作品

概要

作者◆Yafw4ex/PI
作品名「クロネコヤマトの宅急便」
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-02-23 (月) 21:35:00

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 
 
 心音上昇――軽度の緊張状態を確認。
 原稿用紙を手に、席を立った私へと注がれる視線。
 私の話は受け入れられるだろうか。
 何かを書く時、私はいつもそれを気にしてしまう。
 何故、気にするのかはわからない。
 萎縮する気持ちを奮い立たせ、深呼吸をする。
 ……伝えよう、この物語を。
 それが私がここに居る理由、貴方達がここに居る理由。
 私は、言葉を紡いだ。
 
 
 「クロネコヤマトの宅急便」
 
  
 クロネコのヤマトは宅急便屋さん。
 今日も忙しそうにたくさんの荷物を運んでいます。
「こんにちわ、ペリカンさん」
「やあ、ヤマト。こんにちわ」
 ヤマトは荷物から綺麗な紙で包まれた箱を1つ取り出して、
「お荷物が届いていますよ」
「本当かい? 誰からかな、ありがとう!」
 ペリカンさんは箱を受け取り大喜び。
 ヤマトもそれを見て、大喜び。
「よかったですね〜。それじゃあまた」
 再びヤマトは荷物を持って、次の配達先に向かいます。
 
 
「あ! ヤマト。僕宛の荷物はないかな?」
「こぐまさん、こんにちわ。はい、届いていますよ」
 ヤマトは荷物から白い箱を1つ取り出して、
「お届け物です。こぐまさん」
 こぐまさんは荷物を受け取ると大急ぎで箱をあけて、
「ふ〜よかった、ちょっと遅れちゃったけど、これでみんなにお話を見せられるよ!」
 そこにあったビデオテープを手にほっと一息。
 ヤマトもそれを見て、ほっと一息。
「よかったですね〜。それじゃあまた」
 再びヤマトは荷物を持って、次の配達先に向かいます。
 
 
「次の配達先は……あ、ゾウさんの所だね」
 宛名を頼りに歩いていくと、ゾウさんのお家が見えてきました。
 ヤマトは荷物から綺麗な箱を取り出して。
 トントントン。
「こんにちわ、ヤマトです。お荷物を届けにきました」
 ……あれ? お留守みたい。
 ノックをしても、誰の声も聞こえません。
 どうしよう、どうしよう。
 困ったヤマトは、送り主のキリンさんに電話を掛けてみました。
「もしもし。お荷物をお預かりしたヤマトですが」
「ああ! ヤマトくんか。荷物は届けてくれたかい?」
「ごめんなさい。それが、ゾウさんはお留守みたいなんです」
「そっかぁ。電話を掛けても繋がらないから、変だとは思ってたんだ」
 キリンんは寂しそうに言いました。
「ありがとう、ヤマトくん。荷物は君にあげるよ」
 突然の事にヤマトはびっくり。
「ええ? どうしてですか?」
「ゾウさんに渡したいと思ったけど、それが出来ないなら君にあげたいんだ」
「……でも」
「気に入らなければ捨ててしまっていいからね。わざわざ電話してくれてありがとう」
 そう言って、キリンさんは電話を切ってしまいました。
 
 
 どうしよう、どうしよう。
 こんな事は初めてで、ヤマトはどうしていいのかわかりません。
 ともかく、開けてみよう。
 そう思ったヤマトが綺麗な箱を開けてみると、中からマフラーが出てきました。
「わー何て暖かそうなマフラーなんだろう」
 思わず手に取り、首に巻いてみると
「あれ、何か落ちたみたい」
 マフラーの間から、一枚の手紙が落ちてきました。
『ゾウさんへ 彼女は僕よりも君の事が好きだってさ。だから、彼女に貰ったこのマフラー
を君に贈ります。どうか、お幸せに キリン』
 偶然見てしまった手紙に、ヤマトはびっくり。
 どうしよう、どうしよう。
 手紙もマフラーもとてもとても大切な物で、ヤマトにはとても受け取れません。
 
 
 大急ぎで街を走るヤマト。
「あ、ペリカンさん! ゾウさんを見ませんでした?」
「いや、見てないよ」
「ありがとう!」
 慌てるヤマトの姿に、ペリカンさんはびっくり。 
「やあヤマト、おかげで助かったよ」
「こぐまさんこぐまさん。ゾウさんを見ませんでした?」
「ゾウさん? ん〜見てないね」
「ありがとう!」
 ゾウさんはどこに行っちゃったんだろう?
 ヤマトがどれだけ街を探しても、ゾウさんの姿は見つかりません。
 
 
 やがて夜が来て、街は暗く寒くなってしまいました。
 ゾウさんを見つけられなかったヤマトは、一人家へと帰る途中です。
「うー寒いよう。でも、このマフラーはとっても暖かいや」
 凍えるような寒さでも、マフラーを巻いた首だけはとっても暖か。
 まるで、誰かが僕を抱きしめていてくれるみたい。
 お日様みたいに。
 お母さんみたいに。
「……うん、やっぱりこれは僕が持ってちゃダメだよね」
 ヤマトは立ち止まり、それまで歩いてきた道を引き返し始めました。
 
 
 トントントン。
「こんばんわ、ヤマトです。お荷物を届けにきました」 
 ガチャ。
「あ、ヤマトくん!」
 ドアを開けたキリンさんは、ヤマトの姿を見てびっくり。
「夜遅くにごめんなさい」
 ヤマトはそう言って、自分の首に巻いていたマフラーと手紙を差し出しました。
「キリンさん、僕やっぱりこのマフラーは受け取れません」
 困った顔のキリンさんにマフラーを手渡して、
「このマフラーとっても暖かかったです。きっと、凄く暖かい気持ちで編んだマフラーなん
だと思います。だから、僕が持ってちゃダメだって……あ!」
 一生懸命、自分の気持ちを伝えようと話していたヤマトが見たのは、キリンさんの後ろに
現れたゾウさんの姿。
 え? え? え?
「ごめんねヤマト、ちょうど入れ違いになっちゃったみたいだ」
 照れ笑いを浮かべるゾウさんと、同じ様に笑っているキリンさんを見てヤマトはびっくり。
 さらに、もう一人玄関にやってきたのは、可愛い小さな女の子。
 え? え? どういうことなの?
「ついさっきゾウさんと彼女が家に来てね、僕の誤解を解いてくれたんだ」
 キリンさんはとても嬉しそう。
 女の子はそんなキリンさんを見て、
「私、キリンさんが好きです。でも、ゾウさんの方がもっと好きです。でもやっぱりキリン
さんも好きなの」
 ゾウさんとキリンさんと女の子の3人は、仲良くみんなでマフラーを巻いて
「わ〜やっぱり暖かいね」
「2人を思って編んだの」
「とっても嬉しいよ」
 みんな笑顔でにっこり。
 ヤマトもそれを見て、にっこり。
「よかったですね〜。それじゃあまた」
 再びヤマトは荷物を持って、次の配達先に向かいました。
 マフラーはもう無かったけれど、ヤマトは全然寒くありません。
 何故なら、暖かい3人の笑顔を見れたからです。
 
 
「――おしまい」
 私が、物語が終わった事を告げると、
「なかなかいいじゃないっ! 今度の機関紙のTOPは有希の話で決まりね! 古泉君、デ
ータに打ち込んで!」
「かしこまりました。編集長」
 涼宮ハルヒは、私の手から原稿用紙を受け取って古泉一樹にそれを手渡した。
 発表という目的を達成し、私は椅子に座る。
 達成感と安堵感。
 とても緊張した……でも、話せてよかった。
「びっくりしました〜。前に長門さんが書いたお話しと感じが違っていて、凄く優しい物語
でしたね」
 何度も瞬きを繰り返している朝比奈みくるの指摘は正しい。
 私も、自分の変化に驚いている。
 以前の私には、この物語は書けなかったはず。
 この変化を生んだのは――きっと
「ずっと本を読んでいるだけの事はあるな。本当、大したもんだよ」
 彼はそう言って、隣に座る私の頭を撫でてくれた。
 何故だろう。
 何日も何日も文章を考えようやく出来上がった文章が、彼の手を数秒間頭に感じるだけで
書いてよかったと思わせてくれる。
 そして、あれだけ緊張したのに……また何かを書こうと思っている。
 ――それが何故なのか、いつか私に理解できる日が来るのだろうか。
「さ、次はキョンの番よ」
 涼宮ハルヒの言葉に、
「……あの話の後ってのはきついな」
 苦笑いを浮かべて彼が席を立つ。
 心音上昇――軽度の緊張状態を確認。
 原稿用紙を手に、席を立った彼へと注がれる視線。
 彼はどんな話を聞かせてくれるのだろう? とても、楽しみ。
 
 
 「クロネコヤマトの宅急便」 〜終わり〜
 
 

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:24 (2732d)