作品

概要

作者Thinks
作品名戦う文学少女・ナガトユキ
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-01-20 (火) 22:24:12

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 〜戦う文学少女・ナガトユキ〜
 
 ………。
 これは、冬。雪が降っていた日のこと。わたしがこの世界に降りたときのように。
 その日は観測対象、涼宮ハルヒを主導として定期的に行われる探索の日であった。

「おいおい、雪が積もっててまともにチャリが漕げなかった、と言ってるだろ。だのに何で今日も俺が」
「うっるさいわねー。最後に来たのが奢るのは当たり前でしょ?」
 集合場所から徒歩で約二分。この面々が最も使用する確率が高い喫茶店。
 寒さを回避するべくか、習慣か。席までも同じ場所に座った後、彼が、また今日も出費を強要されている。 
「ああ、もうどうせ俺が払う事になってるんだろ。今に見てろ。今度大雪が降ったとき辺りにでも後悔させてやるからな」
「その時には電車よりあんたが遅れるに決まってるわ。あたし、カフェオレホットでねー」
 
 決着が付いた様子。………本日注文する飲食物を決定……
「アプリコット」
 涼宮ハルヒは上機嫌で、彼の様子を伺っている。
 朝比奈みくると古泉一樹については現在観測するほどの行動は見せていない……が。
「では僕はホットで」
「俺も」
「あ、あたしもカフェオレで。あ、あわっホットでお願いします」
 
 全員が注文した後。また、涼宮ハルヒは爪楊枝を用いた一種の役割分担を提案する。
「はい。それじゃ恨みっこ無しでね」
「誰が何を恨むってんだ。まったく」
「うるさい。さっさと引く!」
 最後の二本から一本を引くと、それには赤い印。もう一人は、誰?
「あったりぃー。もう一人は?」
 ……涼宮ハルヒだった。
 
 飲食物を摂取した後、二手に分かれ、探索活動に出る。
「有希ー。今日はどっちに行こうかしらね」
 既に南側を探索する事にはなっているのだが。反応を求めているのは明白。
「更に南側を調べてみたい」
「そう。じゃあ南に歩いていきましょ」
 駅の直ぐ傍にある長細い公園を二人で歩く。観察対象が傍に居るケースは、部室以外では稀。
 観測対象が求める何か。これを物体Aと仮定。物体Aに当たる存在は未だ感じられない。
 スキャンを続行しつつ、観察対象のアクションを待つ。
 
 探索と呼ばれるこの活動で、実際に探索を行っているのはわたしだけ。おそらく。
 現在までのデータからしても、朝比奈みくる、古泉一樹、そして彼の方でも探索活動は行われていないと推測する。
 
「有希、さ」
 周囲に他人の気配が無くなった時、アクションが起こされた。
「好きな人、って居るの?」

 ………!? 好きな、ひと。
 
「居るの、居ないの。もう、はっきりしなさいよっ」
 あどけない声。まるで悪意が感じられない。一言に直せば、無垢。
 涼宮ハルヒの眼を見る。からかい半分などではない。本気でただ、興味があるのみ。
 彼の言葉を借りよう。だから性質が悪い、のだ。
 
 舞う雪が、顔にかかる。わたしたちはいつしか立ち止まっており。白い息が、涼宮ハルヒとわたしの間に彷徨っていた。
 
 わたしは、この回答を既に持っている。
 だが、わたしと言う個体での判断で、これを公にする事はできない。
 ………なぜならば。
「ワシが許さんからだ!!」
 
 情報制御空間形成を確認。パターン:L。防御情報を展開。
 空間情報にアクセス………成功。
 SELECT SERIALCODE FROM DATABASE WHERE CODEDATA = 'SYUKUGAWA' ORDER BY CODENAME
 対象を、主流派インターフェースと確認。コードネーム:パパス。

「何の挨拶も無いとは冷たいな。しかしまたそれが良いっ。
ああ、そうそう。パパはこの間、急進派と一緒にステーキ食べに行ったのよ、ステーキ。そしたら店員さんが言うんだよ。焼き加減はどうしますか。ってね。パパは良く焼いたのが好きなのね〜、有希ちゃんは知ってると思うけど。だからこう言ったのさ。ウェルカムにしてくれ。って。そしたら急進派が言うのよー。誰が来るんだよ!って。あっはっはー。パパ間違っちゃったよ。で、おまえはどうするんだよって言ったら、急進派のヤツこう言ったのさ。ウィリアムスで。だって。あっはっは!外人さん来ちゃったよ〜〜。」
 
 ………そのような事実は無い。そして、好みの焼き加減など、知る由も無い。
 故に、これを俗に言う「オヤジギャグ」と認識する。
 
 例のごとく。またしても。月並み。一般的。ワンパターン。
 あなたは何故、このシチュエーションに入る度、阻害するのか。多大なエネルギーを使用し、異空間を形成してまで。
 この展開は予測済みだった。このパターンは、既に四十七回目を記録している。
 
「そのような発言、行動だから、…彼にくそったれと言われる」
 眼を閉じ俯き額に手を当て、呆れたと伝える。これも彼から学んだこと。
「何を言うか有希ちゃん!そんな言葉を使っちゃいけません。パパ、泣いちゃうぞ」
 論点の置換を確認。しかし、今は仮にも情報制御空間の中。反論している場合ではない。
 
 MERGE INTO DIMENSION-STRUCTURE
 USING (SELECT THOUGHT-ENTITY FROM DATABASE WHERE CODEDATA = 'SYUKUGAWA')
 ON (FACTION=LEADERSHIP)
 WHEN MATCHED THEN
 UPDATE DIMENSION-STRUCTURE SET (DEFFENCE-BIT=0,ATTACK-BIT=0)
 
 ……空間内の攻勢情報の無力化に成功…。
 
「なあっ!?何故にっ」
「ひとつひとつのプログラム、空間自体の封鎖設定も……すべてが甘い」
 わたしは新たな一文を作り上げ、実行に移す。
「だーっ、ワシは認めんぞ、ナンボあの男が鍵つってもだなー?って、じゃ、じゃあね?」 サラサラサラ…
 
 …何故、これほどセキュリティレス状態の空間を形成するのか。情報制御も疎か。
 相変わらず、無謀。何がしたくてこうしているのかも理解できない。
 
「ですね、変わらなさ過ぎてわざとやっているのではないかって思うことも、ありますね」
 未だ構成されたままの空間の中、思念が伝わってきた。喜緑江美里。このイレギュラーを察知しての通信。
「いつものこと」
「慣れちゃダメです、もう。形成される異空間の構成パターンはとっくに把握してるんでしょう?もっとも、今の割り込みは好都合ですが」
 ……それは確か。この空間を正常空間に戻すのは簡単。しかし、戻した途端、あの質問に答えなければならない。
 過去のパターンでは、対象はクラスメートの女子などであり、返答はファジーに行えば良かったが……。
 今回の対象は涼宮ハルヒ。アバウトに答える事は危険を伴う。
「幸い、選択肢は二つになっていますから。前者を選びますか、後者を選びますか」
 
 無論、居ない、と答えるべき。
「後者を選択する」
「了解しましたわ。では。後者を選んだ状態で続行させます。いいですか?」
「かまわない」
「………データではなく情景で見たかったですね」
 …?
「なんでもありません。準備してください、空間消去命令を実行します」
 
 
 ……通常空間に復帰。観測対象の存在を目前に確認。位置情報を確認。相違無し。 
「ふうん。そっかあ有希らしくて良いかもね」
 …満面の笑み。観測対象の精神状況に変化無し。よかった。観測を続行……
「じゃ、今から有希のこと、ゆう、って呼ぶからね。じゃ、行くわよ! ゆうっ」
 
 ……は?
 
 涼宮ハルヒは、わたしの手を取り歩を進める、しかし。
 この状況は何。
 現時空内の発言データログを参照。対象は涼宮ハルヒ。十一時二十四分三十秒から時系列順にソート。
 
 11:24:31 「有希、さ」
 11:24:33 「あだ名欲しくない? あたし、有希にもあったほうが良いって思ったのよね」
 11:24:38 「今思いついたんだけど、ユッキとゆう。二つあるのよねー。ね、どっちが良い?」
 
 ………情報の変更履歴を確認。変更者:喜緑江美里。
 これは変更とは言わない。改竄と称するべき。こう言う場合、彼ならこう言うであろう。
 
 やれやれ、と。
 


 
 俺が、何故か古泉が電話に夢中だったので朝比奈さんとただひたすらダベっていただけと言う、
至福の時とも言える午前の探索を終えて、まず耳にしたのは、涼宮ハルヒの電撃発言だった。
「あー、なんだって? もう一度言ってくれないか」
「何回言わせんの。今から有希の事は、ゆう、って言うの。解った?」
 朝比奈さんと古泉を見てみれば、二人ともカップを手に持ったまま硬直していた。それほどにこの指令にはインパクトがある。
 
 長門をあだ名で呼べ、だ?しかも、ゆう、か??
「そう。ゆう。ユッキって呼ぼうかとも思ったんだけどねー。ゆうが選んだのよ。ねー、ゆーう」
 その長門は若干顔を伏せて、本日二杯目のアプリコットを啜っていたわけだが。
「………」
 無言で頷いた。ほんとにおまえが選んじゃったのですか。
「ほら、みんな、ちゃーんと呼んであげなさいっ」
「ゆうさん、と呼ぶのですか。なんだか、より身近に感じますね」
 肯定するな、古泉。このまま定着したらそのうち、おまえにもあだ名が付くぞ。良いのかよ。
「ちゃん付けとかも良くない?」
 また、要らんことを言い始めた、ハルヒである。
「え、えーっと………ゆうちゃん」
 あなたもみいちゃんとか呼ばれますよ、朝比奈さん。
「あんたもよ。あんたも言ってあげなさい」
 俺もかよ。
「当然よ。さあ、言いなさい」
 …こいつは、こいつと言うヤツは。結局の所こうやって各自のリアクションが見たかっただけじゃないのか。
「おまえはこの呼び名を変だとは思わないのか。………ゆう」
 ぐ…これは恥ずかしい。長門がまじまじと俺を見始めた辺りが特に。
 
 ん?どうした、なが、…いや、ゆう。
「………………〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
 いつしか。メガネの再構成を忘れたときだっけかね。こいつがこんな顔をしていたのは。
 長門は、従来比1.02倍くらいに眼を見開いて、右手で口を押さえていた。
「どしたの?もしかして両方とも好きじゃなかったのかしら?」
 それはごもっともなんだがな。落ち着こうとしてか、空になったカップを口に当てている。
 ハルヒよ。おまえが変なこと考え付くからおかしくなっちまったんじゃねえか? おい、長門。
「ゆう、よ」
 この期に及んで未だ言うのかよ。
「だって、もうそう決めたんだし。今日一日はこのまま行かないとね」
 こんな事を言うハルヒだが、長門の様子は気になるようで。
 今は普通にしているのだが、なんだってまああんなリアクションをされたのかね。
単に恥ずかしいだけか?俺だってえらく恥ずかしいわ。これが噂に聞く、羞恥プレイってヤツか? なんか違う気もする。
 
 長門が少し上を見つめた格好で動かなくなってしまったので、
とりあえず店を出てみるか、外は雪だ。頭冷やせば良くなるかも知れないぞ。と。
 俺が提案して、既にカップを空にしていた長門以外が冷めたカップに口を付けた時。
 長門が口を開いてこう言った。
 
「ゆうも、そう思う」
 
 四人が同時に、コーヒー吹いた。
 
 
 
                第一人称情報の改竄をも確認。喜緑江美里。侮れない……。
 
                〜(主に創造主と同僚と)戦う文学少女・ナガトユキ〜  終幕。
 
 
  
 
                                   …………………ゆきりん……。

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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:17 (1776d)