作品

概要

作者◆Yafw4ex/PI
作品名長門有希の愛着
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-02-19 (木) 20:08:07

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 
 
 

お題
「ボート」
「失望」
「長門の好きなお茶」
「ファッションセンターしまむら」
MacBook? Pro」
「iPhone」
「13日の金曜日 」

 
 
 

「ボート」
 
 
 失礼ですが……女性をエスコートする際に、行き先がいつも同じ場所というのは
あまりよろしくないと思いますよ?
 恒例となった不思議探索での組み分けの最中、無駄に長いあみだくじに蛍光ペン
で線を引くハルヒを眺めながら営業職の超能力者は俺に小声でそんな事を言った。
 はいはい、もてる男の意見は何とも参考になるねぇ……ったく。
 そもそもこれは古泉が考えているようなデートに類する物ではなく、ハルヒ考案
による答えの存在しない出来レースでしかない。
 適当に時間を潰して、後は雑談で終わればそれでみんな満足だとは思わないか?
 そんな俺の反論に古泉が苦笑いで答える中、
「またぁ?!」
 大声を上げるハルヒの視線の先には、色彩豊かに姿を変えたあみだくじがあった。
 ああ、なるほど。またってのはそうゆう意味か。
 あみだくじの末尾、組み分けを示すらしい名前の一覧。そこには、ハルヒの名前
の横に古泉と朝比奈さんの名前があって、俺の名前の横には――
 
 
 古泉の指摘が実は気になっていた、などという事は全くない。
 静かな公園を歩く中、俺は自分の選択に自分で突っ込みを入れていた。
 不思議探索の目的地を公園に選んだ理由、その選択を導き出したのは、ただ単純
に今日が暖かい日差しの小春日和であり、たまたま通りがかった公園に人影が殆ど
無かった事も付け加え、まあこの物言わぬ同級生をたまには直射日光の下に連れ出
そうとか……まあ、そんな考えがあった訳だ。
「……」
 俺の隣を歩く長門は、いつもと違う場所へと誘った俺へ、時折言葉では表現でき
ない微妙な視線を投げかけている。
 とりあえず退屈してるようには見えないからいいか。
 さて、人気が無い事の反証って訳じゃないが、公園の中には特に目ぼしい地形地
物は無く、ここへ来る人の主たる目的といえば……そうだな、多分あれだろう。
 というかあれしかない。
 公園の中央に位置する大きな湖、というか池。そしてその淵に並ぶ「貸しボート」
のノボリ。
 この公園の唯一の特色とも言えるボート乗り場に俺達はやってきた。
「長門、お前はボートって乗った事はあるか?」
「ない」
 だよな。
 湖面に浮かぶ古ぼけたボートを見る長門の視線には、デートを前に緊張する女子
高生的な緊張感は見つからず、むしろ木造の簡易船舶の浮力に関する信頼性とかそ
んな事を考えている様にしか見えない。
 ……でもまあ、一応聞くだけ聞いてみよう。
「ボートに乗ってみるか?」
 そう尋ねる俺に、長門は俺と湖の向こう岸を見比べた後、
「対岸に移動するのなら、接岸に適した地形が無いので徒歩の方が推奨される」
 と、真面目な顔で言い切った。
 まあ、お前ならそう言うと思ってたよ。
 想像通りのリアクションににやけつつ、俺は無言の長門を残してボートの管理小
屋へと入っていった。
 ――2時間500円ね。値段はいいとして、2時間もボートに乗ってる奴が居る
とは思えないが。
 チケットと小さな鍵を手に戻ってきた俺を、長門は不思議そうに見ている。
 そうだな、お前から見ればこれは不思議な事だろうし、俺も何でこんな事をする
のか言語では上手く説明してやれない。
 つまりは、そう――百聞は一見に如かずって奴だ。
「長門、一緒にボートに乗ろうぜ?」
 俺の問いかけに、長門は小さく肯いた。
 
 
 先に乗った俺に続き、長門がボートへ乗って湖面の上で小さくボートが揺れる。
 足場が不安定だからと差し出した俺の手に、安定感抜群で乗り込んだ長門は困っ
た顔で片手を添えていた。
 ……俺は何を考えてたんだろうな。ボートに乗るくらいで長門が不安定になるわ
けがない。
 対面に長門が座るのを確認した後、俺は緩やかにボートを漕ぎ始めた。
 歩く程の速度で進むボートの上、長門は現在自分が置かれている状況の整理でも
しているのか無言で俺を見ている。
「長門、初めてボートに乗った感想はどうだ?」
「……」
 俺に感想を求められた宇宙人は暫く逡巡した後、
「早い」
 ……ああ、速度ね。
 なんとなく肯く俺に
「実際に出ている速度に対して、視点が低い位置にあるので早く移動している様に
感じる」
 長門はそう付け加えた。
 なるほど、そうゆう理由だったのか。
 子供の頃からの疑問が一つ消えた俺に、
「……教えて欲しい。何故、ここへ連れて来たのか」
 今度は長門からの質問が返ってきた。
「質問に質問で返して悪いんだが。長門、ここから見える景色を見て何か感じない
か?」
「――半径2キロ圏内に敵対勢力の存在は知覚出来ない」
 いや、そうゆう意味じゃなくて。
 苦笑いを浮かべる俺に長門は、
「……この湖の存在は知っていた。深さも外周も水質も知っていたけれど……こう
して、ボートの上に居ると……上手く、言葉に出来ない」
 そっか。
 俺は自分の目的が達成されている事に喜びつつ、長門の質問に答える事にした。
「長門。俺なんかよりもずっと頭がいいお前にこんな事を言うのは、正直おこがま
しいってのはわかってるんだが……本を読む以外にも、趣味を持った方がいいと思
うぞ?」
「……」
 俺を見つめる長門の、少し寂しげな沈黙。
 まあまて、否定してるんじゃないんだ。
「例えばだ、お前が呼んでいる本はその殆どが著者が考えたり経験したり、人から
聞いたりと色んな経緯で書かれている。こうやってボートに乗って、その体験を元
に著作を残した人もいるだろうしな。俺が言いたいのは、著者が本を書きたいと思
うような経験をしてきたように……お前にも、色々と経験して欲しいんだよ」
 そう、ただ黙々と1人で読書をするってのもお前らしいんだが……たまには違う
趣味で誰かと遊んでもいいと思うんだ。
 俺の話を聞き終えた長門は、ゆっくりと肯いた。
 ――そして静かに顔を上げた長門の顔が、湖面で乱反射された光を受けて微笑ん
でいるように見えたのは……まあ、錯覚だろうな。
 
 
 「ボート」 〜終わり〜
 
 
 「失望」
 
 
 不安定な湖面上――木製のボートに座る私の対面に、彼は居た。
 市内の公園にある湖の上。
 ここへ私を連れてきた理由を、彼は私の経験の為だと言う。
 統合思念体と有機生命体との間の意思疎通をする為に作られたインターフェース
である私に、彼が経験を求める理由。
 私には、その明確な答えがわからなかった。
 ただ、彼が私へと向ける視線は優しく――無意識の内に、自分の表情筋が緩むの
を感じる。
 湖面上は陸地と比べ不安定な為か、彼は普段よりも饒舌になっている様に思う。
「長門、学校から帰ったら普段は家で何をやってるんだ?」
 特に。
「テレビとかは?」
 無い。
「ネットは?」
 無い。
「……じゃあ、部屋では何をしてるんだ?」
 借りてきた本を読んでいる。
「そっか……誰か部屋に遊びに来る友達とかいるか?」
 ――昔は1人居た。でも、今は居ない。
 貴方だけ。
「そっか」
 失望ではないが、少し寂しそうな彼の顔。
 私の返答は、きっと彼の期する内容に程遠かったのだろう。
 理由はわからない、でも――その事実が私には苦しく感じられた。
 胸部に感じる圧迫感を伴う軽度の苦痛、断続的に続くその症状の原因は不明。
 これは一刻も早く思念体に報告し、エラーチェックを受けるべき状態――それな
のに、どうして私は彼と過ごすこの時間が長く続けばいいと思っているのだろう。
 何気ない質問はそれからも続き
「お、もうこんな時間か。……意外と早いもんだな、2時間って」
 彼は残念そうにそう言った。
 私もそう思う。
「長門、色々と変な事ばっかり聞いて悪かったな」
 いい。
 ――貴方の質問は、オールが湖面を撫でるのと同じように私の中で今も波紋を起
こしている。
 これまで、私は自分に生活習慣について疑問を持った事は無かった。
 でも、今はそこに変化を求めている。
 それは何故。
「じゃあ、岸に戻るぞ」
 肯き同意する私へ笑顔を向ける彼――もしもまた、こうして話せる機会があった
らその時こそは、きっと――
 
 
 2人で過ごした穏やかな時間は、ボートを返却した時ではなく、簡易な船着場に
接岸した瞬間に終わりを迎えた。
「……神聖なるSOS団の活動中に、よくもまあこんなふざけた真似が出来たわね」
 岸に対して背を向けてボートを漕いでいた彼は、そこに彼女が待ち構えている事
に気づかなかったらしい。
 顔に冷や汗を浮かべつつ
「ハ……ハルヒ」
 ゆっくりと振り向く彼の表情は重い。
 そして、彼を睨む涼宮ハルヒの表情もまた――怒りだけでは無いのだと思った。
「キョン……言い訳をするなら今の内よ。ついでに時世の句も用意する事をお勧め
するわ」
 涼宮ハルヒの後ろに立つ古泉一樹、朝比奈みくるの両名はただ青い顔で成り行き
を見守っている。
「えっと……その、つまりだな」
 焦る彼を助けたい――ただ、それだけだった。
「この湖には伝説がある」
 そう言いながらボートの上で立ち上がった私を、その場に居た全員が見つめてい
た。
「で……伝説?」
 目を見開いて聞き返す彼女の言葉に、
「そう。伝説」
 ――なるほど、これは本以外の知識に意味があるという実例かもしれない。
 公園の入り口、小さな石碑に書かれていた一文を私は暗唱した。
「元々大きな湖だったこの地域は――中略――当時の地主達によって――中略――
今も時折、その姿を目撃される事がある。その未確認生物の探索、それが私達がこ
の湖へ来た理由。SOS団が探査すべき理由」
「そ、それって本当?!」
 肯く私を見る彼女の目には、既に彼への怒りは無くただ未知への好奇心があった。
 そして、彼女に背を向ける形で私を見る彼の口が動く。
 声にならないその動きが伝える言葉。
 ――ありがとう。
 いい、感謝するのは私。
 目を伏してそれに答えた後、私はボートから降りた。
 続いて降りようとする彼へ手を差し伸べると、彼が立ち上がる前に彼女はボート
の上へ飛び乗って行った。
「ばっ馬鹿! 無茶すんな! 危ねえだろ!」
 非難の言葉と同時に跳ね上がった水滴を気にする様子もなく、
「そんなのいいからほらほらぁ! ぼ〜っとしてないでさっさと漕ぎなさいっ!」
 彼女はボートの上に立ち、そう言い切った。
「……へ?」
「あんた有希の話の何を聞いてたの? ここには未確認生物がいて、あんた達はそ
れを探してたんでしょ?」
「そ、それはまあそうなんだが……見つからなかったから帰ってきた所だぞ」
「あたしが探せば見つかるわ」
 確信に満ちた声と共に肯く彼女。
「そうか、じゃあ俺は疲れてるからボートを漕ぐのは自分か古泉にでも頼め」
「はぁ!? あんた湖の上で動かないでじっとしてたじゃないの!」
「おい、何で知ってるんだそんな事?」
「あ〜もういいからさっさと漕ぎなさい! 未確認生物を捕獲するまで今日は帰ら
ないからね!」
 彼女の言い分に抵抗する事を諦め、彼はまた湖上へとボートを漕ぎ出す。
 緩やかに船着場からボートが離れて行くのを見て――何だろう、この感情は。
「遅い! もっときりきり漕ぐ!」
「へいへい」
 少しずつ小さくなる2人の姿から、私は視線を逸らすことが出来なかった。
 
 
 「失望」 〜終わり〜
 
 
 「長門の好きなお茶」
 
 
 今度こそ本当に駄目かと思いました。
 湖の上でボートに乗っていたキョン君と長門さんの姿を見た時、涼宮さんは無言
のまま怒りに震えていて、古泉君と私はただ脅えて震えていました。
 でも、涼宮さんの気持ちもわかるんです。
 ボートに乗っている2人は、私にも仲の良い恋人同士みたいに見えたから。
『あ! あっち! あっちで何か跳ねた!』
『絶対魚だ』
『いいから行くのっ!』
 ふふ、涼宮さん楽しそうです。
『へいへい……仰せのままに』
 ……キョン君はちょっと大変そうですけど。
 長門さんの機転で、今はキョン君と涼宮さんがボートに乗って湖の上に居ます。
 古泉君はバイトに出かけてしまったので、公園に置かれたベンチで2人が戻るの
を待っているのは私と長門さんだけ。
「……」
 無言のまま湖を見つめている長門さんは……なんでだろう……少し、寂しそうに
見えます。
『ここよここっ止めてっ! ……あれ? 居ないわね』
『おいっ! 身を乗り出すな落ちるぞおい!』
 2人が一箇所に集まって、重心が動いたせいで少し傾き始めたボートが気になり
ながらも、私は話しかけていました。
「あの、どうもありがとうございました」
「……」
「えっとほら、長門さんのおかげで大変な事にならないで済みましたから」
 私の言葉に、軽く首を横に振って長門さんはまた湖へと視線を戻しました。
 長門さんの視線の先にあるのは、観察対象の涼宮さん――の少し上。
『はーなーしーなーさーいっ! ボートのすぐ下に怪しい生き物が見えるのよっ!』
『どう見てもあれは水草だっ! っていうかお前が落ちたら誰が助ける事になると
思ってるんだ?』
 大きく揺れるボートの上で、湖に飛び降りようとする涼宮さんを引き止めている
キョン君を長門さんはじっと見ています。
 まるで、ボートの上に居たキョン君と長門さんの姿を見つけた時の、涼宮さんの
様な目で。
 こ……これって……もしかして?
 思い浮かんだ想像は、普段の長門さんとはどうしても結びつかなくて――疑問が
確信に変わったのは、湖から何かが水に落ちた大きな水音が聞こえてきた時でした。
『キョ、キョン?!』
 思わず振り向いた私が見たのはボートの上で焦っている涼宮さんと、頭に水草を
乗せて水面に浮いているキョン君。
 そして、無言のまま岸に繋がれていたボートに飛び乗る長門さんの姿でした。
 
 
「ほ、本当にドジよね〜。高校生にもなってボートから落ちるとか恥ずかしいと思
わないの? 有希と2人で助けてあげたんだから咽び泣くくらいに感謝しなさい」
 顔に冷や汗を浮かべた涼宮さんの言葉に、
「他に言う事は?」
 ずぶ濡れのキョン君の怒った声。
 涼宮さんは言い返そうと一瞬口を開きかけたけど、すぐに思いなおして
「ご……ごめんなさい」
 と謝っていました。
「……はぁ」
 ――長門さんに聞いた所、涼宮さんが急に立ち上がったせいでキョン君は湖に落
ちてしまったそうですから……溜息で答えるのも無理は無いですよね。
 結局、未確認生物の探索も中止になって
「きょ、今日はここで解散! またねっ!」
 その場に居づらくなったのか、そう言って涼宮さんは走り去ってしまいました。
 取り残された私達の間に流れる気まずい沈黙の中――キョン君の服から滴る水の
音だけが、延々とその場に響いています。
「さて、俺達も帰りますか」
 そう切り出したキョン君ですけど、
「でも、そのままじゃ風邪を引いちゃいますよ?」
「今は春ですから……多分大丈夫ですよ」
 力ない笑顔で答えるキョン君へ、これからどうすればいいのかなぁ。
 あ、私の部屋……は禁則に関わるんでした。
 となると……そうだ!
「あ、あの長門さん!」
「何」
「ここからなら長門さんのお家が近くですから、もしよかったらちょっとお邪魔さ
せてもらえませんか? キョン君の服を乾かしてあげたいんです」
「え、あ。いや、俺濡れてますから悪いですし」
 そう遠慮するキョン君を見て、長門さんは何も言えないでいます。
 でも長門さんの目は、私にはキョン君に来て欲しそうに見えて――これはきっと、
禁則事項じゃないですよね?
「長門さん、お願いできますか?」
 あえてそう聞きなおした私に、長門さんはしっかりと肯いてくれました。
 
 
「タオルと着替え、ここに置いておきますね」
「あ、はい! ありがとうございます!」
 バスルームの扉越しにキョン君の返事を聞いた後、私は脱衣所から出てきました。
 久しぶりに来た長門さんの部屋は、以前私がキョン君と来た時と何も変わってい
なくて……まるでそこだけ時間が止まっているみたいです。
 リビングに戻ると、
「飲んで」
 コタツ机に座り、長門さんはお茶を準備していてくれました。
 今日の長門さんは……何でなのかな、いつもの少し怖い感じがしません。
「ありがとうございます」
 長門さんの向かいに座って湯飲みを受け取った私は、彼女が入れてくれたお茶を
ゆっくりと飲んでみました。
 ……ふぅ。
 胸の奥まで、ゆるやかに暖まる感覚。
 それはお茶の温度だけがそうさせているんじゃなくて……。
「とっても、美味しいです」
 時間をかけて飲み干し、机の上に湯飲みを戻すと
「そう」
 小さく答える長門さんは……嬉しそう……かな?
 彼女の小さな変化に気づけた事が嬉しくって、あたしの中にあった緊張感は消え
てしまっていました。
「あの。長門さんってどこかでお茶の淹れ方を習ったんですか?」
「……友達から」
「そうなんですか〜」
 私も少し勉強してるんですけど、長門さんのお茶はとっても深い味わいで今の私
には出せない味だと思いました。
 じっと空になった湯飲みを見ていた長門さんは、
「お茶を淹れる時には、相手への気持ちを篭めないといけないと聞いた」
 そう、静かに呟く。
 肯いて答える私を見て、長門さんは続きを話してくれました。
「私の友達が淹れてくれたお茶は、とても優しい味だった。彼女の言葉によれば、
お茶を淹れる事は意思疎通をする上でも重要な意味があり、例え言葉が通じなくて
も気持ちを通わせる事ができる」
 それって……凄く、素敵です。
 お友達の事を話す時の長門さんは、少しだけ寂しそうでした。
 だから私はそのお友達の事を詳しく聞けなくて、長門さんが再び淹れてくれたお
茶を静かに飲んでみました。
 …………今度は――少し、悲しい味。
 私が空になった湯飲みを机の上に置いた時、
「やれやれ、やっと生き返ったぜ……」
 バスルームからキョン君が出てきました。
 長門さんに準備してもらった着替えは、やっぱりキョン君には小さくって
「……えっと、その…………好きに笑ってください」
 生地の長さが足りず、七分丈の服を着ている様な状態のキョン君は照れくさそう
に笑っていました。
「飲んで」
 長門さんはそんな姿のキョン君を見ても普段通りのままです。
 静かに差し出された湯飲みを受け取り、キョン君はそれを一息に飲み干していく。
 空になった湯飲みを返しながら、
「……美味いなこれ。長門、もう一杯もらってもいいか?」
 そう尋ねるキョン君に、長門さんは静かに肯きました。
 
 
 「長門の好きなお茶」 〜終わり〜
 
 
 いらっしゃいませ。こちら3点でよろしいですか? ――では、お預かりします。
480円が1点、980円が2点。合計で、2440円になります。――カード払
いですね、お支払いは一回で。――カードと、控えのお返しになります。ありがと
うございま――――
 それまで途切れる事無く応対を続けていた僕が、突然「ま」の形で口を止めたの
見て不思議そうな顔でお客様は去っていき、
「どうした古泉。最後まで営業スマイルを維持してみせろよ」
 その後ろには半笑いで僕を見る彼と、その隣で無表情で立っている長門さんが立
っていました。
 レジ対応マニュアルをどれだけ詳しく読んだとしても、この状況への対応方法は
書かれていないでしょうね。
 ともかく、この2人へ僕が今言うべき言葉は1つしか思いつきません。
 笑顔を作り、軽くお辞儀をし、声は朗らかに明るく大きな声で――
「いらっしゃいませ。ファッションセンターしまむらへようこそ!」
 
 
 「ファッションセンターしまむら」
 
 
「すみません、レジをお願いします」
 品出しをしていた店員に声をかけ、僕はお2人の元へと向かいました。
 えっと……その。
 さて、どんな言い訳をすれば納得してもらえるかと考えていると、
「なあ店員さん。これは個人的な事情なんだがさっき公園で湖に落ちてな」
 そ、そうなんですか。それは災難でしたね。
「ちなみに、湖と池の違いってのはぶっちゃけ深さだけらしい。で、俺が落ちた湖
ってのは色で分類したら間違いなく池に分類されるモスグリーンだったんだ。おか
げで服はほら、この通り」
 そう言って彼が指差す自分の服は、洗濯した後の様ですが緑色に薄っすらと染ま
ってしまっていました。
 それって……もしかして。
「という訳で、だ。察しのいい店員さんなら、そろそろ俺が誰のせいで着衣のまま
池にバックロールエントリーする事になったのか、もう気づいてるよな? そんな
俺が自転車で家に帰るまでの間、恥ずかしい思いをしなくてすみそうな服を教えて
くれ」
 ――あ、あの後そんな事になったんですか。
 ため息混じりに言い切る彼に、僕はただ頭を下げるしかありません。
 わかりました。では、こちらへどうぞ。
 僕は2人を紳士物の服が並ぶコーナーへとお連れしました。
 
 
「こちらはいかがでしょうか?」
 そう言って僕が選んだのは、今日の新聞の折込広告で目玉商品として紹介してあ
った780円のシャツでした。
「今着ているシャツと似たデザインですし、どうでしょう?」
「……悪くない……が。なあ、この値段で儲かるのか?」
 値札とシャツを見比べながら、彼は不思議そうな顔をしています。
 そうですね、たまに僕も不安になる事はありますが、
「値段設定は本社の意向ですので詳しい事は僕にはわかりません」
 ただのバイトですからね。
「だろうな、じゃあこれを頼む。精算したら試着室で着替えていってもいいか?」
「ええ、構いませんよ」
「そうか、じゃあついでに教えてくれ。普段、お前がアルバイトだって行って抜け
出してたのはこの店の事なのか?」
 ……えっと、その。
 いつか聞かれるとは思っていましたが……このタイミングでとは。
「さ、先にお会計をしてきますね」
 僕は彼の手からシャツを受け取り、逃げるようにレジへと向かった。
 
 
 ……さて、何と言って説明しましょうか。
 彼がシャツを手に試着室に入った後、僕は商品を畳み直しながら言い訳を考えて
いました。
 まあ、言ってしまえばここが機関の経営するお店だからなんですが……彼には、
閉鎖空間で神人倒しをする事をアルバイトだと言ってしまっていた以上、すんなり
とは受け入れてもらえないでしょうね。
 正直に事実を告げるか、それとも何か言い訳を言って誤魔化すか。
 迷っていた僕の目に、商品棚の前で静止している長門さんの姿が見えてきました。
 彼女の居る場所は女性服のコーナー。
「何かお探しですか?」
 職務に戻った僕がそう聞いてみると、意外にも長門さんは素直に肯きました。
 ――聞いておいて失礼ですが、長門さんが衣料品店で探す物っていったい……。
 思わず彼女の視線の先を探してみても、やはりそこには服しかありません。
 もしかして、このコーナーに並んだ服に宇宙的な何かでもあるのかと緊張感を高
める僕に、
「私に、似合う服を教えて欲しい」
 そう問いかける彼女は、涼宮さんを観察し統合思念体の意思を伝える為のインタ
ーフェース……には見えませんでした。
 
 
「よくお似合いですよ」
「そうかい」
 着替えを終え、試着室から出てきた彼は僕の感想にはあまり興味が無いようで
「で、さっきの質問の答えがまだなんだが……」
 さっそく本題へと取り掛かりました。
「その件でしたら、説明するのに少々お時間がかかりますがよろしいでしょうか?」
「俺は一考に構わん。……ってあれ、長門は?」
 物静かな長門さんの姿が見えない事に気づいた彼は、店内を見回しています。
「マンションの近くだからってあいつがここに連れてきてくれたんだが、先に帰っ
ちまったのか?」
「いえ、もうすぐ出てこられると思いますよ」
「出てくる?」
 ええ。
 彼の反応が楽しみでつい笑顔になる中、彼が出てきた試着室の隣のドアが開いた。
 条件反射でつい隣を見てしまった彼の目が、大きく開かれて止まる。
「……」
 試着室の中に居た長門さんは、来店した時の制服姿ではありませんでした。
「大変よくお似合いです」
 お世辞や店員としての義務ではなく、本当にそう思いました。
 真っ白でレースで縁取られたいキャミソールをベースに、暖かな茶系のカーディ
ガン。ロングのスカートはオークブラウンの物を選んでみました。
 暖かみのある系統の色を多めに取り入れたせいなのか、今の長門さんは穏やかな
雰囲気に包まれています。
 沈黙し、じっと彼を見る長門さんに代わって
「ご感想は?」 
 僕はそう聞いてみました。
「えっと……その、長門」
 意外な展開に驚きながらも、長門さんから目を離せないでいた彼は一言。
「……似合ってるぞ」
 照れながら告げられたその言葉に俯いてしまう長門さん……そうですね、今の僕
は機関の能力者である前にしまむらのアルバイトです。
 だから、素直にこう思ってもいいはずですよね?
 とてもお似合いの2人だと。
 
 
 「ファッションセンターしまむら」 〜終わり〜
 
  
 う、うろたえない。僕はこんな事ではうろたえないぞ!
 放課後――突然部室に入ってきた一人の生徒の前に、それまでのんびりとパソコ
ンに向かっていた部員達は、まるで火事から逃げ惑うネズミの様に僕の後ろへと逃
げ込んできた。
 部員を守るのは部長として当然の行為であり、ましてや相手が教師でも生徒会長
でもない「たった一人の女子生徒」である以上引くわけにはいかない。
 とはいえ……その相手はよりにもよって……。
「な、何の用なんだ!」
 勇気を振り絞って、僕はその侵入者――そして略奪者でもある――SOS団の団
長に問いかけた。
 
 
 「MacBook? Pro」
 
 
「別に……用って程の事じゃないのよ。ただちょっと知りたい事があって」
 普段と比べて言葉にも勢いが無い団長さんは、そう返事をすると手近にあった部
員の席に遠慮なく座った。
「知りたい事って……なんだよ」
 彼女の様子がおかしい事が気になったが、僕は早く彼女を追い返す為にそう聞い
てみた。
「……とりあえず、お茶」
「なんで僕達が君にお茶を出さなきゃいけな……だ、団長さん?」
 椅子に座った団長さんは、そのまま机に突っ伏して……今のは空耳か? 不機嫌
そうな顔で溜息をついていた。
「……悪い、お茶を準備してくれるか?」
 僕は部員の一人にそう頼み、机に顔をつけたままの団長さんの隣に座った。
 そこには傍若無人という言葉を擬人化した様な団長さんの姿は無く、物憂げに何
かを考える一人の女の子が居る。
 ――君は、例え世界が終わっても平気で笑っているタイプだと思ったんだけどな。
 程なくして、
「どうぞ」
 お盆の上に乗ったお茶が2つ運ばれてきて……彼女はゆっくりと口を開いた。
「……コンピ研に茶器セットがあったなんて驚きだわ」
「頼んだ君に言われたくないが……確かに、君の所の団員の長門さんがここに来る
ようになるまでは、お盆どころか湯飲みすら無かったよ」
「有希が?」
「そうさ、彼女は確かに技術も知識も素晴らしいが、それだけではな……って、話
がずれてるな。もしかしてあれかい? 長門さんがここに来てくれている事につい
て、何か問題があるとか」
「違うわ。知りたいのは有希の事じゃなくて……あんた達の事」
 僕達の事だって?
 団長さんはようやく体を起こし、湯飲みのお茶を口に含んで顔を顰め――小さく
苦いって聞こえた――から話し始めた。
「これはあんた達も生物学的に見れば多分男だし、何かの参考になればって思って
聞くんだけど」
 誰か彼女に、人に物を聞く態度という物を教えてやってくれないだろうか?
 予想通り始まった頭痛に、引出しの中に置いてある常備薬の在庫を考えていると
「……もし自分が酷い事をされたとして、相手を許す為にはどうして欲しい?」
 意外にも、団長さんは謙虚な事を言い始めたのだった。
 ふむ、これはつまり……そうゆう事か。
 僕は椅子に座りなおし、彼女の質問に答えるべく脳内で――僕達の望む結果を導
き出す為の――返答を推敲しながら口を開いた。
「そうだね、もし僕が酷い事をされたのなら――なるべく早く謝ってくれた方が嬉
しいと思うな」
 彼女は僕の言葉に目を細め
「……それはもう終わってる」
 ちょっと待ってくれ、それは君の記憶違いじゃな……いやまて、ここで相手を責
める様な言葉を使ってはいけない。
 渋いお茶で心を落ち着けつつ、僕は続ける。
「ならば、後は誠意を示すだけだ」
「誠意?」
「ああ」
 多分、君は辞書の中でしかその言葉の存在を知らないだろうがね。
「相手を傷つけたのならその傷を癒し、何かを奪ったのならばそれを返せばいい」
 こう言われればすぐに思いつくだろう? 君の机戻ればすぐに見つかるはずだ。
 団長さんは僕の言葉を聞いて暫く考えた後、
「……思い当たらないわね。次」
「ちょ! ちょっと待ってくれ!」
 急に立ち上がった僕を彼女は迷惑そうな顔で見上げている。
「何よ」
 思い当たらないって……ま、まさかあのパソコンを売ってしまったのかい!?
 あまりのショックに問い詰めそうになる自分を抑え、何とか椅子に座りなおす。
 ここで諦めてはいけない……せっかく訪れたチャンスなんだ。
 何度もそう心で繰り返し、部員が淹れなおしてくれたお茶――今度はかなり薄か
った――を飲んで説得を続ける。
「そ、それならば……そうだね。許してほしい相手が、欲しいと思っている物をプ
レゼントするというのも手だ」
「プレゼント?」
 その単語に彼女は強く反応した。
「ああ。そうすれば相手は許す以上に、君の事を認めてくれるだろう」
「そ、それって本当?」
 いつになく真剣な眼差しが僕を見ている。
「間違いない、保証するよ」
「そうなんだ……じゃあ、例えばあんただったら何をプレゼントしてもらえたら嬉
しい?」
 ついにきたっ!
 脳内に次々と浮かぶネットショップの高額パソコン達。ここはやはり、奪われた
あのパソコンと同レベルの物を……いやいや待て待て、ここは焦ってはいけない。
 あの後デスクタイプのパソコンを購入しているから、これ以上同タイプのパソコ
ンがあっても意味はない。
 むしろ、ここはノートタイプの方がいいだろう。長門さんの専用パソコンにして
もいいだろうしな。
 無数に並んだ購入候補に挙がっていたパソコンが一気に絞られていく中、数台の
ノートパソコンが浮上した。
「……ねえ、まだなの?」
「も、もうちょっとだけ待ってくれ!」
 SOS団は研究会として認められていないから予算が無い。
 という事は、個人で購入する事になる……となれば値段的にもこれくらいが妥当
だろう。
 彼女が負担できる許容範囲であり、尚且つ僕が納得がいくぎりぎりのラインを導
き出した僕は、彼女が座る部員の机にあるパソコンにその商品を表示した。
「ふ〜ん……ま、あんたらしいわね」
 最初、団長さんは興味なさそうにモニターを覗き込んでいたが……やがて、手近
な場所にあったメモ帳に「MacBook? Pro」と走り書きをしていた。
 ついに……ついにやったぞ!
 作戦の成功を祝い、心の中で祝賀会が始まる中、
「ありがと。お邪魔したわ」
 そう一言言い残して団長さんは帰っていき、足音が隣の部室に消えてから僕達は
抱き合って喜びを分かち合った。
 ついに、ついにやったぞ!
 我ながら長い戦いだったが、ついに僕達はやり遂げたんだ!
 部員達が贈ってくれる無音の拍手に包まれながら、これまでの経緯を思い出して
泣きそうになっていると――小さく音を立てながら部室の扉が開かれた。
 音のした方へ振り向いた僕達が見たのは、
「――っ! き……君か」
 そこに居たのは帰ったばかりの団長さんではなく、無表情のまま瞬きを繰り返す
長門さんだった。
「驚かせてしまってすまない、ちょっと嬉しい事があっただけなんだ。気にせず入
ってきてくれ」
 部員達もそれぞれの席に戻る中、長門さんも遅れて部室の中に入ってきた。
 そして、いつもの様に部室の隅に置かれた茶器棚の前へと行くと、手馴れた手つ
きでお茶を淹れ始める。
 狭い部室の中に心和む茶葉の香りが広がり、自然と心が落ち着いていくのがわか
った。
 毎日真面目に生きていれば、いい事ってあるんだよな。
 今の自分の状況に心から感謝しつつ、僕は彼女が入れてくれたお茶をありがたく
受け取った。
 淹れる人が違うだけで、こうまで味が変わるのは何故なのか……渋くも薄くもな
い、心温まる長門さんのお茶に
「ありがとう。――うん、美味しいよ」
 心からの賛辞を述べる僕の顔を、長門さんはじっと見ていた。
 ……いったいどうしたんだろう? その目は彼女らしくなく、何かを迷っている
様に見える。
 普段と違う彼女の様子に気づき、部員達の視線が集まる中
「……貴方達に聞きたい事がある」
 これがデジャブという物なのだろうか。
 彼女がそう聞いてきた時、ついさっきあの団長さんに聞かれた質問が僕の脳裏を
過る。
「聞きたい事?」
 そう聞き返す僕に長門さんは肯いて
「男性が受け取って、嬉しいと思う物を教えて欲しい」
 団長さんと同じ、真剣な目で僕に聞いてきたのだった。
 
 
 「MacBook? Pro」 〜終わり〜
 
 
 「iPhone」
 
 
 人で溢れかえる、休日のショッピングモールの一角――通路の中央に設置された
ブースの前にあたし達は立っていた。
「はいはい〜並んだ並んだ〜! 目玉商品のiPhoneはこっちだよー! 予約なしの
店頭販売オンリーだから早いもの勝ちぃ! 販売数は110台! パッケージの色
は在庫があるだけ選び放題!」
 吹き抜けを通って最上階まで響いていくあたしの声と、
「円高還元セールのこのチャンスを逃したらあんたたち一生後悔するわよ〜? ほ
らほら迷ってるならまず並ぶ! 並んだら買うの! あんたも!」
 隣に立つバニー姿のハルにゃんの声もまた、買い物客の目を引いていた。
 ん〜ハルにゃん流石だねぇ。
 一見すれば強引に見えるハルにゃんの客引きだけど、ちゃ〜んと相手の顔色を見
てぎりぎりのラインで態度を変えてるってのは凄いっさ。
「鶴屋さん、残りは何台?」
「ちょろっと待って! ねー後いくつあるのー? ――さんきゅ! ハルにゃん、
あと15台だってさ!」
「残り時間は30分……余裕でいけるわ!」
 不敵な笑みを浮かべるハルにゃん――強気な顔が可愛いねっ!
 そ〜れにしてもびっくりな売れ行きだよ〜。
 契約ブースは常時満員、順番待ちの椅子も大盛況さ。
「このままだと本当に2時間で完売しちゃいそうだね」
「しなきゃ困るのよ!」
 珍しく困り顔で訴えるハルにゃん――弱気な顔もご馳走様!
 
 
 ――ハルにゃんが時間に拘ってるのには、実はちゃんとした理由があるのさ。
 どうしてもまとまったお金が要るって事で、ハルにゃんに紹介した家の系列が募
集してたiPhoneの販売促進のバイトなんだけど――ここで、普通に売り子をして時
給を稼ぐだけに留まらないのがハルにゃんらしいよねっ!
「2時間。2時間で完売させれば、人件費と電気代。テナント料もこれだけ節約で
きるわ。だから、2時間で完売できたらアルバイト代、これだけちょうだい」
 人事の人からハルにゃんの言った言葉を聞いた時は驚いたさ〜。
 横暴に聞こえるかもだけどちゃんと理に適ってる所が凄いよね! ハルにゃんが
提示した販売計画には、携帯の販売数と契約担当の人数と処理能力までちゃ〜んと
踏まえた上での時間設定がされたのさ。
 いっや〜思わず惚れ直しちゃったよっ。
 
 
 そして今、ハルにゃんの計画は現実になろうとしてる。
 その原動力は、間違いなくハルにゃんの宣伝によるものだった。
 うん、これはあたしもぼ〜っとしていらんないねっ!
「さあさあ! そこの兄さんもどうだいっ? 今ならまだ限定色も買えちゃうかも
しれないよっ!」
 それは本当に偶然。
 ちょうどその時、ハルにゃんが違うお客様に説明してて、こっちに気づかなかっ
たのも偶然。
 人だかりの横を、のんびりと通り過ぎようとしていたカップルの前に立ったあた
しが見たのは……
「あ」
 驚いた顔の男の子。
「……」
 その隣に居た無表情な女の子。
「あー! キョーン君じゃないっかぁっ! しかも隣に居るのは、わわ! もしか
してもしもし〜?」
「こんにちわ、鶴屋さん」
「……」
 ……いっや〜驚いたよ〜。そこに居たのはやけに可愛い私服を着た長門っちだ
ったのさ。
 これはやっぱりあれ?
「ねえねえデートなの? お忍び? 略奪愛?」
「全部違います。実は、携帯を壊しちゃったんで買い替えに来たんですよ」
 キョン君の手には、このショッピングモールにある別の携帯ショップのチラシが
握られていた。
 なるほどね〜……ん?
「あれ、でもどうして長門っちが一緒なの?」
 キョン君が女の子と2人でお出かけなんて珍しいよねぇ。
 あたしの疑問にキョン君はちょっと迷いながらも
「何て言うか。話すと長くなるので、お仕事の邪魔になりますからまた今度に」
 お店の制服を着たあたしを見たキョン君は、気を使ってそう言ってくれた。
 でも! のーぷろぶれ〜む。
「いーのいーの! キョン君が携帯買い換えてくれるなら問題なし! むしろさん
きゅ〜です!」
 あたしはわざと長門っちの手を取って、契約ブースへと歩き出した。
 こうすれば、キョン君なら絶対ついてきてくれるからね〜。
「え? あの、ここってiPhoneを売ってるんですよね? 俺は普通の0円のを」
「あ〜あ〜聞こえな〜い。お二人様、ご来店まいどぉ!」
 
 
 契約ブースが一杯だったから――というより、何となくハルにゃんに見つからな
い方がいい気がして――あたし達は店員用の休憩室にやってきていた。
「ふむふむなるほどねぇ。つい池にダイブしたら携帯が壊れて、長門っちの部屋で
シャワーを浴びたお礼に、キョン君は長門っちに服を買ってあげた。そしたら、そ
のお礼に今度はキョン君に何かプレゼントしたいって長門っちが言うから、携帯の
ついでにここに来た、と」
 結局、あたしに押し切られて事情を説明させられ、更に携帯の契約書類を記入し
ているキョン君はあたしの言葉に
「まあ、そんな感じです」
 と答えた。
 でもそれって
「大間違いだっ!」
「ええっ?」
 意外そうな顔をするキョン君と、動じない長門っち。
 あれ? 驚かない。結構大きな声出したんだけど……まあいっか。
「はぁ……お姉さんショックだよ。キョン君はもう少し乙女心について学ぶべきか
と思われますっ。こんな事本人には言えないけどさ〜、一人暮らしの女の子が男の
子を部屋に上げてシャワーなんて普通絶対貸さないよ?」
「あの、鶴屋さん全部喋ってますよ? それと、さっきも言いましたけどその時部
屋には朝比奈さんも居ましたし、何もやましい事は無かったです」
 書き終わった契約書類をこちらに渡しながら、キョン君は真面目な顔で釈明する。
「みくるが居たって男は狼だよ? 長門っちとみくるなんて、キョン君がその気に
なればぺろっと一飲みできちゃうじゃないか……羨ましい」
 あ、水没マーク……ん〜優しいお姉さんは見なかった事にしてあげよ〜。
 破損原因、契約者に過失の無い事故――っと。
「羨ましいんですか」
「そりゃあそうさ!」
 誰だって狼になって、羊みたいなみくると、おこじょみたいな長門っちをおいし
く頂きたいに決まってるじゃないかぁ……そんなの当たり前でしょ?
 ……まあ、そんな一般常識はおいといて。
「あのね? キョン君。長門っちみたいな大人しい子が、男の子を誘うなんて本当
にもう一大決心なの。この意味わかる?」
 ここで言わなきゃダメ、絶対。
 そう決断したあたしの説得の意味を、
「はぁ」
 キョン君は欠片も気づかないみたい。
 ねえキョン君、隣に座った長門っちは君の事をずっと横目で見てるんだよ? 
 こんな可憐で美味しそうな女の子の好意を何で気づかないでいられるの?
「ね〜キョン君のスカウター壊れてるんじゃない?」
「スカウター……って何ですか、それ」
 書類に捺印しながら、キョン君は顔に疑問を浮かべている
「そっか、知らないなら今度あたしの貸してあげるよ。最新型だし。……なんなの
かな〜もう! このわからずや! だるデレ! 眼鏡属性!」
「最後の二つの意味がわかりません」
 ――あたしは今長門っちの恋を応援をしてるけどさ、ハルにゃんもキョン君の事
が好きな事くらいわかってる。
 でも、長門っちだってハルにゃんに負けないくらいにキョン君の事が好きなんだ
よね……。
 ハルにゃんとは違って、これまでずっと視線だけで気持ちを伝えていた長門っち
がやっと行動に移れたんだもん……これって凄い事なんだよ? 好きな人に声をか
けるのって、息ができなくなるくらいに緊張しちゃうんだよ?
 長門っちの気持ちを思うとこれ以上言葉にできないけど、キョン君に分かって欲
しいジレンマ。
 キョン君から貰ったっていう服をさ、あんなに嬉しそうに着てさ……応援せずに
はいられないじゃないかぁ……。
 ハルにゃんと長門っち、どっちも大好きでどっちも応援したい……でも、2人が
好きな人は同じ人――ごめんね? ハルにゃん。今日だけは、今日だけは長門っち
の味方でいさせて!
 あたしは完成した書類と引き換えにiPhoneを手渡し、一緒に自分の鞄から取り出
した2枚のチケットも渡した。
「あの、これは?」
 疑う事なくそれを受け取るキョン君。
「このショッピングモールにある映画館で使えるチケットさ。契約してくれた人に
サービスであげてるの」
「そうなんですか」
 ――ま、サービスってのは嘘なんだけどね。
 本当はバイトの後にハルにゃんを映画に誘うつもりだったんだけど、ここは長門
っちの為に潔くプレゼントしようじゃないか。
「携帯機能が使えるようになるまでに2時間くらいかかるからさ、よかったら一緒
に映画でも見てきてよ。はいっ! 以上で手続きは終わりだよ! こっちは控えだ
から失くさないでね! ありがとさんっ!」
「いえこちらこそ、色々割引してもらって助かりました」
 手続きが終わって2人が立ち上がる時、一瞬長門っちとあたしは目があった。
 長門っちはあたしの視線に軽く目を伏せて答える。
 頑張ってね!
 声に出さずに贈ったそのエールに、長門っちは小さく肯いて……くっ。
 あああああ! めがっさ可愛いっ! 可愛過ぎだってもうもう!
 今わかった、あたしの行動は間違ってなんかいないっさ! だって世界的な可愛
さだもん! もう乗るしかないっこの長門っちウェーブに!
 
 
 「iPhone」 〜終わり〜
 
 
 「13日の金曜日」
 
 
 ん〜……タイミングが悪かったか。
 人で溢れる映画館のロビー、天井付近に設置された上映予定表に並ぶ「満員」の
文字を見て俺は溜息をついていた。
 せっかくもらった映画のチケットだったが、ちょうど人気映画の公開日だったと
いう事もあってか映画館は超満員。次の上映を待つ行列を前にして、そこに加わる
だけの気力は俺にはなかった。
 まあ、俺一人なら並んでもいいんだけどさ。
 隣に立つ物静かな少女に目を落とすと、長門は二人分のチケットを大事そうに持
ちながらじっと俺を見ている。
「長門、どうする?」
 そう尋ねた俺に、
「……」
 不思議そうな沈黙を返す長門。すまん、主語が無かったな。
「映画を見るつもりできたけど、今は混んでるからかなり待つ事になりそうだ。待
ってもいいなら付き合うが、どうする?」
 長門は暫く俺の顔を見ていたが、やがて何かを思いついたのか映画館の一角を指
差した。
「ああ、あそこか」
 長門が指差したのは旧作を上映しているコーナー、通称「旧館」だった。
 そこでは最新作の映画が出た時に、その映画の前作とかが無料で上映しているの
で俺も何度か見に行った事がある。
 今日公開の映画には前作が無かったので、今は適当な映画が上映されているらし
く人影は疎らだ。
 これから何時間も行列に並び、混みあう中で最新作を観るよりはいいかもしれな
い……が、流石にこれは無いだろ。
 旧館で次に上映されるタイトルを見て、俺は首を横に振った。
 古い映画が好きな人ならこの映画をご存知だろうし、それ程映画を見ない人でも
タイトルくらいは聞いた事があるかもしれない。
 旧館の入口に置かれていた看板には「13日の金曜日」と書かれたポスターが貼
られていた。
「長門、お前この映画を知ってるのか?」
「知らない」
 だよな、お前が生まれるよりかなり前の映画だし。
「俺は前に見た事があるんだが……何ていうか、怖い映画だ」
「怖い?」
「ああ」
 いくら過去の映画とはいえ、映画館のロビーでネタバレをするのはどうかと思い、
俺は長門に詳しい内容を話さなかったんだが……それがまずかったのかもしれない。
「見てみたい」
 俺の顔を見上げて呟いた長門に、俺は首を横には振れなかった。
 
 
 薄暗い室内には殆ど利用者の姿は無く、僅かに席を埋めていたのはカップルばか
りだったのは偶然だろうか。
 映画の内容以前の問題があった事を後悔する俺に、長門は不思議そうな視線を向
けている。
 まあ、映画館で映画を見ようが何をしようが、迷惑をかけない範囲なら個人の自
由だ。
 そう自分に言い聞かせつつ、中央上段という中々の視聴ポジションをゲットした
俺達は、長々とCMが続くスクリーンを無言で見つめていた。
 ……それにしても、まさか長門と映画を見る日が来るとはね。
 俺の隣に座る、一見すれば寡黙な女子高生でしかない長門。
 実は彼女、ハルヒに興味を持った情報なんとかって奴が作った宇宙人である。
 宇宙人と13日の金曜日を見る高校生か……今の俺の状況の方が、これから見る
映画の内容よりもよほど現実離れしているってのはどうなんだ?
 何となく視線を向けた先では、長門が真剣な目でスクリーンを見ている。
 ……さて、この映画に対して長門はどんなリアクションをするんだろう?
 やはり無反応? それとも……。
 ようやくCMが終わって館内の照明がさらに暗くなる中、俺は少しの期待と共に
映画が始まるのを待っていた。
 
 
 何度も見直す事で、製作者の意図が分かってくる映画ってのがある。
 それは隠された複線としての台詞だったり、登場人物の葛藤だったりと様々な内
容で、わかりやすく言えば「ああ、なるほどね」って奴だ。
 そんな楽しみ方でこの映画を見ていた俺なのだが。
「……」
 その隣では、いつになく真剣な様子の長門が居た。
 スクリーンの映像をじっと見つめる長門には、最前列の客席に座っていた二人の
客が、いつの間にか一人分の影になっている事など気づいていないだろう。
 等と考えている間に映画の物語は進んでいたらしく、再び俺が映画へと意識を戻
した時、ついに「それ」は始まった。
 ――音響係、ちょっと来い。
 スピーカーから大音量で登場人物の悲鳴が響いた時、俺の左手を誰かの手が急に
掴んできた。
 いや、誰かっていうか周りの席はがらがらで長門しか居ないのはわかってるんだ
が……普通、思わないだろ? 長門がたかが映画で脅えるなんて。
「……」
 俺の手を握り締め、震えながら長門はスクリーンを見続けている。
 こうなる可能性を全く考えていなかった訳じゃないんだが……それでも驚きを隠
せず、映画とは別の意味で俺は心拍数を上げていた。
 俺の手を握ったままの小さな手に、映画の展開にあわせて何度も力が篭められる。
「な、長門。やっぱり出ようか?」
 そう耳元で聞いてみた俺に、長門はスクリーンを見たまま首を横に振った。
 でも、この先はもっときついシーンが続くんだよな。
 手から伝わる長門の震えに――俺にしてやれる事はこれくらいか――それまで俺
の手の甲にあった長門の手を、俺は腕を返して掌で握ってやった。
 指と指が絡まり、より強く長門の手が握り締められる中、映画は最高潮へと向け
て進んでいく。
 何故、長門がこの映画に拘ったのか? 俺にはそれはわからなかったが……。
「……」
 時折小さな悲鳴を上げる長門の姿を俺は――えっと。
 普段とは違う長門の反応と、自分の中に浮かんだ言葉にならない感情に俺は戸惑
っていた。
 
  
 ……最後まで謎だったな。
 映画を見終わった後「ここで待っていて」と言い残して、長門は去っていき――
トイレか? ――と俺は思っていたんだが。
「ごめんなさい」
 電話の向こうで謝る寂しそうな長門の声。
「いや、別に謝らなくてもいいさ。誰にだって事情はあるんだし」
「……」
 ――今度ここへ来た時は何を見ようか?
 そんな事を考えつつ、パンフレットを見て時間を潰していた俺にかかってきた電
話で、長門は一言「一緒に居られなくなった」と言ってきた。
 真新しい携帯から聞こえたその言葉の意味を聞いても、長門はただ謝るだけ。
 これ以上話しても長門を困らせるだけだな。
「……わかった、じゃあまた今度、遊びに行こうぜ」
 そう言った俺の言葉に何も答えないまま――長門は電話を切った。 
 
 
 誰も悪くはない。
 悪いのは私。
 変わってしまった私。
 化粧室の大きな鏡に写る自分の顔は、涙腺からの涙が止まらないせいで確認する
事ができない。
 何故、こうなってしまったんだろう?
 より人間に近づく事、それは有機生命体とのコンタクトにおいて重要な意味を持
つ。
 その統合思念体の方針に従い、私の中に存在していた感情という機能がテストさ
れる事になった。
 最初に、戸惑いが生まれた。
 人間は言葉以外に、仕草、動作、表情等の多彩な方法で意思表現を行う。
 言語での会話のみを考えて作られた私には、それは未知の体験だった。
 この件は、コードネーム朝倉涼子の暴走に関しても深い関わりがあるとされてい
た為、私のテストは慎重に進められた。
 そして導かれた結論は――不要。
 インターフェースに、自由な感情を持つ必要性は認められない。
 統合思念体はそう結論付けた。
 その判断に間違いはない。
 私は、彼に声を掛けられるのが嬉しかった。
 彼に見て欲しくて自分を着飾りたくなった。
 傍に居られる事を楽しいと思った。
 離れる事を辛いと思った。
 私は、彼を――
 それは小さな繋がり。
 彼が見た事があるという映画を見る事に夢中で、私は定時連絡をしなかった。
 涼宮ハルヒの観察、最重要課題であるはずのその任務よりも、大切な物が出来て
しまった。
 自己意識に囚われたインターフェースに存在価値はない。
 統合思念体の指示は、感情機能の封印。
 最低限の自由意志を残し、かつての自分に戻る。
 ――ただ、彼を見ていただけの自分に。
 感情が封印されるまでの猶予は、今日一日。
 彼の傍に居たい、でも傍に居ればきっと私は……また、エラーを蓄積して暴走し
てしまう。そうなれば……彼の傍にも居られなくなる。
 封印を受け入れる事が最善の方法だった。
 これでまた、彼の傍に居られる。
 それは間違っていない…………でも、流れる涙を止める方法を知らない私は、た
だ泣き続けるしかない。
 このまま全て涙になって流れてしまえばいい、そう思っていた時だった。
「あれっ。…………う、嘘……有希!?」
 化粧室に現れた観察対象が、私を見つけたのは。
 
 
 最初、それが有希なんだって事をあたしは信じられなかったの。
 だって有希は普段とは全然雰囲気の違う女の子っぽい私服を着ていて、鏡の前で
号泣していたんだもの。
「ちょっとどうしたのよ」
 あたしの顔をじっと見つめたまま、有希は涙を流し続けている。
「泣いてばっかりじゃわからないでしょ? ほら、涙を拭いて」
 差し出したハンドタオルを力なく掴んで、有希は自分の顔を機械的に拭き始めた。
 い、いったい何があったのかしら……。
 これがみくるちゃんならわかるのよ、動物系の映画を一緒に見た時は、上映時間
より長く泣いてたし。
 でも有希よ? あの有希なのよ?
 普段、窓際の席でじっと座っている寡黙な読書少女は、今はただ泣き続ける可哀
想な女の子にしか見えなかったの。
 綺麗な服装で、ショッピングモールの化粧室の中で一人で泣く理由っていったら
……まさか!
「ね、ねえ有希。嫌だったら答えなくてもいいんだけど……もしかして、誰かに振
られたり……した?」
 もし有希が肯きでもしたら、あたしはその男を見つけ出して血祭りにするつもり
だったわ。でも、有希は無言のまま首を横に振った後、
「彼は悪くない。問題があるのは私側の事情」
 え、私……側?!
「私側の事情って……それって、もしかして親とか?」
 暫く考えてから有希が肯いた時、アルバイトが終わって休憩状態だったあたしの
頭に、一気にアドレナリンが噴出すのがわかった。
「何よそれ!? 今時親が娘の恋愛に口を出すなんて時代錯誤にも程があるわ!
有希、あたしが文句を言ってあげるから直談判行きましょう! 文句でも言ったら
蹴り飛ばしてやるわ!」
 そう言いながら詰め寄るあたしに、
「いい。……彼の傍に居られるだけで、いい」
 有希は辛そうな顔で首を横に振ったの。
 あ……もしかして。
 無理やりに笑おうとする有希を見ていたら、前にキョンが言っていた有希の心配
事の話を思い出してた。
 確か、家庭の事情で二年に上がる時に親元に戻されるかもしれないって話だった
わよね……今親に歯向かったら、ここに居たいって思ってる有希を返って苦しめる
事になるかもしれない。
 傍に居られるだけでいい……か。
 あたしには有希のその気持ちはわからないけど、応援してあげたいな。
 今のあたしが有希にできる事は……うん。
「ねえ有希! 買い物に行きましょう!」
「買い物?」
 うんうん!
「そう! 有希もオシャレに目覚めてきたみたいだし、可愛い服をい〜っぱい買い
ましょ? ……それにしてもいいセンスね、その服。自分で買ったの?」
 そう思わず聞いてしまうくらいに、有希が着ている服の組み合わせはまるで服屋
の店員さんが選んだみたいに有希の特徴を生かした組み合わせだったわ。
 古泉君ならともかく、無難な物しか選びそうに無いキョンには絶対に無理な組み
合わせね。
 それにしてもどこのメーカーの服だろう……見たことないんだけど。
 あたしの質問に、有希は少し恥ずかしそうにして
「彼に」
 と呟いた。
「何よもう、惚気ちゃって〜有希も隅に置けないわね! まあいいわ、ちょうど臨
時収入もあった所だから奢ってあげる! あたしのセンスだって、有希の好きな人
に負けてないって所を見せてあげるわっ!」
 あたしはまだ寂しそうにしている有希の手を引いて、ショッピングモールの中へ
と駆け出していった。
 
 

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:22 (2735d)