作品

概要

作者変拍子
作品名それから、そしてこれから
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2010-02-09 (火) 16:28:40

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 今回、私がしでかしてしまったことは正解なのか間違いなのか。それすら私にはわからなかった。
 しかしそうは言っても、間違いであるということは正直良くわかっている。良くわかっているからこそ、私はそれを認めたくはない。
 何よりも自分自身の気持ちに、嘘はつきたくなかった。
 あの改変が私にとって、どういったものだったのか。
 そのことに対する私の気持ちをねじ曲げたくはない。

 

 超規模な範囲で改変を行い、世界を歪曲させてしまった私は情報統合思念体より、処分が検討されているという通達を受け取った。
 私はそのことを彼に伝えた。伝えてからどうするつもりだったのだろう。
 彼に責められれば、楽になるとでも考えたのかもしれない。
 あの優しい彼が、そんなことをする訳がないとわかっているはずなのに。
 案の定、彼は私に対し、寛大な言葉をかけてくれた。
「くそったれと伝えろ」と言ってくれた。
 私のことを仲間だと、感じさせてくれた。
 あんなにも多大な迷惑をかけてしまったのにもかかわらず、彼は私のことを心配してくれた。
「ありがとう」と。
 感情を強く持たない私が、彼に対し感謝の念を感じることができたから。
 感謝の念だけではない。もっと何か特殊な、特別な何かが私の中で渦巻いている。そんな感覚も有すことができたから。
 だから私は言えたのだ。この感謝の言葉を。

 

 改変された世界で、改変された私と彼は一体どういう邂逅をしたのだろう。
 たった三日間のことだったけれど、私は彼と少しでも良い関係を築けただろうか。
 私と彼と彼女とで、楽しい会話でも出来たのだろうか。
 しかしそこで感じた幸せというのは、本当の幸せだったのか。少しばかり、嫌悪すべき考えが頭の中をよぎる。
 私がしたことは間違いではなかった。
 しかしそこで感じる幸せは間違いではないのだろうか。
 そこまで考えてから、私はあることに気がついて、思考を区切り分断する。
『人』が感じる幸福に、嘘も本当も無い、ということに。
 そしてそれは、図らずとも真理なのだろう。
『人』が『人』である限り。

 

 涼宮ハルヒが主催を務めるクリスマスパーティーの当日。
 私は何時ものように文芸部室で、本を読んでいた。まだ部室には誰も来ていない。
 暖房器具をつけていないので、おそらく気温は相当低いだろう。温度を感じる器官の接続は絶っているが、それでも寒く感じそうな、そんな空模様だった。少しすれば、雪が降ってくるだろう。
 すると、耳の端で気怠そうな声と共にドアを開ける音が聞こえた。
 彼だった。私を見つけた彼は、顔を少し綻ばせながら挨拶をしてくれた。
「よう。早いな、長門」
 彼の顔はいつもと変わらなかった。
 初めてここで会った時と。野球をした時と。喜緑江美里が来た時と。合宿に行った時と。あの二週間の時と。映画を撮った時と。文化祭のライブを見てくれていた時と。コンピ研と勝負をした時と。あのいつかの雨の日の時と。
 私に向けてくれる、顔は何一つ変わってはいなかった。
 たったそれだけのことが私に大きなエラーを発生させる。
 ……いや、もうエラーという言葉で片付けるのはやめよう。
 私は、とても嬉しいと感じた。
 私に対する彼の態度が変わっていなくて。
 だから私はその『感情』も込めて頷く。
 コクリと強く頷く。
 彼に伝わっただろうか。いや、彼ならきっとわかってくれるはずだ。
 無責任極まりないけれど、私は彼を強く信頼しているから。
 私の反応を見た彼は、少しばかり驚いた顔をしてから、すぐに笑顔へと表情を変える。
 そしてパイプ椅子に座ってから―おそらく本心からだろう―彼はこう言った。
 だから私も自分の気持ちを反映させた言葉をこう返した。

 

「楽しみだな。クリスマスパーティー」
「とても楽しみ」

 

 雪はもう、降り始めていた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:37 (2732d)