作品

概要

作者ながといっく
作品名長門さんとカレーの日
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-01-22 (木) 22:34:40

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「今日はカレーの日」
「どうした長門。藪から棒に」
 放課後の文芸部室。
 諸事情により、今日の団活は俺と長門の二人で行われている。
 もちろん、ハルヒたちがいない理由を書き連ねることは可能だが、この物語においてさして重要ではないので割愛させていただく。
 ええと、何の日だって?

 

「毎年1月22日はカレーの日。
 1982年、学校給食開始35周年を期に制定。1982年のこの日、全国の小中学校の給食で一斉にカレーライスが出された。
 本来この計画は戦後に学校給食が復活したことを記念する日である12月24日に実行する予定だったが、土曜日曜や冬休みと重なるなどの不都合があり、紆余曲折の末、この日に決まった。
 しかし既に献立が決まっていた学校も多数あり、実際にカレー給食を実施したのは2割程度といわれている。
 ちなみに同日は飛行船の日およびジャズの日でもある。その由来は――」
 わかった、もういい。長門の豆知識の豊富さには舌を巻く。百科事典でも内蔵してるんじゃないのか?
「カレーの日なのはよくわかったが、それがどうかしたのか?」
 長門の深々とした黒眼が俺を見つめる。
 どことなく意思の強さを感じさせる瞳だ。
「今日はカレーを食べるべき」

 
 

 そういうわけで、長門とカレーを食べに行くことにした。
 長門の家でレトルトカレーってのでもよかったんだが、どうせなら旨いカレーを食いたい。
 それに普段から長門には世話になってるし、カレーくらいなら奢ってやってもいいだろう。
 これが5人分とかになれば即破産だが、都合よく今日は二人だけだからな。

 

 十数分ほど歩いて到着したのはカレー専門店。とは言っても本格的なところではなく、全国的にも有名なチェーン店だ。ここでいいか、長門?
「構わない」
 そういう長門の表情はどことなく楽しそうだった。
 そんなにカレーが好きなのか、長門よ。

 

 入口を開けるとなぜか聞きなれた声が飛んできた。
「いらっしゃいませ〜……なんだよ、キョンじゃないか」
「谷口、お前こんなところでなにやってんだ」
「バイトだよ。お前こそなんで……ああ、そういうことか」
 俺の後方をニヤニヤしながら見る谷口。しまった、今日は長門を連れてきてるんだった。
「安心しろ、誰にも言わないから。ごゆっくり〜」
 そう言うと谷口は俺の肩を叩き、殴りたくなるようなニヤケ面を見せつけながらカウンターの奥へと去って行った。

 

 机に備え付けのメニューを開く。
 ……むむ、最近のカレー屋はメニューが多いな。目移りしちまう。
「期間限定のグランドマザーカレーがお勧めだぜ」
 谷口、またお前か…
「仕方ないだろ、仕事なんだから」
 やる気なさげな谷口店員を無視して俺は長門に話しかける。
「なんでも好きなもの頼んでいいぞ」
「……そう。じゃあ、これ」
 長門が指差したのは谷口オススメのグランドマザーカレー。
 ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、大きめの肉と具が豊富で、まさにオーソドックスなカレーって感じでなかなか旨そうだ。
 谷口の口車に乗るのはなんだか気に食わんが、俺もこれにしよう。
「グランマカレー2つね。OK了解…と。辛さとご飯の量はどうする?」
 俺はどっちも普通でいいぞ。長門はどうする?
「辛さは普通。……ライス1500g、だめ?」
 ご飯5倍ですか、長門さん。できればその上目遣いはもっと違うところで使ってほしいのだが。
 1200円UPか……仕方ない、特別に許してやろう。
「え、えーと?ライス辛さ普通と、ライス5倍辛さ普通、でよろしいですか?」
 流石の谷口も顔が引きつってやがる。ああ大丈夫だ。こいつは見かけによらずかなり食うからな。

 

 その後、あり得ない注文で混乱に陥った厨房の指令で谷口が再度注文確認にやってきたりしたが、しばらくして無事にカレーがやってきた。
 おお、なかなか旨そうだ。刺激的な香りが食欲をそそる。
 ちなみに長門の5倍カレーは店員2人がかりで持ってきた。
 大きな器にこんもりと盛られたカレー。さしずめカレータワー、いや、カレーマウンテンだな。
 おっと、俺の目の前でよだれをたらしかけている宇宙人がいるのを忘れていた。
「じゃあ食うか長門」
 長門はこくんと頷き、次の瞬間スプーンを山に突き刺した。

 

 谷口含む店員たちだけではなく、他の客までもが注目する中、長門は俺の予想通り順調にカレーマウンテンを切り崩していく。
 どよめく店内。注目されてるのは俺じゃないのに落ち着かないな。
 あ、こら長門。ちゃんと噛んで食べなさい。丸飲みは良くないぞ。

 

 30分後、長門のカレーマウンテンは見事に消滅。
 あれだけ量の差があったのに食い終わるのはほぼ同時とは、恐るべし長門有希。
 そして巻き起こる拍手と歓声。こいつ、大食い番組に出ればそれで食っていけそうだな。
 見た目は細いしなかなか可愛いし、ギャル曽根なんかよりもウケるぞきっと。

 

 そんなことを思っていると、またまた谷口がやってきた。今度は何だ。
「グランドマザーカレーを注文した客にくじを引いてもらってるんだよ。
 当たるのはどっかのデザイナーとコラボしたカレースプーンだ。引いてくれ」
 スプーンか。当たっても母親に献上することになるだろうし興味無いな…
 まぁ、それでも引かせてくれるんなら引こうじゃないか。ほら、長門も引け。
 小さな箱から1枚ずつくじをひく。ええと、これをめくればいいのか?
 ――お、当たりだ。
「おお、すげえなキョン。これ店舗あたり100個くらいしかないからなかなか当たらないんだぜ?」
 へえ、そうなのか。あ、長門はどうだった?
「……はずれ」
 いつもの無表情で呟く長門。だが、その眼はどことなく残念そうだった。

 
 

 当たりくじと引き換えに谷口が奥から持ってきたのは黒く細長い箱だった。
 中には一本のスプーン。ほう、デザイナー云々なだけあってなかなか立派なスプーンだな。
 重みもあるし、そこらで売ってるような安物とは違うのは俺にもわかる。
 こりゃあうちの食卓に置くのは勿体ないかもな…などと思いつつ視線を前に戻す。
 長門がこのスプーンをじっと見つめていた。
「欲しかったのか?」
「……少しだけ」
 少し?嘘だな。
 お前がその目をするときは本当に悔しがっているときだ。一級長門表情鑑定士の俺には全てお見通しさ。
「じゃあ、お前にやるよ」
 そう言うと、長門は首を横に振り、
「だめ。これはあなたが当てたもの」
「いいって」
「だめ」
 相変わらず頑固なやつだな。欲しくてたまらないくせに。
 こうなるとテコでも動かないからな…
 だが男としてここで引き下がるわけにはいかない。
「そうだな、じゃあこれは長門に預けるってことでどうだ?
 俺が長門の家でカレーを食べる時にでも使わせてくれ。もちろんお前が使ってもいいぞ」
 俺を見つめる長門の眼の色が少し変わった気がする。
 なんて言うか、期待と不安と申し訳なさを足して3で割ったような色に。
「……いいの?」
 ああ、もちろんだ。
 そのかわり、今度そのスプーンでカレー食わせてくれ。レトルトじゃなく、お前が作ったカレーをな。
「……わかった。約束する」
「ああ、約束だ」

 

「……ありがとう」

 
 

 こうして某カレー店特製スプーンは長門家に帰属することとなった。
 それは良いのだが、俺はこの時点であることを失念していた。

 

 すなわち――
 この一連のやり取りを谷口に聞かれていたこと。
 谷口の口がヘリウムガス並に軽いこと。
 そして、俺の後ろの席の女が地獄耳であること。

 

 要約すると俺はこの後大変な災難に襲われるわけだが、まぁそれは別の話だ。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:17 (1806d)