作品

概要

作者◆Yafw4ex/PI
作品名「雪見だいふく <たまごプリン味>」
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-02-23 (月) 21:38:04

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 
 
「新製品 ロッテ 雪見だいふく <たまごプリン味>」
 
 
 ……と、遠かったです。
 やっとの思いで部室棟に辿り着いた時、私はすでに疲れきっていました。
 昼休みと同時に教室を出たら、
「みくるー! 一緒にお弁当……あれ、何だか嬉しそうだねぇ……なーにを隠
してるのかなっ? ――あ! 逃げるの? 逃げたら現行犯でお持ち帰りぃ!」
 ――最初、鶴屋さんに捕まって。
「あ、みくるちゃんじゃない。ここで会ったのも何かの縁ね、一緒に食堂に行
きましょう。――……え、行かないの? 何で? どうして?」
 ――次に涼宮さんに捕まり、さらにこんな時に限って未来からの業務連絡ま
できてしまって……も、もう、あとちょっとしか休み時間が残ってないです。
 腕時計の中で無慈悲に回る秒針を恨みつつ、私は部室のドアをそっと開けま
した。
 ドアの隙間から見えてきたのは……窓際に座る長門さんだけ。
 よかった、みんなが居たらどうしようかと思いました〜。
 ほっと一息つきながら部室に入ると、長門さんは一瞬だけこちらに視線を送
って、また読書に戻ってしまいました。
 邪魔しちゃわないようにしないと……。
 そっと長門さんの横を通り過ぎ、私は目的の冷蔵庫の前に辿り着きました。
 早くしないと、食べる時間がなくなっちゃう。
 うきうきしながら冷蔵庫の上段、冷蔵室の扉を開けた私が見たのは
「え」
 何も置かれていない、ただの冷え切った空間でした。
 え? え? おかしいです。だって……だって朝、私ここに置いたんです。
 通学途中で買った、アイスをここに置いたんです!
 パニックになりそうな私の耳に、
「探し物?」
 後ろから長門さんの声が聞こえてきました。
「は、はい」
「それは、アイス?」
「そうです!」
 長門さんがアイスの行方を知っている。
 そう思って喜んだ私の前に差し出される長門さんの指、その指はゆっくりと
涼宮さんの席の隣にある……ゴミ箱の……中……うっ……うう。
 ……そこには、無残にも空になったアイスの容器が入れてありました……。
 容器と繋がったままの紙のパッケージには、甘くて美味しそうな絵がプリン
トされていて……楽しみにしてたんです、凄く。
 アイスはとってもコクのあるカスタード味で、真ん中はカラメルソースはほ
んのり苦くて、卵感たっぷりであま〜いアイスのアクセントにばっちりで……。
プリンとアイスを一緒に味わえる最高のデザートだったんです」
 途中から思っている事が声になっていましたけど、もうそれもどうでもいい
んです……。
 今朝からずっと、お昼休みを楽しみにしてきたのに……してきたのにぃ……。
 小さく息が詰まって、涙が出てきちゃって、もう休み時間も残ってなくって。
 その場に座り込んでしまった私の横で、冷蔵庫の扉が開く音がしました。
 ……え?
 振り向いた私が見たのは、長門さんが開けた冷蔵庫の中に置かれた……。
「ゆ、ゆ、ゆ……雪見だいふく、たまごプリン味ですかぁ!」
 冷蔵庫に飛びついた私に、長門さんは
「そう」
 と呟きました。
 そこにあったのは間違いなく雪見だいふくで、空箱なんかじゃないちゃんと
中身の入ったアイスでした。
 長門さんは冷蔵庫からアイスを取り出し、
「2時間目の休み時間、涼宮ハルヒはこのアイスを発見し完食。そこに彼が来
て、アイスの経緯を確認。涼宮ハルヒは「あんたのじゃなかったの?」と言い、
彼は「確認してから食え、っていうか人の物を勝手に食うな」と――」
「そ、それはもういいんです!」
 アイスが返ってきてくれただけで、もういいんです!
 冷たいアイスを受け取った私は、文字通り天にも昇れそうな気分でした。
 よかったぁ……本当によかったぁ!
 喜んでいた私の耳に、遠くから予鈴が聞こえてきました。
 あ、もう時間が……そうだ!
「長門さん、あのよかったらなんですけど」
 私は雪見だいふくのパッケージを開けて、中に入れてあるプラスチックのス
ティックを二つに折って1つを長門さんに差し出しました。
 不思議そうな顔で、長門さんはそのスティックを見つめています。
「あの……もう、休み時間が殆ど残っていないので……一緒に食べてもらえま
せんか?」
 そう聞いてみると、暫く長門さんは固まっていましたが――やがて、そろそ
ろと手を伸ばしてスティックを受け取り、雪見だいふくの1つにさしました。
 1つずつだいふくを取って、一緒に食べた雪見だいふくは……うん、やっぱ
り誰かと食べた方が、一人で食べるよりずっと美味しいです。
 空になった容器に並ぶスティックが2つ。
「ありがとう」
 いつもと同じ、冷静な顔でそう言った後
「美味しかった。とても」
 長門さんは、ちょっとだけ嬉しそうにそう言ってくれました。

 
 ――その日から、私は時々お昼休みに部室に行くようになりました。
 その手には必ず購買部で買ったアイスがあって、選ぶアイスはいつも2人で
食べられるアイスです。
 
 
 「雪見だいふく <たまごプリン味>」 〜終わり〜
 
 

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:24 (3047d)