作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんの看病
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2010-04-04 (日) 22:13:52

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

※ ヤンデレ注意

 
 
 
 

昼間の気温は太陽が真面目に高温を維持し続けているのに、
朝夕は太陽が熱気を失ったのかひんやりしはじめた季節の変わり目のある日。
俺は四季折々関係なくいつものように不本意な活動をするために、
放課後の自由時間を犠牲にしてまで校舎の片隅の部屋に向って歩い……

 

「ごほっ」

 

おいおい、誰だ人のモノローグを遮る奴は。
確かに俺の思考回路は無駄に複雑怪奇だとか言われるが、
せめて頭の中の独白くらいは完遂さ……

 

「ごほっ、ごほごほ……」

 

またか。一体だれが……
と、そこまで考えて、ようやく俺は景色が霞んでいることに気づいた。
なんだ?今日は霧でも出ているのか?
天気予報のお姉さんは朝晩冷え込むけど、
天気は晴れハレゆかいだよ、きゃは♪とか言っていたような気がするが……
それに何だか空気自体が重いというか、体が重いというか……

 

いや、余計なことをアレコレ考えるのは止めよう。
無駄に現実逃避をしても仕方がないしな。あぁ、分かってる。
今日の天気は一日中お母様方大喜びのお洗濯日和だし、
空気中にはナノマシンすら浮かんでいないし、
大気には二酸化炭素が増えつつあることを除いて何ら異常はなく……

 
 

「つまり、俺が風邪をひいた、ってことか」

 
 

そう口にして、改めて俺は自分の体のだるさに気づく。
どうやら咳と眩暈以外に熱もそれなりにあるらしい。
何もしていないのに俺の体は絶賛カロリー消費中というわけだ。

 

しかし、こうなればあの謎の団体活動に参加するわけにはいかない。
麗しの上級生や文学少女に伝染させてしまえば大変だからな。
ニヤケ面の副団長と団長になら伝染しようが感染しようがかまわないが。

 

だが、休むとなると、まことに面倒……残念ながら、
その迷惑団長ことハルヒに連絡を取らねばならないわけだが……

 
 

「ハルヒがどうしたって?」

 
 

「うわ!?」

 

突然声をかけられて驚く俺に、
闖入者は不思議そうな声を出して再び疑問の言葉を口にする。

 

「ん?あんた何か声おかしくない?」

 

何と言う洞察力。もしくは俺の病状の悪さか。
どちらにせよ隠すつもりもないし、もとより報告予定だったが、
こうもあっさりバレるとは思わなかった。

 

「あぁ、どうやら風邪ひいたみたいでな。
今日のSOS団は有給をいただきたい」

 

「ニラ食べたら治るんじゃない?今すぐ」

 

それを言うならネギだろ。
というか、そんなもん麓のスーパーに行かなければ、
調達することが出来ないぞ。
そんな環境でどうやって今すぐ治せるんだ?

 

などと口に出すには喉がストライキ中で厳しい状況なので、
静かに目で言い表す俺の目の前で、
ハルヒはカバンの中をがさごそと漁ると、
何かをその綺麗な指でつまんで俺に突きつけた。

 

「ん」

 

「これ……のど飴、か?」

 

しかも、包装を見る限り幼児向けの甘そうなのど飴。

 

「はっか味の方が良かったかしら?」

 

俺の表情をどう読み取ったのか、
若干不貞腐れた様に聞いてくるハルヒに、
俺は差し出された飴を丁重にいただきながら答えた。

 

「いや、味は気にしてない。
ただ、お前がこんなものを口にしてるってのが新鮮でな」

 

「な、なに言ってんのよ……いいからさっさとそれ持って帰りなさい。
今日は特別に有給をとらせてあげるから。
ただし、団長さまから施しを受けたんだから、
明日には元気に校庭を走り回る姿を見せなさい!いいわね?」

 

三か月前の大事故から奇跡的な生還を果たした少年か、俺は。
というか、現状を見る限り一日二日で何とかなるとは思えないんだが。

 

「がんばれば何とかなるでしょ。むしろ何とかしなさい」

 

無茶を言うな。今だって立っているだけでふら付いてるんだ。
無事に家まで帰れるかどうかさえ疑わしいぞ。

 

そう気だるい目ではなく表情での意思伝達を試みる俺に、
目の前の無病息災娘は、元気いっぱいにこう言った……

 
 
 

「とにかく、このあたしが治せって言ってるんだから、
今日はゆっくり休んでさっさと元気になりなさい!良いわね!」

 
 
 

鼻息荒く命令する団長さまに、
俺はいつものように心の中で呟いてその場を後にした。

 

「やれやれ」

 

仕方ない、この我儘娘のために、さっさと治すとするか。
そう思う俺の口の中には、優しい味のするのど飴の香りが、
暖かさとともに広がっていた……

 
 
 
 
 

太陽が表に出ている間は暖かい昨今の気候のおかげか、
はたまた珍しい団長さまの施しのおかげか、
多少ふらつきながらも無事に帰路についていた俺は、
自宅まで残り数百メートルというところで、
前方に見覚えのある影を見とめていた。

 

「あれ?長門、か?」

 

熱のせいで頭がぼんやりするため、いまいち自信は持てないが、
あのシルエットはおそらく我らが万能文学少女だろう。
その証拠にこちらの方に向かってきているようだし。
だが、あいつはこんなところに一体何の用……

 

「何を食べているの?」

 

「へ?何言って……ッ!?」

 

突然の質問に対し呆気にとられる俺に、
長門はその細い指を俺の口腔内に突っ込むと、
まだ原形をとどめていたままののど飴を無理やり取り出した。

 

「っほ、ごほっ、えほえほッ……ハァッ、ハァッ……」

 

何だ?一体何が起きた?俺は何をされた?
この咳は何だ?咳か?嘔吐か?何を吐きだしてるんだ?

 

「な、にするんだ」

 

「これを食べてはいけない」

 

俺の質問を無視し、手にしたのど飴を握りつぶしながら、
長門は淡々と答えを続ける。

 

「こののど飴には涼宮ハルヒの力が作用していた」

 

「は?一体どういう……ッ」

 

言葉より先に別のものが込み上げてくる。
何だ?確かにさっきまでふら付いてはいたが、
どうして急にここまで世界が揺れて、るん、だ?

 

「その力は私とあなたに悪影響を及ぼすもの。だから排除した」

 

「おれ、と……おまえ……に?」

 

「そう」

 

「だから、どん……ッ、ぐッ、あ……」

 

眼前の無口少女に質問をしようとするたびに、
肺や胃や頭の中から様々な物が決壊直前のダムの様に込み上げてくる。

 

もはや、自分が立っているのか座っているのか倒れているのか、
地面が垂直なのか、空が下にあるのか、長門が後ろにいるのか、
生きているのか死んでいるのかさえ分からないほど、
俺の中で何かが暴れまわり……

 
 

「大丈夫」

 
 

長門がその小さな口を開いたと同時に、
暴れている何かは俺を内側から突き破らんかの様に勢いを強め、

 
 
 

「涼宮ハルヒが先ほどの飴に施した治癒増強能力は私が破壊した。
今のあなたはその反動で病状が悪化しているだけ」

 
 
 

視覚も聴覚も思考もすべての感覚が正常に働かないはずなのに、
目の前の少女の声が甘美な毒の様に俺の身体の深くまで浸み渡り、

 
 
 

「だから私がずっと看病してあげる……」

 
 
 

その言葉が鼓膜を震わすと同時に、
俺の意識は完全に失われた……

 
 
 
 
 
 
 

キョンが風邪ひいた、って聞いた時には驚いたけど、
今日は早く帰したし、ちゃんと寝てるでしょうから、
今頃だいぶ良くなってるかしら?
あの飴には元気になるようにおまじないもしてたし。

 

そうだ、今からキョンに聞いて……って、寝てたらマズいわよね。
でも、容体が気になるし……お家にかけて、
それとなく妹ちゃんに訊いてみようかしら?

 

そうね、それがいいわ……

 
 
 

「ゆっくり休めって言ったけど……ねぇ、妹ちゃん?キョンの具合はどうかしら」

 

『え?ハルにゃん?きょんくんといっしょじゃないの?』

 

「キョンと?え?どういうこと……」

 
 
 

『だって、さっききょんくんから「今日から帰らない」ってでんわがあったよ?』

 
 
 
 
 
 
 
 

※ ハルヒのセリフの最初の一文字を繋げると……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:40 (2708d)