな。
 わかったから、淹れてやるからその有無を言わせない目をやめなさい。
「そう」
 ただ、頑張りはするが、味そのものは期待するなよ。
 お前や朝比奈さんのようには淹れられんからな。
「かまわない。
 美味しいお茶をいれるのにはかなり練習が必要」
 なんと!
 本日何度目のビックリだ?
 あの長門が美味しいお茶の淹れ方を練習していたなんて。
 これは俺も本腰いれて淹れねばなるまい。

 

 詳しい手順については省こう。
 俺の知識といえば、沸騰した状態よりも少し冷ましてからの方がいいらしいといううろ覚えのものだけだからな。
 ただ一心に『なるべくうまいお茶になってくれ』と祈るのみだ。

 

 とにかく、長門家の台所を借りて淹れたお茶をもってリビングに戻り、長門に差し出してみる。

 

 長門、飲む。

 

 お茶とは言え自分の用意したものを誰かに評価してもらうというのは緊張するな、などと思っていると、長門がカップを置いてこちらをジッと見つめてきた。
 ど、どうだ?
「予想以上」
 予想以上になんだ?
 まずかったか?
「美味しい。」
 そ、そーかそーか、ふぅ。
 それで、気持ちは伝わったか?
「あなたが私のために淹れてくれた紅茶。
 そう思ったらわずかに心拍数があがり、呼吸の際に少し圧迫感を覚えたが不快ではない。
 むしろ深く呼吸することで安堵感に似た快感を得た」
 ってことは…。
「多分、伝わった。
 と思う」
 そーか、良かった。

 

 ん?
 そーいえば俺は相談があるって言われてここに来たはずだが、コレか?
「違う。
 けどほとんど同じ」
 また難しそうだな。
 まぁいい、乗りかかった船だ、言ってみろ。

 

「心を込めて歌を歌うとはどういうこと?」む?
「私は感情の表現が極めて希薄。
 喜びも悲しみも怒りもあなたやSOS団以外の人に気づいてもらうのが困難。
 そもそも私自身あなたに教えてもらうまでこの身体の内部にたまるエラーが感情だということを理解できなかった。
 今では、単に視界にはいるものなどの情報以外に人間がいう『綺麗』や『かわいい』と感じるそれが感情だと思っている」
 その通りだな。
「私を良く知る人間であれば、先程の紅茶のように私の感情を汲み取ってくれるかもしれないが、そうでなければ私の心を感じるの難しいと思われる」
 うーん、確かにそうかもな。
 俺たちSOS団以外で長門の感情を汲み取れるヤツと言われるとちょっと心当たりは浮かばない。
 他のヒューマノイドインターフェースならわかるのかもしれんが大多数の地球人にはわからんだろう。
「未来との同期を不能にし、あなたたちとより深く関わることである程度感情を理解し始めたからこそ、以前バンドで涼宮ハルヒに『何か世の中に訴えたいこととかないのか』と言われた意味が理解できる。
 あの時の私の歌声は無機質。
 感情の感じられない機械的な声。」
 あぁ、アレはなんていうか変な感じだったな。
 初めから機械が歌ってんならまだしも目の前の長門が歌ってんのに口パクしてるかのような、妙に現実感のない歌声だった。
 そうか、だからハルヒが歌を作るって言った時に反応が鈍かったんだな?
「そう。
 このままではまた涼宮ハルヒに同じことを言われることになる。
 そこで修正ができなければ最悪の場合涼宮ハルヒの機嫌を損ね…」
 あの胸くそ悪い空間がでるってわけか。
「それは望ましいことではない。
 それに、何より」
 どうした?
「私にも感情があると、無機質な人形ではないと知ってもらいたい」

 

 …やれやれ。
 俺の驚きメーターはとっくの昔に振り切れてるんだがね。
 長門がここまで感情を表すなんてことはあっただろうか。
 もちろん俺たちSOS団は長門が人形なんかじゃなくとても強い意志を秘めたヤツだって知ってる。
 つまり長門は、少しでも人間を理解し、俺たち以外の人間ともうまく付き合えるようになろうという段階に入ったわけだ。

 

 クラスで長門が孤立してるわけではないのは知っているが、それは見る限り受動的なものだ。
 長門はそれを少しでも能動的なものに変えようとしている。

 

 そして長門は俺に協力を求めた。
 断る理由は?
 あるわけない。

 

「わかったよ、長門。
 俺にできることなら協力する。
 で、どうしたいんだ?」
 長門の顔が嬉しそうにほころんだ…気がする。
 実際はミリ単位で頬が緩んだり、視線の温度が上がっただけだが、こうしてみるとやっぱり整った顔立ちをしている。
 なぁ、谷口、やっぱり長門はAマイナーなんかじゃないぜ。
 俺の見立てじゃもう少し…ってまた俺は思考があらぬ方へ。

 

「ありがとう。
 では説明する」
「っとその前に」
 と俺は長門を制した。
 もうすぐ七時になる。
 遅くなるようなら我が家へ連絡を入れなくてはならん。
 俺がその旨を伝えると
「そう。
 なら夕ご飯は食べていって」
 と言われたので早速お袋に電話を入れる。

 

 長門が俺に相談したいことがあるというので夕飯をいただきながら話を聞くという主旨のことを言うと、
 始めは連絡が遅いとかぶつくさ言ってたお袋の声が弾みだし、
「いつウチには連れてくるの」
 などと言い出したので適当な返事をして切った。

 

 どうやら長門は俺の家に行きたいらしいので、その内連れてってやるとは言ったがな。
 全くお袋は何か勘違いしてるとしか思えん、俺ごときが相手にされるわけないだろう。
 それにお互いが良くてもハルヒが…ってアレ?また思考があらぬ方へ飛んでたが、自分の気持ち云々でなくハルヒや長門のせいにしてる辺り俺は長門が彼女になったら嬉しいのか?

 

 まぁ嬉しいだろうな。
 そりゃあ美少女で頭が良くて運動ができるとなりゃ自慢の彼女になるだろう。
 いやいやそうじゃなくて好きかどうかで言えば…
 恋愛感情なんてものは俺にはわからんから…
 こんなことを考えるなんて今日の俺は疲れてるな。
 多分さっきの長門の難しい話に答えようと頑張ったからだろう、うん、そうに違いない。

 

 なんて考えてたら長門謹製の夕飯が現れた。
 え?メニュー?
 聞くだけ野暮だろ。

 

 飯を食い終わって人心地ついた俺は、長門に俺のすべきことを聞いた。
「で、どうするんだ?
 生憎と俺は歌がうまくないし、心をこめて歌うってのも得意じゃないんだが」
「私がここで歌うのを聞いていて欲しい。
 朝比奈みくるのような一生懸命さでも伝わったら教えて欲しい」
「わかった。
 だがマンションで歌っても大丈夫なのか?」
「問題ない。
 情報操作で音がもれないようにするから」

 

 そして、俺たちの特訓が始まった。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:48 (2711d)