作品

概要

作者いつまでも新米
作品名純情と信頼と覚悟
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2011-01-26 (水) 16:25:41

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「これ、貸すから」
もう何度目になるだろうか、長門のこのセリフを聞くのは。
「おう、サンキュ」
俺も迷いなく受け取る。
俺の読書力のほどをよくわかっている長門は、無闇に難しい本を勧めてきたりしない。
長門が貸してくれる本はいつもその時の俺の気分にぴったりで、感想文の一つも書きたくなるような気分にさせてくれる。
学校の先生も、
「本を読みなさい!」
と課題図書のリストを突き付け頭ごなしに言うのではなく、こういう能力があれば子供は自然と読書をするようになるのではないかと思われるが、
実はこのやり取りには重要な意味がある。

 

中身を確かめるようにぺらぺらとめくるとちょうど中ほどのページにしおりがはさんである。
『本日も私の家に来るならば、背表紙を二回、そうでないならば四回叩いて』
もちろん俺の返事は二回にきまってる。

 

長門にわかるように右手の人差指で背表紙を二回。
それを確認した長門は、俺にだけわかるように頬を緩める。

 

こんなまどろっこしいやり方をしてるのは、ハルヒにばれたらまずいという配慮のほかにもう一つ理由がある。

 

実は俺たちは正式に付き合っているわけじゃないのだ。
お互いの気持ちは知っているのだが、それを告げたことはない。
ただ、何となく一緒にいる時間が増え始めた二年の六月。
ふと長門のクラスメートに言われた「お似合いのカップル」という言葉。
ハルヒに関しては同じことを言われてもやれやれという感情のほかはないのだが、
長門との関係をそう評されたとき、激しい焦りとそれを否定したくないという感情が現れたのだ。

 

その時俺は気づいた。

 

あぁ、俺は長門が好きなんだ。

 

だが、長門は俺をどう思っているのか。
その疑問はすぐに答えが明らかになった。
俺たちをカップルと評したのとは別のクラスメートに呼び出され、
「涼宮さんと二股かける気なら許さない」
と問い詰められたときに、俺を問い詰めてきた女生徒のもらした発言で明らかになったのだ。

 

後は簡単で今まで以上に一緒にいるようになった俺たちだったが、どうしても「好きだ」の一言が出ない。
「ほとんど付き合ってるも同然の関係でなにをぬかす、このヘタレ」
とこれをお読みの読者諸兄はお思いになるだろうが、俺も長門も自分の正直な胸の内を明かすことにはひどくシャイで臆病なのだ。

 

「もしかしたら夢かもしれない」
「口に出した途端にすべて消えてしまうかもしれない」
そんな思いが、片一方が思いを告げようとするともう片方が話題をそらすといった具合に問題を先送りにし、
『ただ一緒にいるだけ』
の関係から一歩も進まないままだった。

 

だからお互い積極的になりきれず、しおりと合図だけの秘密の関係なのだ。

 

七夕が近いせいか、ハルヒの機嫌も悪いように感じられ、俺も頭の痛い日々が続いていた。

 

ところが古泉に
「バイト大変じゃないか?」
と聞くと、
「いえ、出るには出るんですが、様子がおかしいんですよ。
何というか、破壊衝動を抑えようとしているというか、じれったい、もやもやする。
そんな感じです。
佐々木さんの時のようにどうしていいか分からずぼんやりしているのとも違いますし…。
出る以上倒しはしますが、頻度も多くないですし、なにより暴れないので、そう大変ではありませんね」
妙な話だが、あの化け物がおとなしいならいいことだな。

 

ハルヒの化け物同様もやもやした気持ちを抱えたまま、俺は七夕を迎えた。

 

例によって例のごとく竹を携えて現れたハルヒは、団長机の向こうに仁王立ちになり
「今年も願い事をするわよ!
それも、今年は超個人的な超小さい夢をかなえてもらうの!」
と叫んだ。
「なんだそりゃ、なんで小さな願いなんだよ」
「とっても小さな願いなら、何度もかなえてもらえるかもしれないじゃない!
それに、あたしは去年大きすぎる願い事しちゃったからね〜。
神様も大変じゃないかと思うわけよ」
こいつに遠慮の精神があったとは驚きだな。
…遠慮のベクトルがおかしい気もするが。
「でも、その前に…キョンと有希!
こっち、団長机の前に並びなさい。」
…なぜだ?
「いいから!」
長門とセットということに心当たりバリバリありな俺は内心動揺しまくりながらハルヒの前に立った。
ただならぬ様子に朝比奈さんは顔を青くしがたがた震えながら、古泉はスマイルをややこわばらせながらことの成行きを見守っている。
…携帯がなったらスマン、古泉。

 

「あんたたち、あたしに言わなきゃいけないことがあるわよね?」
なんのことやら…
「とぼけるな!」
叫ぶな、耳が痛い。
「あんたら、しょっちゅう一緒にいるでしょ?
それはなぜかしら?」
そんなのは俺たちの勝手だろ。
「そうね、ただの友達ならね。
でもこれが男女交際となると話は別よ」
なに?
「SOS団は恋愛禁止だってずーーーっと言ってきたわよね?
あんたたちの関係はその禁を犯すものではないかということよ」
「涼宮さん、あ」
「古泉くんは黙ってて!
で、どうなの?」
そ、それは…
「やっぱりあんたたちは、」
「彼と私はそのような関係ではない」
な、長門!?
「恋愛関係とは、異性がお互いの好意を告げあって成立するものであるなら私たちはそのような関係ではない」
「それは本当?」
「…そう」
「キョン、どうなの?」
確かに好意を告げあってはいないが…
「私と彼が一緒にいることが余計な不信感をよんだなら謝罪する。
そして彼に近づかないようにする」
そんなの納得できるか!
「おい、長…」
「うっさいキョン!
そう、有希、わかったわ。
じゃあ一つ聞かせて」
「…なに」
「なんで嘘を言うの?」
…なに?
「なんで付き合ってるくせに付き合ってないなんて言うの?
なんで、好き合ってるくせにそれを隠すの?
なんであたしに隠れてコソコソしてたの?」
「…それは」
「あたしが認めないとでも思った?
有希とキョンが、真剣に相手のことを好きだと思ったとして、それをあたしが不快に思うなんて思った?
ふざけんじゃないわよ!」
ハ、ハルヒ?
「認めないわけないじゃない!
確かにSOS団は恋愛禁止よ。
だけど、本当にあんたたちの心を踏みにじったままであたしがいられるわけないじゃない!
団長に相談とか報告とかしなさいよ!
よしんばあたしが血迷って認めないって言ったとして、それですむほどあんたらの関係は軽いもんなの!?」
「…そんなことない」
「だったら、もっと堂々としてなさいよ。
…悔しいじゃない、信用されてないみたいで。
団員の恋愛を認められないような器のせまい団長のもとになんかつく必要ないんだから。
もちろんあたしは器の大きな団長だから、二人の仲を太鼓判してあげるけどね!」
ハルヒ…スマンありがとう。
「仲を取り持ったわけでもないのに礼を言われるなんて変な感じね。
で、二人はどこまで行ったの?
キスぐらいはした?」
…そのことなんだがな、ハルヒ。
「まさか…いやらしいことしたんじゃないでしょうね、このエロキョン!」
「えぇっ!」
してません!天地神明にかけてしてません!
だからそんな顔しないでください朝比奈さん。
「告白も終えていないというのは本当」
「え?うそでしょ?
じゃあなんで…」
「いや、なんつーか、自然にっていうかなんていうか…」
「はぁ!?信じらんないこの甲斐性なし!
有希もなんで言わないのよ!」
「その、なんていうか」
「…恥ずかしい」
長門も気持ち顔を赤らめている。
「どんだけプラトニックなのよ。
じゃあ良いわ、キョン、ここで有希に告白しなさい」
いぃっ!?
「なんでそーなる!」
「良いからやんなさいよ。
ここで逃げたらあんた一生有希に正面から気持ちをぶつけられなくなるわよ。
今、言うしかない状況まで追い込んでやってるんじゃない」
確かにそうかもしれんが…
「頑張ってください、キョンくん」
「応援してます」
えぇい、朝比奈さんのエールすら、いまの俺には羞恥心を倍増させる効果しかない!
それと、こっちを見るな古泉!
「ほら、ぐずぐずしない!」
えぇーい、やってやるさ!
「な…長門…そ、その…す、好きだ…」
「かぁー、『有希、愛してる』って抱きしめるぐらいやって見せなさいよ」
スマン、いっぱいいっぱいだ。
「…私も」
ん?
「私も、大好き」
…おう。

 

「やっと、終わったかぁ。
もうあんたらのしおりの受け渡しとか知らんぷり大変だったんだからね」
し、知ってたのか…
「うかつ」
「まぁ丸く収まってよかったわ。
キョン、有希を悲しませるような真似したら、裁判抜きで死刑だからね!
ふぅ、あたし、ずっと大声出してたら喉乾いたから水飲んでくるわ」
といってハルヒは部室を出て行った。
「一時はどうなるかと思いましたが、僕らは涼宮さんを見くびっていたのかもしれませんね」
あぁ。

 

――――――――――――――――

 

キョンくんたちが話してる間に抜けてきちゃいましたけど、しょうがないですよね。
だって…
「みくるちゃん?」
涼宮さんのホントの気持ちをわかってた人は、あのなかじゃ私しかいませんもの。
「よくがんばりましたね、涼宮さん」
「なに、言ってんのよ、あたしが何を…」
「涼宮さん」
あたしは、涼宮さんを抱きしめちゃいました。
「あたし、わかってますから。
今は泣いちゃっていいですよ」
「みくるちゃん…あたし、あたし…」
泣きじゃくる涼宮さんを慰めながら、あたしは思いました。
そう、涼宮さんだってキョンくんのことが好きなんです。
だけど、自分の好きな人だからこそきちんと選択をして欲しかった。
そして、キョンくんの選択した結果を受け入れたんです。
あの時、古泉くんは少なくとも涼宮さんがキョンくんを好きなことを知っていました。
けど、あの涼宮さんの演技にすっかり騙されてしまったみたいですね。
キョンくんは鈍いし。
ふふ、やっぱり女の子の気持ちは、女の子にしかわかりませんよね。
さぁ、涼宮さん、いっぱい泣いて、次の恋をみつけましょ!
そして長門さん、お幸せに。

 

――――――――――――――――

 

そのあとのことを少しだけ話そう。
「二人の仲は認めたけど、SOS団の活動をおろそかにしてもらっちゃ困るわ。
休みはあげるから、団には所属し続けなさい」
という団長閣下のお言葉により、晴れて恋仲となった俺たちは、『しょっちゅう』一緒にいる仲から『四六時中』一緒にいる仲に昇格した。
休みの日はたいていこうして長門の家で寄り添って本を読んでいる。
谷口あたりが聞いたら
「なんじゃそりゃぁ!」
と言いそうなプラトニックな関係だが、告白にもあれだけ時間がかかったんだ、のんびりやるさ。
その、キ、キスぐらいならしたしな。
ん?どうした、長門。
「………」
長門は大きく綺麗な瞳を閉じると唇をうすく開け、軽く突き出してきた。
俺も目をつむりゆっくりと唇を重ねる。

 

好きだ、長門。
「…大好き」

 

え?感触はって?
そいつは『禁則事項』だな。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:47 (3093d)