作品

概要

作者変拍子
作品名キンモクセイ
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-12-18 (金) 23:25:29

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 白く、透き通った雲が秋空にふわり、ふわりと浮いている。
 そして、心地よい秋風が私の頬を撫ぜる。
「……」
 風に乗ってどこからか、とても甘く香ばしい匂いが運ばれてきた。
 少しだけ刺激臭を感じる。微細なエラーが発生。
 あの永遠につづくと思われた二週間。
 何万回という事象を繰り返し、経験した結果がこれだった。
 ほんの少しの刺激や接触であろうと、すぐにエラーが発生してしまう。
 気に掛けるほどでは無いが、影響があるかどうかはわからない。
 情報統合思念体は回答を保留した。

 基本的に私はあまり感情と呼ばれるものは持ち得ていない。
 朝倉涼子や喜緑江美里のように人らしく振舞うことは、私にとって難解である。
 ……必要ではないが。
 しかしこの二ヶ月間。
 実際のところ、私はそれを身につけつつあった。
 何もかもをエラーという言葉で片付けるのは、至極簡単なことではあった。
 だがしかし、それでも彼に、彼に会った時や会話した時のエラーの量というのは膨大に増えていた。
 今までに経験したことの無いエラー。
 気持ちよくて、少しだけ胸が苦しくなるエラー。
 私の体にはどこも不具合はない。
 けれども、彼を見る度に胸が締め付けられるような感覚を覚える。
「キンモクセイ……。モクセイ科モクセイ属の常緑小高木樹で、ギンモクセイの、変種」
 私の鼻腔をくすぐった正体を口にする。
 私はキンモクセイなのかもしれない。
 対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースとしてこの地に生まれ落ちた。
 ギンモクセイとして他のインターフェースと同様に、この地で観測を行う存在だった。
 そう、自覚していた。
 しかし私は自分の意思に従って、自分の意思に抗って、キンモクセイに成ってしまった。
 変わってしまった。
 私の中で大きな何かが強くねじ曲げられるのを感じ、それに呼応するように私も変わってしまった。
 そして私は成ってしまったのだ。
 キンモクセイという名の『変種』に。

 またあの甘い匂いが私の鼻をかすめる。
 さきほど発生したエラーと同じように私の中を駆け巡る。
「良い、匂い……」
 自分にも、誰にも聞こえないくらいの大きさで呟く。
 私は変わったのだ。
 それを誰に咎められようか。
 誰にも咎められたくはない。
 そんな気持ちを言葉に練りこむ。
 練りこんで、その言葉を風に乗せ、散りばめる。
 こんなにも大きく変わった。
 それを彼や、沢山の人に知ってもらいたくて。
 
 秋空は緩く、優しく私をいつまでも包んでいてくれた。
 キンモクセイの香りは途絶えなかった。
 私の変化も途絶えなければ良い、と思った。
 だから動こう。
 行動を起こそう。
 来る日に、後悔を残さないように変化の印を植え付けよう。
 私は覚悟を置き去りに、そう決意をした。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:36 (2711d)