作品

概要

作者ながといっく
作品名長門さんの泥酔〜後日談〜
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-01-09 (金) 21:54:32

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

SS集/999のあとがき的な続編になります。

 

後日談機祖耕舁希の回顧〜

 

 また、彼に迷惑をかけてしまった。

 

 わたしは昨日の出来事を思い返す。
 飲酒により感情の開放が行われ得ることは知識としては知っていた。
 そして、わたし自身もまた、それを望んでいたということは否定できない。

 

 だが、あれほどとは。

 

 あの多幸感と快感は、全身がエラーで埋め尽くされるほどのものであった。
 だが、わたしはどう行動し、あのような結末に至ることができたのだろうか。
 わたしのメインメモリに詳細な記憶は残っていない。

 

 そう、わたしは何をした?
 彼とあのような行為をすることになった経緯は?
 皆が帰りマンションで一人になった後、わたしは記憶の再生を試みる。記録用メモリから当該情報を検索、再生。

 
 

『………わたしに魅力がないから?』
『脱いだら……あなたが思うより……あるよ?』
『おっきいほうが好きなら情報操作でおっきくする』
『……ほんとに可愛い?』
『よそみしないで…』
『………きて……好きにして』

 
 

 ――なんだ、これは。

 

 脳内で再生される昨夜の出来事。これはわたしか。
 お酒を飲み、無意味に着衣を脱ぎ、彼の唇を奪い、寝床に誘い。
 ……性行為までしてしまった。わたしと彼はそのような関係ではないというのに。

 

 ……これでは、痴女ではないか。

 
 

 ――エラー。
 体表温度の上昇と思考能力の低下を確認。

 

 こんなとき、人間ならば飲酒による健忘で都合よく記憶を消去できるのかもしれない。
 だがもちろん、わたしにそのような現象が起こるわけもない。
 今日ばかりは、ヒューマノイドインターフェースであることを恨めしく思う。

 

 記録用メモリには、その先のこともまた、詳細に記録されてあった。
 でも、今のわたしに見る勇気はない。かと言って消すことはできないし、消したくない。
 ……わたしにとって、決して忘れたくない大事な思い出だ。
 わたしは当該記憶に何重ものロックをかけ、記録スペースの奥深くに保存した。

 
 

ピンポーン

 
 

 部屋のチャイムが鳴る。誰だろう。
 検索範囲を拡大――――彼だ。

 

 何故?
 もしかして、昨夜のことを糾弾しに来たのだろうか。
 ……責められても文句は言えない。
 彼は自分の意思とは無関係に、わたしと肉体関係を結ばせられた。そのうえ涼宮ハルヒたちに痴態を晒し、一方的に非難された。

 

 どうにか場を和ませようと一生懸命に考えたわたしの冗談――
『責任をとって、わたしをお嫁に貰ってほしい』
 あれも完璧に逆効果だった。

 

 ――嫌われたら、どうしよう。
 そんな不安を抱きながら、わたしは玄関へ向かう。不安なはずなのに、この高鳴る気持ちはなんなのだろうか。
 彼がわたしに会いに来てくれる。その事実だけでわたしは……

 

 

後日談供僧探椒魯襯劼侶莪奸

 

 朝起きたらキョンと有希がいなかった。
 最初はコンビニにでも買い物に行ったのかと思った。でも、玄関にはちゃんと二人の靴があった。

 

 嫌な予感がする。
 この部屋に人が隠れる場所なんてほとんどない。ましてや二人同時に隠れられる場所なんて一つしかない。
 あたしは若干緊張しながらその場所――和室の襖を開けた。

 

 キョンと有希が裸で抱き合って寝ていた。

 

 目の前が真っ白になった。
 次の瞬間、あたしはキョンをぶん殴ってた。
 必死で何かを叫んで、慌てるキョンに喰らいついていた。
 今となっては、古泉君が必死に止める声が耳に残っているだけだけど。

 

 こんな土壇場でもあたしは素直になれなかった。あたしだってわかってるわよ。
 キョンは馬鹿でスケベでマヌケ面だけど、女の子を、ましてや有希を襲ったりなんかしない。
 それに、キョンと有希の仲がどんどん良くなってることはあたしもわかってた。二人がああなってるってことは、キョンも有希も納得したうえでああなってるってこと。わかっていたけど、認めたくなかった。

 

 だからあたしはひたすら怒った。叫んだ。
 そうしていないとみんなの前で泣きそうだったから。
 それからのことは、よく覚えていない。

 

 その夜、あたしは久しぶりに泣いた。そして初めて気付いた。
 ああ、あたしはキョンが好きだったんだ、って。
 そしてこれが、失恋の味なんだな、って。

 

 他の誰かなら適当に無理難題押しつけて別れさせたりしたかもしれない。
 それこそ「女とSOS団とどっちが大事なの!?」とか文句つけて。

 

 でも有希が相手ならそんなことはできない。どれだけ有希がキョンのこと想ってるか知ってたから。
 キョン、あんたは鈍感だから気がつかなかっただろうけど、有希はずっとあんたのこと見てたのよ。
 あの雨の日、あんたにストーブ近づけて、カーディガンかけてあげたのも有希。
 あんたが入院した日、動揺して何も出来なかったあたしたちと違って、冷静に動いてくれたのも有希。
 バレンタインのチョコケーキ作りで、誰よりも一生懸命だったのも有希。
 キョンに迷惑ばっかりかけてるあたしと違って、有希はキョンに尽くしてるようなところがあった。
 そんな有希とキョンを引き離す?

 

 ――――出来るわけないじゃない。

 

 なにより有希は……あたしにとっても大事な仲間で、高校で初めて出来た友達なのに。

 
 

 その翌日、キョンと有希があたしのところにやってきた。
 二人は付き合うことになったみたい。わざわざ断りをいれるなんて律儀な二人ね。
 まぁ、陰でこそこそやられるのは嫌だったから嬉しいけど。もちろん承諾したわ。SOS団公認カップル第1号だ、ってね。

 

 有希は心なしか元気がなかった。
 あたしがキョンを好きなことに、有希はたぶん気付いてた。だからもしかしたら、後ろめたい気持ちを持ってるのかもしれない。
 気にしなくていいのよ、有希。悪いのはあたしなんだから。こういうのは早いもん勝ち。あんたは堂々としてればいいんだから。

 

 あ、キョン。あんたは幸せだと思いなさいよ。あんたみたいなのが有希と付き合えるなんて奇跡みたいなもんよ。
 もう二度とないわよ。こんな幸運を与えてくれた神様に感謝しなさい。言っとくけど有希を悲しませたら許さないからね。浮気なんかしたら裁判官が許してもあたしが死刑執行してあげるわ。

 

 面倒くさそうに返事をするキョン。
 全く、本当にわかってるんでしょうね?
 ――まぁ、キョンが有希を大事に思ってるのはわかるから、いいんだけど。

 

 二人が帰った後、あたしは自分の部屋に戻った。
 ふと部屋の窓から外を見ると、キョンと有希の後ろ姿を見つけた。
 手をつないでた。有希もキョンも楽しそうで、幸せそうで…

 

 キョン、あんたはあいつに似てるって思ってたけど、やっぱり違うのかな?
 ジョンがキョンなわけないって思ってても、その可能性は捨てきれなかった。
 なんでだろう、何の根拠もないのにそんな気がしたのよ。

 

 でも、もう関係ないか。仮にそうだとしたって、ジョンはあたしじゃなく、有希の運命の人だったんだから。

 

 …………。
 何が恋愛は気の迷いよ。精神病よ。
 そんな風に自分を騙してきたあたしのほうがよっぽど精神病じゃないのよ。

 

 滲んでいく二人の姿を眺めながらあたしは誓った。
 もし次に、誰かを好きになることがあったら、今度は素直になろう。もうこんな思いは、二度としたくないから。

 

 だからバイバイ、あたしの好きな人。

 

 

後日談掘祖比奈みくるの目標〜

 

 今日はびっくりしちゃいました。
 キョンくんと長門さんが……だめです、あたしには刺激が強すぎるみたいです。
 禁則事項ってわけじゃないけど、言葉にするのも恥ずかしいです…

 

 はぁ。
 長門さんがうらやましいなぁ。
 ほんとはあたしもキョンくんが好きだった。
 でも、涼宮さんや長門さんたちを見ていたら、あたしなんかがキョンくんを好きでいるのが、すごく悪いことに思えた。

 

 あの二人はあたしと違ってた。
 涼宮さんは素直じゃなかったし、長門さんは感情を表にださなかった。
 けれども二人は本当にキョンくんが好きだった。二人にはキョンくんしかいないって思うくらいだった。
 それこそ、世界を作り直したり、現実を変えてしまうほどに。

 

 あたしにそんな覚悟があるかと言われたら、ない。
 だからあたしはいつしか諦めてた。

 

 ううん。諦めるとかそういう以前の問題。
 あたしはこの時代で恋愛は出来ないの。どれだけ好きになっても、いずれ別れがきちゃう。

 

 それに、あたしには目標がある。
 いまのあたしは何の役にも立たない。何も知らされていない。だからいつかきっと、誰かを助けることができる立場になりたい。
 今までキョンくんや長門さんや古泉くんが守ってくれたように。

 
 

 ……でも、キョンくん。
 あたしだって辛いんです。キョンくんは誰にでも優しいから。
 その優しさは、あたしみたいな弱くて何も出来ない人間には、とても嬉しいことなんです。
 だからもし、あたしが偉くなって、昔のキョンくんに何かを伝えられる日がきたら、こう言おう。

 

「あまりあたしと仲良くしないで」と。

 

 

後日談検糎点一樹の羨望〜

 

 いやあ、彼と長門さんには驚かされましたね。
 裸のお二方を涼宮さんが見つけた時にはそれは焦りましたよ。
 僕も一緒にいながらなんて失態だ、と。同時に世界の崩壊も覚悟しました。かつては彼が朝比奈さんとちょっと仲良くしただけで世界を作り直そうとした涼宮さんですから。
 しかし、発生した閉鎖空間は極めて小規模でした。おまけに神人も発生せず、間もなく自然消滅しました。ハッキリ言ってしまえば、拍子抜けでしたね。

 

 きっと、彼の言うように、涼宮さんも成長しているのでしょう。
 そして長門さん、あなたも大したものです。嫉妬心よりも、あなたとの友情が勝ったということなのでしょうから。

 

 それにしても長門さんは本当に変わりました。
 無口無感情無表情であり、ただの観察者であるはずのインターフェース。
 その彼女が、自らの意思の赴くままに有機生命体である彼を求め、ついには手に入れてしまったのですから。
 もう"端末"などとは口が裂けても言えませんね。今のあなたは"人間"より人間らしいですよ、長門さん。

 

 この件が今後どういった影響を及ぼすのかはわかりません。
 機関の中ではこの事件を問題視する向きもあるようです。しかし、僕個人としては、長門さんに尊敬の念すら抱いています。
 ……あなたは僕と同じで、自由を奪われた立場であったのに。

 

 出来ることなら僕も、この仮面をはがして、自分の思うように生きてみたい。
 本当は、あの人を神と崇め、遠巻きで眺めるなんてことはしたくない。
 感情を殺した僕と、感情を手に入れた長門さん。僕にも再び感情が芽生える日が来るのだろうか。

 

 わかってる。僕は決してジョン・スミスにはなれない。それでも僕は…

 

 

後日談后粗鷽佑里海譴ら〜

 

 全く、天国と地獄の両方を味わった新年だった。
 まぁ、ほとぼりも冷めた頃であろうし、少し後日談を語ろうと思う。

 

 俺と長門は付き合うことになった。あのあと、正式に長門に告白し、OKを頂いた。
 順番が違うだろうとの指摘はもっともだが、この際気にしないで頂きたいところである。
 あの日、玄関で見た長門は何かに怯えてるようだった。
 もしかしたら、俺に怒られるとか思ってたのかもしれないな……全く、ここまで可愛いとむしろ狙ってるように思っちまうな。

 

 さて、俺が告白したときの長門の顔ったら、もう一生忘れられないだろうな。
 なんせ無表情のまま口開けてポカーンってなって、そのまま泣きだすんだからな。思わず抱きしめて……またキスしてしまった。それ以上はしてないからな。本当だ。

 

 さてここで問題となるのが、ハルヒにどう説明するかである。
 SOS団は恋愛禁止!とか言っていた気もするから、もしかしたら反対されるかもしれない。
 かといって、ハルヒの陰でこそこそ付き合うのは俺も長門も嫌だ。まぁ、仮に反対されても別れるなんてことは絶対にないのだが。

 

 俺と長門は直接ハルヒの家まで出向いたのだが、俺の心配をよそに、ハルヒはあっさり承諾してくれた。
「恋愛は精神病だと思うが、他人の恋路は邪魔をしない」
 だとかいう、いつかあいつが言ってた言葉を自分で引用してたな。
 こうして、俺達はSOS団公認のカップルとなった。
 …ちょっと恥ずかしいな。

 

 そういえばハルヒに報告しているとき、長門が少し申し訳なさそうな顔をしていた。
 あとで理由を聞いたのだが、じっと咎めるような目で見つめられて教えて貰えず、それでも聞こうとしたら何故かだんだんと不機嫌になっていった。
 全く女ってのはよくわからんな。俺にも女心がわかる日がくるのかね。

 

 ああ、これは古泉に聞いた話だが、驚いたことに閉鎖空間は小規模だったらしい。
 古泉たち超能力者は拍子抜けだったそうだ。そりゃそうだろうな。俺だって夜中に灰色空間ツアーに招待されることを覚悟していたわけだし。
「相手が長門さんだったからですよ」
 とだけ言い、古泉はいつもと少し違った笑みを残して去って行った。

 

 ハルヒも長門を大事な仲間だと思ってるんだろう。
 出会ったころの人のことをジャガイモくらいにしか思ってなかったから、俺としてもそれは嬉しい。
 人間ってのは変わるもんだな。SOS団はあいつをいい方向に変化させたらしい。でも変わったのはあいつだけじゃない。長門や朝比奈さんや古泉もそうだし、言うまでもなく俺だってそうだ。

 
 

 次の日曜。
 俺は駅前のいつもの待ち合わせ場所にいる。いつもと違うのは、ビリじゃないということと、相手が一人ということ。
 そして、向こう側から歩いてくる無口な少女がいつもの制服ではなく、可愛らしい私服に身を包んでいるということだ。

 

 俺はそいつに告げる。
「……似合ってるぞ、有希」

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:01:16 (1868d)