作品

概要

作者ながといっく
作品名こたつドリーマー
カテゴリー消失長門SS
保管日2010-02-19 (金) 06:30:22

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 
『長門有希ちゃんの消失』を元にしたSSになります
 

 それは、3月のある日の朝のことでした。
「うー…寒い…」
 上の階へ向かうエレベータを待つ。遅々として進まない階数表示。もう少し早くならないものかしら。
 それにしても、もうすぐ春だっていうのにずいぶんと寒い。今年は暖冬だとか言ってた予報士に文句言いたいわ。

 

「長門さんはもう起きてるかな…?」
 ちょっとだけ早めに起きて自分の身支度を整えてから、長門さんを迎えに行く。それが私の日課。
 我ながら少し世話焼きにも程があると思う。こんなんだからキョン君に通い妻だとか言われちゃうのかしら。
 それに、長門さんがいつまでもねぼすけさんなのは私のせいかもしれないわね。
 いざとなったら私に頼ればいい、なんて思ってたりしたら、それはそれで困る。
 ……でも、何故だかほっとけないのよね、あの子。

 

 さて、ベルを何度鳴らして呼び出しても長門さんの返事は無かった。
「もう、またなの?」
 そう、これは良くあること。彼女はすこぶる朝に弱いのだ。
 というか、夜遅くまでゲームをするから朝起きれないのよね。私がいなかったら遅刻常習犯になっていることは間違いない。
 ここで愛想を尽かして帰っちゃったほうが長門さんのためになるのかもしれないけれども、やっぱり私にはそこまで厳しくすることは出来ないみたい。
「長門さーん、入るわよー?」
 こんな時のために彼女から預かっていた合鍵で部屋に入る。
 うーん…普通の友達は合い鍵なんて持ってないわよね。やっぱり過保護かしら。

 

 リビングに入ると、こたつに下半身を突っ込んで横たわっている長門さんが目に入った。
 机の上には電源の付いたままの携帯ゲーム機が無造作に置かれている。
 なるほど、夜遅くまでゲームをして、そのままこたつで寝ちゃったということね。
「もう……」
 溜息が出る。一人暮らしの女の子とも思えない彼女のだらしなさに。
 そして、そんな彼女の寝姿をみて口元を緩ませてしまった自分自身に。
 叱りつけてやろう…と思っていたさっきまでの私はどこへ消えたのやら。

 

 と、ここで長門さんの様子がおかしいことに気付いた。
 息遣いが荒くて体も震えているみたい。これってもしかして…
「長門さん、長門さん」
 横たわる長門さんに声をかける。
「……あ、朝倉さん…おはよう……」
「おはよう。どうしたの?具合悪いの?」
 寝起きの彼女の眼の焦点があっていないのはいつものことだけど、今日はいつにもまして目は開ききらずにぼーっとしていた。
「あたま…いたい…」
「ちょっとおでこかしてね」
 そう言ってそっと触れた額は結構な熱を持っていた。
 うーん……やっぱり風邪ひいちゃったみたいね。
「もう、あれだけこたつで寝たら風邪ひくって言ったじゃないですか」
 なるべく怒ったように聞こえないように、諭すように長門さんに語りかける。
「ごめん……でもね、控え目♀4Vで地面69のが生まれたから朝倉さんに進化させようとおもうの…」
 なんのことですか。さっきまでやっていたゲームの話か何かですか?
 ゲームのキャラクターに私の名前でも付けているのでしょうか。
「固定だけで3日かかったんだよ……」
 だからなんのことですか。
「はいはい。布団敷いてあげるから早くセーブしなさい。電池切れちゃいますよ?」
「でも、学校……」
 この状態で学校に行こうとする気力だけは褒めてあげたいけど、今のあなたじゃ無理よ。あの坂道を登りきれるかすら怪しいわ。
「今日は大事取って休みなさい。先生にはあたしがちゃんと伝えてあげるし、長門さんのクラスに知り合いに頼むからノートも大丈夫です!」
 長門さんを諭しながら、押入れから布団を出して、こたつの横に並べるように敷く。
 勝手知ったる他人の家とはこういうことを言うのだろう。
「うん……わかった…」
 ゲームの電源を切り、おぼつかない足取りで布団へ潜り込む長門さん。
 そして、ちょこんと布団から顔を出し、
「……ありがとう」

 

 それは、あくまで控え目な微笑みでした。

 

「はぁ…」
 通学路で一人溜息をつく。
 本当は友人として、もう少し厳しくしなければいけないのに。
 あの顔は反則ですよ。何も言えなくなっちゃうじゃないですか。

 

 さて、私にはもう一つの懸念事項があった。それは「今日」という日そのものに他ならない。
 長門さん、今日は何の日だかわかってるんでしょうか。
 ほんの一ヶ月前、あれだけあたふたと大騒ぎしていたっていうのに。
 あげただけで満足して、お返しを貰うこととか考えないのかしら。
 貰いたいと思っていないわけはない。貰えないと思い込んでいるのかな。彼女はどこまでも奥手で弱気だ。彼女の魅力に彼女自身が気づいていない。
 まあ、そこが彼女のいいところなんだけど。

 

 ……仕方ない。もう少しだけおせっかいしてみよう。

 

 

 次にわたしが目を覚ましたのはお昼を過ぎたころだった。
 ゆっくり休めたおかげか、体の調子もいい。これも朝倉さんが布団を敷いてくれたおかげだ。
 それにしても、わたしって朝倉さんに頼りすぎだよね。
 このままじゃきっとそのうち愛想尽かされちゃうよ。

 

「おなかすいた…」
 風邪をひいてもお腹は空く。人の体は融通が利かない風に作られているらしい。
 よく、小説や漫画で「何も喉を通らないくらい」なんて表現があるけれど、わたしにはよくわからない感覚だ。
 どんな時でもお腹は空くのが生理現象だと思うのだけど。
 確かこの前読んだ小説だと、主人公が失恋したときにそんな状態になってたような……失恋かぁ……失恋…。もし私がキョンくんに……失恋……。
「た、確かに食欲なくなるかもしれない……」

 

 壮絶な自爆行為をどうにか乗り越えて、昨日の夕食の残りをなんとか口に入れることが出来た。
 さて、何もすることが無い。学校休んでおいて外に出るわけにもいかないしなあ…

 

 ……気が付いたら布団にくるまってゲームをしていた。朝倉さんごめん。

 

 十字キーを上下交互に押していく作業にも飽きたころ、カチャリと玄関のドアが開く音がした。
 朝倉さんが様子を見に来てくれたのかな? あ、ゲームどこかに置かないと!
 ところがリビングに現れた人物は朝倉さんではなく――
「よ、よう。具合はどうだ、長門」
 ――なんと彼だった。
 学校帰りなのだろうか、制服のままの彼はどこか居心地が悪そうにしている。
 なんだか、初めて彼をわたしの部屋に来てもらったときのことを思い出す。

 

 わたしはと言えば驚きのあまり言葉が出ない。
「なんで?」
 ようやく吐き出せた言葉はあまりに短い疑問句だった。
「あ、ああ、長門が風邪で休んでるって朝倉に聞いてな。それで、長門が風邪だから様子を見て来て欲しいって…」
 そっか、朝倉さんが…
「あ、合鍵も朝倉に借りたんだ。寝てるかもしれないから勝手に入って大丈夫って言うもんだからな。流石に女の子の部屋の鍵を勝手に借りるのはどうかと思ったんだが…気を悪くしたらすまん、悪かった」
 そんなことない。すごく嬉しい。
 そうだ、お礼を言わなきゃ。折角お見舞いに来てくれたのに…
「ううん。大丈夫…」
 その想いとは裏腹に、口から出てきた言葉はお礼とは程遠いものだった。
 なんで言いたい言葉が上手く言えないんだろう。たった五文字なのに。
 自己嫌悪しかけるわたしだったけど、
「そうか、ならいいんだが……しかし心配したぞ。インフルエンザとかじゃないよな?」
「多分、ただの風邪…」
 彼のわたしを気遣う言葉でそんな暗い気持ちはどこかへ消えていった。

 

 そこで初めて、私がパジャマ姿のままであることに気付く。
 しかも朝倉さんが買ってくれたピンクで可愛いウサギのキャラクターが入ってるやつ。
 おまけに朝起きたままだから髪もボサボサだし…うう恥ずかしいよ……
 鏡なんて見なくても顔が真っ赤なのがわかるくらい。
「どうした長門、顔赤いぞ……って熱あるんだから当たり前か」
 でも彼は風邪の熱のせいだと思ってるみたいだった。
 それどころか、わたしがパジャマであることにもあまり関心が――
「それにしても、意外に可愛いパジャマ着るんだな」
「っ!〜〜〜!!」
 そ、そんな不意打ちは卑怯だよう!
 でも可愛いって言ってくれた。でも恥ずかしい。
「こここ、これはピンクで、朝倉さんがわたしじゃなくてウサギで…」
「落ち着け、何を言ってるかわからん」
 私だってわからないよ! ああもう……彼のばか。
 ……わたしのばか。

 

「ん…?」
 しどろもどろな私をよそに、こたつに置いてあるゲーム機に目を向ける彼。
 あ、ゲームしてたのばれちゃったかな。
「こら長門、学校休んでゲームはよくないぞ」
 ばれちゃったみたいだ。彼は「羨ましいじゃないか」と続けて、ひょいとゲーム機を手に取る。
「ん……これって」
 どうやら彼もこのゲームを知ってるようだった。
 超有名作品のリメイクで、ゲームに詳しくない人でも大体は知っているような作品だ。
 私たちくらいの年なら、小学生くらいの頃にリメイク元をやっていた人も多いかもしれない。
「へぇ…懐かしいな。最近のはこんなに画面がきれいなのか」
 感心する彼。彼もこのゲーム始めればいいのに。
 彼と交換とか対戦とかできたら楽しいのにな。
「お、これって育て屋さんか?」
 そうですよ、育て屋さんですよ。
 って!育て屋さん!?
「そ、それれはだだだだだめ!」
 育て屋さんにユキとキョンを預けてるの忘れてた!
 あんなの見られたら死んじゃうよお!
「か、返してえ!」
 慌てて立ち上がり、彼に飛びついてゲーム機を奪い取ろうとするわたし。
「ちょっ、なが、うわあっ!」
 突然わたしに飛びつかれた彼は、バランスを崩して後ろのめりに倒れてしまった。
「きゃあ!」
 そして彼が倒れると同時に、支えを失ったわたしも彼の上にうつ伏せになる形で倒れてしまう。
 簡単に言うと、わたしが彼を押し倒してしまったのだ。

 

「……」
「……」
 二人分の三点リーダがその場を支配している。
 密着。顔近い。心臓の音が彼に伝わっちゃいそう。どうしようこの状況。
 ゲームでなら何回も遭遇したけど、実際なったらどうすればいいのかわからないよ。
 でもゲームならこれってチャンスだよね? この先ってどうなるんだっけ…
 えっと、大体の場合、男の人が女の人を優しく抱きしめ…ってそんなのないないないない――
「あ、あの…長門さん?」
「わひゃあ!」
 彼の言葉で我に帰り、慌てて彼の上から離れる。
 この状況でなにを馬鹿な妄想をしてるんだろう、わたし。
「あああの!ごめんなさい!重かったよね!」
「だ、大丈夫だ。全然重くなかっ……!?」
 ゆっくりと上半身を起きあがらせた彼はわたしを見て目を見張り、次の瞬間わたしから目線をそらした。
「ど、どうしたの?」
 な、何か顔についてるかな…?大丈夫だよね…?
「な、長門…その……前…」
 前?前って何だろ…?
 あ…パジャマのボタンが上三つくらい空いて……
「ひゃあああ!!見ないでえ!」
「み、見てない!見てないから!」

 

 数分後。
「……」
 いつだったかと同じように部屋の隅っこで体育座りなのはわたし。
「な、長門……悪かった…。見てないから大丈夫だって。そんなとこいたって寒いだろ?」
 その脇で必死にわたしをなだめようとしているのが彼。
 ……彼に見られた。今度は絶対見られた。彼が謝ってるのがその証拠だ。
 別に彼が悪いわけじゃないから謝る必要なんてないんだけど。
 でも恥ずかしい。どうしよう。どんな顔して彼の顔を見ればいいのかわからないよ。
「……どうだった?」
 何を聞いているんだろう、わたしは。
 この前にもこんな質問して彼を困らせたばかりだっていうのに。
「ど、どうだったって……」
 ほら、やっぱり困ってる。っていうかわたしはどんな答えが聞きたいんだろう。
 しばらく彼はうんうん唸っていたけれども、やがて、
「……いいもの見れた、かな」
 と呟いた。
 恥ずかしいけど、なんだか嬉しかった。
 そっか。わたしは彼の本音が、正直な気持ちが聞きたかっただけなんだ。
「やっぱり見てた」
 顔をあげて彼に言ってみる。なるべく非難がましくならないように。
 目に映る彼の顔もまた、赤みがかっていた。
「あ、うん……まぁ…すまん」
「ううん…あなたは悪くない」
 やっぱり、あなたは優しい人だ。
 だから、わたしはあなたが好きだ。

 

 しばらくの心地よい沈黙の後、
「あ、そうだ」
 彼は何かを『いま思い出した』ようだった。その仕草があまりにわざとらしくて笑ってしまいそうになった。
 でも、なんだろう?
「風邪でそれどころじゃないかも知れないが…」
 そう言うと、彼は鞄から何かを取りだした。
 出てきたのは、綺麗にラッピングされてリボンがつけられた小さな箱だった。
 彼は照れ隠しをするかのようにカリカリと鼻を掻き、
「まぁ…その、なんだ。一応今日のうち渡したいからな」
 箱をわたしに手渡した。

 

『今日のうちに渡したい』
 その言葉を聞いてハッとする。
 今日は3月14日。そっか、今日はホワイトデーだった。

 

 先月の出来事を思い出す。朝倉さんに手伝ってもらいながらも一生懸命チョコを作ったこと。
 バレンタインデー当日、作ったチョコを彼になかなか渡せなくて、自分の臆病さに涙が出てきたこと。
 彼がそんな私の手を取って、チョコを受け取ってくれたこと。
 忘れてた。渡せたことに満足してお返しなんてこれっぽっちも考えてなかった。
 彼は、覚えていてくれたんだ。
 それだけで…嬉しい。

 

「開けて…いいの?」
「ああ、勿論だ」
 手が震えて思うように開けられなかった。
 どうにかラッピングを外すと、中から黒い小さな箱が出てきた。
 胸の鼓動の高鳴りを感じながら箱の蓋を開ける。
 わたしの目に入ったのは――雪の結晶を模ったアクセサリーだった。
「ネックレスってのはちと無難過ぎるかも知れんが…」
 ううん。嬉しい。本当にありがとう。
 なぜこの想いをすぐ言葉に出来ないんだろう。わたしの不器用さにはほとほと呆れる。
「どれ、付けてやるよ。ちょっと後ろ向いてくれないか?」
「……」
 彼の言うがままに後ろを向くわたし。
 首筋や髪に触れる彼の指がこそばゆい。
「よし、これでOK。もういいぞ、長門」
 くるりと振り向くと、彼がじいっとわたしを見ていた。
 やっぱり恥ずかしくて目をそらしてしまう。
「似合ってるぞ、長門」
 体中がかあっと熱くなる。きっとまた茹でダコみたく顔が赤くなっているに違いない。
 もう今日は真っ赤になりっぱなしだ。顔で目玉焼きが焼けちゃうんじゃないかっていうくらいに。

 

 その後も、彼といろんな話をした。
 自分にもどかしさを感じることも沢山あったし、恥ずかしい姿も見られちゃったけど、彼と一緒にいる時間はとても充実していて、こんな時間がずっと続けばいいのにと思えるものだった。
 こういうのを、幸せって言うのかな?
 でも楽しい時間にも必ず終わりはやってくる。
 ううん、楽しい時間ほどあっという間に過ぎ去ってしまう。

 

「じゃあ、俺そろそろ帰るよ。ちゃんと治して明日は来いよ?」
「うん……」
 彼とはまた会える。風邪さえ治せば明日にはすぐ会える。
 でも今日、彼をここで帰してしまって本当にいいの?

 

 お見舞いに来てくれた。
 バレンタインデーのお返しを貰えた。
 ハプニングもあったけどなんだかいい感じ。

 

 今なら言えるかも。
 ううん、今言わなきゃいつ言うんだ。
 今日こそ伝えるんだ。あなたに、わたしの気持ちを。

 

「あ、あの!」
「ん、なんだ?」

 
 
 

「……今日はありがとう」

 

 なんてね。
 そんなに簡単に言えたら苦労はしない。
 今のわたしにはお礼をいうのが精一杯みたいだ。
 クリスマスの日。バレンタインの日。そして今日。
 わたしはまたもや千載一遇のチャンスを逃してしまったのかもしれない。

 

 でも今日は――

 

 すごくいい日だった。

 

 

 長門さんやキョンくんがいないからいい機会と思って、文芸部室の掃除や整理整頓をしていたら結構遅くまでかかってしまった。
 食料やお薬を差し入れに、早めに長門さんの部屋に行くつもりだったのに。長門さん、お腹すかせてなきゃいいんだけど。

 

 そういえば、学校でキョンくんにホワイトデーのお返しを貰った時は驚いた。
 私も一応彼にバレンタインチョコあげたんだった。案外マメなのね彼って。
 長門さんへのお返しを忘れてたりでもしたら引っ叩いてあげようと思ってたけど、私まで貰えるとは思ってなかったわ。
 でも、もっと驚いたのはそのお返しの中身。包丁ってなによ包丁って!
 料理好きだからってことらしいけど、いくらなんでも包丁はないわよね。
 彼曰く「よく切れる包丁」らしいけど、包丁くらい自分で買うわよ。やっぱりキョンくんってどこかズレてるわね。包丁貰って喜ぶ女の子がいると思ってるのかしら。
 これじゃあ、長門さんへのプレゼントも不安になってきたわ…
 もっとも長門さんは、キョンくんからなら何を貰っても喜びそうだけど。

 

 さて、長門さんの部屋の前まで着いたのだけど、呼び鈴を鳴らしても返事が無い。もしかして、もう寝ちゃったのかしら。
 でも一応様子を見てから帰ろう。具合悪くて動けない、なんてこともあるかもしれないし。
 二個目の合鍵でドアを開ける。元々これは長門さんが鍵を無くした時用に作って置いたものなんだけど、思わぬ時に役に立ってくれた。

 

 部屋に入ると、意外にもまだ明かりが点いていた。
 あれ、起きてるのかしら? と思いつつリビングに入る。
「長門さん、調子はどう…ってまたこたつで寝て!ダメって言ったじゃな…」

 

 その先は言えなかった。
 長門さんの寝顔があまりに愛らしかったから。
 もちろん普段の彼女も十分に可愛いのだけれど、この寝顔は反則だ。
 なんだろう、幸福に満ちあふれた顔、とでも言えばいいのかしら。

 

 幸せそうな寝顔の理由?
 そんなの、彼女が両手で大事に抱えてる箱を見ればわかるわ。
 ずっと欲しかったおもちゃを買ってもらえた子供みたいに、ぎゅっと。
 よっぽど嬉しかったのね、長門さん。

 

 あーあ。ちょっとキョン君が妬ましいかも。
 そんなことを思いながら、長門さんに毛布をかける。こたつの電源も消さないとね。
 これでまた風邪をひくってことはないと思うけど…大丈夫よね?

 

 帰り際、そっと呟く。
 こたつの中で幸せな夢を見ているであろう少女へ。

 

「おやすみなさい」

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:38 (1921d)