作品

概要

作者ながといっく
作品名長門さんのバレンタイン
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-02-20 (金) 01:10:24

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「「ハッピーバレンタイン!!」」
 古泉と一緒に指定された時間に文芸部室に入る。
 飛び込んで来たのは威勢の良いハルヒの声と緊張気味な朝比奈さんの声。
 そう、今日はバレンタイン。今年は2月14日が平日であることもあって、去年みたいな宝探しをさせられることもなく、文芸部室で普通に渡されることになっていた。

 

 テーブルには綺麗にラッピングされた4つのチョコが並べられて――ん?4つ?

 

「そういえば、長門は?」
 途端に、ハルヒと朝比奈さんの顔が曇る。
 ハルヒは残念そうな声で、
「今日、有希は風邪で休みなんだって。ホントは去年みたいに3人一緒に渡したかったんだけど…」
 朝比奈さんも元気なさげに、
「長門さん、チョコを作れなかったみたいだったから、後でみんなで渡そうと思ったんです。でも長門さんに電話したら…」
「イベント事は当日にやるべき。わたしのことは気にしないで、って言って聞かなくて」

 

 長門が風邪?それは残念だな…喜びも3割引だ。
「そういうことだから、残念だけど今年は有希からは無いの。
 でもホワイトデーは有希にも何かあげてね?一番残念がってるのは多分有希だから…」
 イベント事は当日にやるべき、か。まったく長門らしいな。
 あいつは他人に迷惑かけたがらないからな。
「わかりました、涼宮さん」
「キョンもよ。ねえキョン、聞いてるの?」
 それにしても長門が風邪か。珍しいな。
 大丈夫なんだろうか?今日終わったら見舞いに行ってやるか。
 そうだ、チョコでも買っていくか。今年は逆チョコが流行ってるらしいしな。
「キョン!!」
「ん、ああ、すまない」
「有希の分が無くて、残念なのはわかるけどさ…
 あたしとみくるちゃんのは貰えるんだからもうちょっと喜びなさいよ!」
「ああ、いや。もちろん嬉しいぞ。ありがとうなハルヒ、朝比奈さん」
「僕も感謝していますよ。ありがとうございます」
「わかればいいのよ…さ、じゃあ早速食べちゃいなさい!」
 それからのことはよく覚えていない。チョコは2つとも美味しかったし、
 ハルヒと朝比奈さんがやたらと俺達の顔色を気にしていたような気がする。
 だがそれらの記憶は小さい頃にみた映画のように曖昧なものになっていった。

 

 帰り道。ハルヒ達と別れたあと、近所のスーパーに向かう。
 長門にあげるチョコを買うためだ。幸いにも逆チョココーナーなるものがあって、悩まずにすんだ。
 しかし逆チョコってどうなんだろうな。世の男どもは都合よく騙されてるんじゃないか?
 まぁ、本来バレンタインは男が女に花束をあげる日らしいから、別に男がチョコをやっても変ではないのかもしれないが。
 ともかく長門には世話になってる。感謝の気持ちってことなら長門も悪く思わないだろう。

 

 マンションの玄関に着き、いつものようにインターホンで長門の部屋の番号を押そうとした時、自動ドアが開く音がした。
 振り向くと目に入ったのは北高の制服――あれ?長門?
「どうしたんだ?」
「なぜ?」
 言葉が重なる。
 間違いなく長門だ。いつもの制服姿にいつもの無表情。
 ただ、長門にしては珍しく、ほんの少しだけ驚いたような顔をしている。
「いや、風邪って聞いたから様子を見に来たんだ。大丈夫なのか?」
 そこで気づく。よく考えれば、この無敵宇宙人が風邪なんかで学校を休むはずがない。
 俺達が想像もつかないような敵に襲われていたとか、あるいは何か違う理由で休んでいたに決まっている。
 そんな簡単なことにも気付かなかったということは、よほど俺は落胆していたか、動揺していたのだろう。
 長門がいないということに、そして、長門にチョコを貰えないということに。

 

「……大丈夫。風邪というのは嘘。心配をかけてすまなかった」
 そうか。大丈夫ならいいんだ。
「じゃあなんで今日は休んだんだ?」
「……」
 帰ってくるのは無言。言いにくいことでもあるのか?
 だけど目は口ほどにものを言う。長門の表情のことなら大体わかるぞ。
「ひょっとして、照れてるのか?」
「……べつに」
 じゃあなんでそんなに焦ってるんだ?
 と、そこで長門が後ろ手に何かを隠していることに気付く。
「何、持ってるんだ?」
 ぴく、と一瞬硬直する長門。
 しばらくの沈黙の後、長門は決心したかのように俺を見つめる。
「……チョコレート」
 後ろ手に持っていたのは綺麗にラッピングされた小さな箱だった。
 そして本人の言葉通り中にはチョコが入っているのだろう。
「作れなかったんじゃなかったのか?」
「……それも、嘘。わたしのわがままで皆に心配かけてしまった…ごめんなさい」
「いいんだ、気にするな。お前が大丈夫ならそれでいいんだ。そうだ、俺からもほら」
 コートのポケットに入れていたチョコを長門に見せる。
「今流行りの逆チョコって奴だな。いつもありがとうな、長門」
 ぎこちない動作で俺のチョコを受け取る長門。
 おいおいあんまり握りしめるなよ。中身潰れちまうぞ?
「わたしも」
 逆の手から俺にチョコの箱が手渡される。
 長門はいつもの無表情。それでもどこか柔らかいものを感じ取れたのは、気のせいじゃないはずだ。
「……いつも、ありがとう」

 
 

 チョコが美味かったことは言うまでもない。
 けれども、最大の謎がまだ一つだけ残っている。
 何故長門はわざわざ嘘をついて学校を休んでまで俺に個人的にチョコを渡したのか。
 本人に聞けば教えてくれるかもしれない。でも流石にそれは野暮ってものなんだろう。

 

 俺は手帳を開き、一ヶ月後の日付に赤いマルを付けた。
 宇宙人謹製チョコにデコレーションしてあった漢字二字を思いだしながら。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:22 (1772d)